7 シンガポール Republic of Singapore
<2005年>
<2006の経済>
2006年の経済成長率は7%程度となる見込みである(政府見通し6.5〜7.5%、民間機関26社の平均6.8%(06年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(06年4月時点5.5%)に比べ上方修正されている。06年前半の経済成長率は、1〜3月期はIT関連財やバイオ製品を中心に輸出が力強い伸びをみせたため、前年同期比10.6%と04年4〜6月期以来7期ぶりに二桁の成長をみせた。4〜6月期は、5月の国民への現金支給を伴う財政措置(「進歩のためのパッケージ」)や良好な雇用環境により民間消費が比較的堅調に推移したが、IT関連財等の外需が鈍化したため、前年同期比8.0%となった。06年後半は引き続き良好な雇用環境を背景とした民間消費や堅調な輸出に支えられ安定した成長を続けると見込まれており、7〜9月期の成長率は同7.1%(速報値)となった。
<2007年の経済見通し>
2007年の経済成長率は5%程度となる見込みである(政府見通し3〜5%、民間機関26社の平均5.2%(06年10月時点))。
成長を支える要因として、半導体を中心としたIT関連財やバイオメディカル分野、サービス分野の堅調な伸びが挙げられる。また、低迷が続いていた建設投資は、総合リゾート施設の開発計画等大型開発事業の着工等により、06年後半に引き続き緩やかな増加が見込まれる。
しかしながら、世界経済の減速の影響を受け、IT関連財を中心に生産や輸出の伸びは鈍化するものとみられる。
<財政金融政策の動向>
財政政策については、2006年3月に「さらなる構造改革」、「低賃金労働者支援策」、財政黒字の成果を国民に分配する「進歩のためのパッケージ」を3つの柱とした06年度予算案を可決した。05年度の予算案と比較して4倍以上に拡大した特別移転支出金35億9,000万シンガポール・ドルのうち、26億シンガポール・ドルが「進歩のためのパッケージ」に充てられ、すべての成人国民に対しその年間所得等に応じて現金支給をする「成長の配当金」を始めとした一時金の支給が行なわれた。同支給の多くは5月1日に実施され、4〜6月期の小売販売売上に占める地元消費者寄与度(乗用車を除く)のうち、15%の効果があったと政府は試算している。なお、シンガポール政府は、06年度の財政収支について、これらの特別移転支出金の増額により赤字に転じると見込んでいる。
金融政策については、シンガポールは為替レートを通じた金融政策を実施しており、04年4月以降、シンガポール通貨庁(MAS)は物価上昇圧力を抑制するため、シンガポール・ドルの名目実効為替レートは小幅で緩やかな上昇とする方針が維持されている。06年10月に発表された半期経済報告でも、引き続きこの金融引締めを継続することで物価安定を図ることが示された。