5 台 湾 Taiwan
<2004年>
<2005年の経済>
2005年の経済成長率は、3%台後半となる見通しである(台湾当局見通し3.7%、民間機関28社の平均3.6%(05年10月現在))。民間機関の見通しは、半年前(05年5月時点4.1%)に比べ下方修正されている。IT関連財における世界的な在庫調整の影響や製造業の海外移転により輸出の伸びが鈍化したことを受けて、1〜3月期の成長率は前年同期比2.5%、4〜6月期は同3.0%となり、04年の5.7%に比べ伸びが緩やかになった。ただし、年後半はIT関連財を中心とした輸出の回復の兆しがみられることから、4%前後の成長が見込まれる。
雇用状況をみると、失業率は低下傾向にあるものの、4%台で推移している。また、消費者物価上昇率は、原油価格の高騰や台風による食料品の値上がりを受け、8月には3.6%と98年11月以来の最高水準となった。これを受けて、政府は、中央銀行による利上げを行ったほか、年内は石油、水道、電気料金を引き上げないという物価安定措置をとるといった対策を講じており、9、10月の消費者物価上昇率はそれぞれ3.1%、2.6%と低下がみられる。
<2006年の経済見通し>
06年の経済成長率は、4%程度と見込まれる(台湾当局見通し4.0%、民間機関28社の平均3.9%(05年10月時点))。
成長を支える要因としては、06年はIT関連の大型設備投資計画や公共建設拡大計画の実施が予定されていることや、IT関連財を中心とした輸出の伸びが期待できることから、成長率は堅調に推移すると見込まれている。下方リスクとしては、原油価格の高騰による消費者物価上昇率が個人消費へ与える悪影響や、中国や東南アジアへの生産拠点の移転による製造業の空洞化懸念が挙げられる。
<財政金融政策の動向>
財政については、税収の大幅な伸びが期待できない中で景気対策に伴う減税措置を実施していることから、04年度も財政赤字となっている。05年度中央政府予算では、経済産業の発展、文教・科学技術の向上、国家安全の強化等に重点を置きつつ、財政収支均衡に向けて一般経常支出を極力抑制しており、財政赤字額は2,329億元(GDP比2.1%)となる見込みである。歳出は、前年度比2.4%増の1兆6,356億元を予定し、教育科学文化、社会福利、経済発展、国防等に充てる予定である。歳入面では、税収入を中心に同3.9%増の1兆4,027億元を見込んでいる。「挑戦2008国家発展重点計画」(経済成長率5%、失業率4%以内等を目標とする02年に打ち出された6か年計画)において、特に台湾の国際競争力向上に必要な施策として策定された「新10大建設」の特別予算案が5月に可決された。これにより、大学や研究機関の機能強化、高速道路や鉄道の建設等に約900億元が投入されることになった。金融政策については、原油高騰に対するインフレ抑制を目的として、政策金利(中央銀行再割引率)を3月、7月、9月にそれぞれ0.125%ずつ引き上げ、9月には2.215%とし、02年5月以来の高水準となった。
ただし、中台間の政治関係については冷え込みをみせている。05年3月に中国において台湾との統一に向けた政策手段を立法化した「反国家分裂法」が採択され、陳水扁総統は中国政府との和解・対話の道を残しつつも、強い口調で中国政府を非難しており、大多数の台湾市民も中国政府に対して強い不快感を表明した。