目次][][][年次リスト

9 タイ     The Kingdom of Thailand

<2005年>

タイ経済のこれまで

<2006年の経済>
 2006年の経済成長率は、4%台半ばになるものと見込まれる(政府見通し4.2〜4.7%、民間機関9社の平均4.4%(06年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(06年4月時点4.9%)に比べ、下方修正されている。
 06年前半の経済成長率は、1〜3月期は前年同期比6.1%、4〜6月期は同4.9%となった。1〜3月期の経済成長率の加速は、スマトラ島沖大地震による津波の被害から大幅に減速した前年同期の反動によるところが大きく、景気の拡大は緩やかになっている。外需中心の成長となっており、輸出はIT関連財、自動車・同部品等を中心として増加している。一方、内需については、民間投資は06年1月以降の政治的混乱や数次に渡る金利の引上げ等から、投資マインドが悪化し伸びが鈍化している。個人消費は堅調に推移し景気を下支えしたものの、消費者物価の上昇等から伸びは低下した。物価動向については、消費者物価上昇率は原油価格高騰の影響を受けた輸送コスト等の上昇により、06年前半を通じて前年比6%程度で推移したものの、その後同3%程度に低下している。
 なお、タイでは06年9月19日に政変が発生し、政変以後はスラユット暫定首相が政権運営を行っている。政変発生の金融市場への影響は限定的であり、株価、為替ともに小幅な下げにとどまった。

タイの主要経済指標

<2007年の経済見通し>
 2007年の経済成長率は4%台になると見込まれる(政府見通し4.8%、民間機関9社の平均4.4%(06年10月時点))。
 成長を支える要因としては、消費者物価上昇率の落ち着きによる個人消費の堅調な推移、政府支出の増加のほか、政治の安定化による民間投資の改善が期待されることが挙げられる。一方、世界経済の減速による外需の鈍化が懸念されるほか、下方リスクとしては、今後も不安定な政治状況が長期化した場合の投資の鈍化が挙げられる。

<財政金融政策の動向>
 2006年は、政治的混乱から政府による大規模なインフラ整備計画(メガ・プロジェクト)が一時中断しており、また06年10月から始まる07年度予算についても成立が遅れていた。政府投資支出の遅延による景気への悪影響が懸念される中、政変後に発足したスラユット暫定政権は、07年度予算の早期の執行を目指しており、06年10月17日の閣議においてその大枠を決定した。06年内の成立と07年1月からの執行を予定しており、政変以前の見通しからは6か月程度早い執行となる。内容をみると、歳出は1兆5,200億バーツ、歳入は1兆4,200億バーツとなり、財政赤字は1,000億バーツ(GDP比1.2%)が見込まれている。政府は07年には輸出が06年より鈍化する見通しを示しており、赤字予算による政府支出の増加により景気の下支えを行うとしている。また、前政権の経済政策や投資計画については、見直しをした上で必要に応じて執行するとしている。
 金融政策については、原油価格の高騰と物価上昇率の高まりを受け、タイ中央銀行は政策金利である14日物レポ金利を04年8月以降、断続的に引き上げてきたが、06年7月からは物価上昇の落ち着きを受けて据え置いており、06年10月時点では5.0%となっている。


目次][][][年次リスト