10 マレーシア Malaysia
<2005年>
<2006年の経済>
2006年の経済成長率は、5%台半ば程度になると見込まれる(政府見通し5.8%、民間機関9社の平均5.4%(06年10月時点))。民間機関の見通しは半年前(06年4月5.3%)とほぼ同水準となっている。06年前半の経済成長率は、1〜3月期は前年同期比5.5%、4〜6月期は同5.9%となり、内需を中心に景気は拡大している。内需をみると、投資は輸出志向型の製造業を中心として増加しており、個人消費は家計所得の上昇、安定的な雇用環境等から堅調に推移している。一方、外需をみると、輸出はIT関連財、鉱物性燃料等を中心に前年比はおおむね二桁台で推移したものの、輸出志向型の製造業による中間財輸入の増加に加え、好調な内需を反映して消費財及び資本財の輸入が増加したことから、純輸出は減少した。産業別にみると、鉱業、建設業が減少したものの、IT関連財を中心とした製造業や金融保険業等のサービス業が成長をけん引した。
物価動向については、政府は06年2月、燃料補助金の負担増を理由にガソリン及び軽油の小売価格をそれぞれ約19、23%引き上げた。また6月には97年以来で初めて電力料金を約12%引き上げた。こうしたことを背景に消費者物価上昇率は前年比4%前後の上昇がみられた。
<2007年の経済見通し>
2007年の経済成長率は、5%程度の成長になると見込まれる(政府見通し6.0%、民間機関9社の平均5.2%(06年10月時点))。
世界経済の減速による輸出の鈍化や、燃料価格、電力料金等の物価上昇による個人消費の鈍化が懸念されるが、第9次5か年計画(06〜10年)に予定されている政府支出の増加が景気の下支えとなることが期待される。
<財政金融政策の動向>
2007年度予算案をみると、歳出は前年度比11.6%増の1,575億リンギ、歳入は同11.8%増の1,348億リンギとなり、202億リンギ(GDP比3.4%)の財政赤字が見込まれている。10年度連続の赤字予算となるが、アブドラ首相による予算発表時の声明では07年の世界経済の減速を視野に入れた上で、外需減速の影響を緩和するために政府支出を積極的に行い、民間部門を活性化していくとしている。これは、財政赤字削減のために緊縮財政を行ってきた従来の路線からは転換となる。また、今回の予算案の大きな特徴の一つは民間投資促進を目的とした法人税率の引下げである。法人税率は今後2年度で年1%ずつ引き下げられ、07年度には27%、08年度には26%となる。
歳出の内訳をみると、知的集約型経済への移行と貧困減少を目的とした開発支出が445億リンギ(同24.3%増)となっている。その主要な項目をみると、(1)農村振興やインフラ整備を目的とした経済サービス分野への支出が163億リンギ(同27.9%増)、(2)知的集約型経済への移行のための人材育成を目的とした教育分野への支出が79億リンギ(同53.4%増)となっている。
金融政策については、政策金利であるオーバーナイト政策金利は04年4月以来2.7%に据え置かれていたが、物価上昇を背景として05年11月、06年2月及び4月にそれぞれ0.25〜0.30%ポイントの利上げが行われ、06年10月末時点で3.5%となっている。