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第 I 部 海外経済の動向・政策分析

第2章 高成長が続く中国経済の現状と展望

第1節 2000年代の中国経済の高成長

1.投資と輸出にけん引され高成長を続ける中国経済

●高成長の継続と世界におけるプレゼンスの高まり
 近年の中国経済の動向をみると、1990年代前半に高い成長を記録した後、高インフレに対する過熱の抑制、国有企業改革の推進、アジア通貨危機の影響、世界的なITバブルの崩壊等、2000年代初頭にかけては成長率の低下がみられた。しかしながら、その後成長率は再び高まり、03年以降は3年連続で二桁成長、06年も1〜9月累計で前年比10.7%と引き続き高い成長が続いている(第2-1-1図)
 この結果、世界全体に占める名目GDPのシェア、貿易額のシェアは90年にはそれぞれ1%台であったが、2000年には3%台となり、05年でみると名目GDPは5.1%、貿易額が6.7%を占めている。また、05年の一人当たりGDPは約1,700ドル(購買力平価ベース(世界銀行推計)では約6,600ドル)と日本の20分の1程度であるものの、名目GDP総額では約2.2兆ドルでアメリカ、日本、ドイツに次ぐ世界第4位に、さらに購買力平価ベースでみると、約8.6兆ドルで世界第2位の経済規模を持つに至った(第2-1-2図)

●東アジア(1)の中の中国
 2000年代初頭には、中国による輸出の増大、外国投資受入れの拡大が、周辺諸国の成長に悪影響を及ぼすのではないかという「中国脅威論」が高まりをみせ、我が国においても「空洞化懸念」と併せて中国を脅威ととらえる向きもあった。しかしながら、特に電気機器の分野で、東アジア各国が部品等の中間財を中国に輸出し、中国国内で組み立て、先進国市場へ輸出するという東アジアの分業体制が深化し、また、中国の投資・生産拡大に伴う資本財や中間財等の輸出の増加を通じて、周辺諸国の成長に対する好影響(いわゆる「中国機会論」)が指摘されるようになった。
 東アジア(日本、韓国、台湾、ASEAN)から中国への輸出額をみると95年から2000年にかけては5年間でおおむね2倍程度増加し、さらに、2000年から05年にかけては、日本が2.6倍、韓国が3.4倍、台湾が9.7倍、ASEANが3.3倍と急拡大している(第2-1-3図)。また、これらの国・地域では、総輸出に占める中国への輸出シェアも大きく拡大している。輸出の内訳をみると、電気機器部品等の「中間財(部品)」、鉄鋼、化学製品等の「中間財(加工品)」、各種機械等の「資本財」がほとんどを占めており、特に、韓国とASEANについては、「中間財(部品)」のシェアが高まっている。このように、東アジアの分業体制の深化や、中国における投資拡大が周辺諸国にも好影響を与えていることがみてとれる。
 また、周辺諸国にとっては、外国投資が中国に集中してしまうのではないかという懸念もみられたが、中国への投資額が引き続き高い水準で推移する中、NIEsやASEANへの回帰もみられるようになり、同地域への対内直接投資額は、02年を底として再び増加に転じている(第2-1-4図)

●高成長をけん引する投資と輸出
 名目GDPに占める需要項目別のシェアをみると、2000年代には、最終消費のシェアが縮小する一方、資本形成総額のシェアが高まり、2000年の35.3%から、05年には42.6%にまで上昇している(第2-1-5図)。また、輸出(国際収支ベース)の名目GDP比は、90年代後半はおおむね20%台前半で推移してきたが、2000年代に入り上昇傾向となり、05年には37.0%となった。このように、2000年代の中国経済の高成長をけん引した大きな要因は旺盛な投資と輸出の拡大であるといえる。
 旺盛な投資の背景としては、需要面では、低コストで豊富な労働力を期待した輸出向けの生産のための投資のほか、01年のWTO加盟を機とした規制緩和の進展やインフラ整備の推進といった投資環境の改善等が考えられ、いわば投資が投資を呼ぶといった状況でもあった。また、資金供給面からみると、高水準の外国からの直接投資資金の流入が続く中、48.1%(05年)まで高まった国内の貯蓄率も高い投資の伸びを支えてきた要因の一つと考えられる。
 輸出は、2000年から05年にかけては年平均25.5%の伸びを記録している。品目別寄与度でみると、繊維等の軽工業も引き続き伸びる中で、電気機械が年平均寄与度12.7%と、輸出の伸びの53.3%を占めている(第2-1-6図)。また、外資比率をみると、生産に占める割合が30%強であるのに対して、輸出に占める比率は02年に50%を超えた後、05年には58.3%に達しており(第2-1-7図)、外国資本が輸出の拡大に大きく寄与してきたことがうかがえる。
 実質輸出の伸びを、輸出関数を使って「外需要因」、「価格要因」、「東アジア分業深化要因」、「外資要因」の四つに寄与度分解してみると、01年以降の今次輸出拡大局面においては、基本的にすべての要因がプラスに寄与し、90年台後半に引き続き「外資要因」が一貫して大きな寄与となっているほか、特に02年から04年にかけては「東アジア分業深化要因」と「価格要因」が、また03年以降は「外需要因」が比較的目立った寄与をしている(第2-1-8図)。2000年代の輸出は、世界景気の着実な回復に支えられる中、外国資本による輸出の拡大、電気機器分野を中心とした東アジアの分業関係の深化等を背景に高い伸びを続けてきたといえる。


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