第 I 部 第2章のポイント
1.2000年代の中国の経済の高成長: 投資・輸出主導の成長と拡大する不均衡 ●経済成長率は03年以降二桁成長を続けている。その結果、世界全体に占める名目GDPや貿易額のシェアは高まっており、それぞれ5.1%、6.7%を占めるに至った。東アジア各国では、特に電気機器等の分野において分業体制が深化するなど、中国への輸出の増加を通じて周辺諸国の成長にも好影響となっている。 2.拡大する不均衡への対処と課題:過剰投資、過剰流動性、過剰貯蓄の解消 ●過剰投資による供給過剰は、デフレの発生ひいては不良債権の問題等につながることも懸念される。政府は供給過剰業種の構造調整、銀行への指導、金利引上げ等の「マクロコントロール」政策を実施しており、足元では効果の兆しもみられるが、今後も過剰投資抑制の流れを継続し、将来的な中国経済の体質強化にもつなげることが期待される。 3.調和のとれた持続可能な発展に向けて:第11次5か年計画による改革の推進 ●経済の高成長の下で、所得格差、環境破壊、経済構造の不均衡等の様々な矛盾や問題が生じている。これらに対処するため、03年より発足した新政権はこれまでの成長至上主義から人を主体とした立場に基づき、調和のとれた持続可能な社会を目指す「科学的発展観」の理念に基づいた第11次5か年計画(06〜10年)を策定した。 |
第 I 部 海外経済の動向・政策分析 |
第2章 高成長が続く中国経済の現状と展望
中国経済は、1978年末の「改革・開放」以降、計画経済から市場経済への流れを徐々に推進しながらほぼ一貫して高い経済成長を達成してきた。特に、92年のトウ小平によるいわゆる「南巡講話」によって改革は加速され、外国資本の導入を積極的に行い、低い労働コストを基盤とした輸出の拡大というアジアの多くの国が経験してきた経済発展型の基礎が築かれた。2000年代には、他の東アジア諸国との分業体制の深化とともに、輸出はさらに大きく拡大し、投資・輸出主導の高成長が続いている。
一方、高成長の中で不均衡も生み出されてきた。国内では投資の過熱感、とりわけ採算性の低い部門等での過剰な投資が問題となっている。また、世界最大の人口を抱える中国経済の発展は、その規模の大きさもあり、対外的な注目や影響も小さくなかった。2000年代初頭には、東アジアにおいて「中国脅威論」が高まりをみせ、最近は、中国輸出の大消費地であるアメリカ、EUに対する貿易黒字の急拡大により貿易摩擦が生じている。
両者は、単に「国内的」、「対外的」といった枠組みにとどまるものではなく、翻って中国自身にとって、将来の持続的な成長のための構造的な問題とつながっている。本章では、投資・輸出主導による2000年代の経済成長を概観しつつ、その中で生じている不均衡への対処、そして、将来のさらなる成長へ向けた展望について検討する。