16 フランス French Republic
<2004年>
<2005年の経済>
2005年の経済成長率は1%台半ばになる見込みである(政府見通し1.75%、民間機関26社の平均1.5%(05年10月時点))。民間機関の見通しは半年前(05年5月時点1.8%)に比べ下方修正されている。小売価格の引下げ、クレジットによる耐久消費財購入の利払いへの税控除、相続税の特別減免措置といった消費刺激施策の期限が04年12月末で切れたことで効果が剥落し、また、原油価格や失業率の上昇が消費者信頼感を低下させたことなどから、05年前半の個人消費は弱い動きとなった。また、企業収益の回復は、価格、非価格両面で競争力を向上させているドイツと比べて遅れており、輸出は世界経済の回復を受けてもほぼ横ばいだった。しかし、7〜9月期にはようやく輸出が増加し、失業率が改善の兆しを見せる中で個人消費も持ち直したことから、経済成長率は前期比年率2.7%となった。年後半の景気は、住宅投資も、低金利と供給ひっ迫の条件下で引き続き好調なことなどから、緩やかな回復を続ける見込みである。
<2006年の経済見通し>
06年の経済成長率は2%程度となる見込みである。(政府見通し2.5%、民間機関26社の平均1.9%(05年10月時点))。成長を支える要因としては、比較的高い賃金上昇や住宅市場の活況等を背景に、個人消費が引き続き堅調に増加することが挙げられる。
下方リスクとしては、原油高の影響等から世界経済が予想以上に減速した場合、外需の停滞から製造業に影響を与える可能性がある。また、政府による緊急雇用対策にもかかわらず雇用環境の改善が遅れれば、個人消費が停滞する可能性がある。
<財政金融政策の動向>
財政赤字は、02年がGDP比3.2%、03年が同4.2%、04年が同3.6%となり、「安定と成長の協定」で定めた遵守基準(3%)を3年連続で超過しているが、政府は、05年は同3.0%と、4年ぶりに基準を達成する見込みを示している。ただしこれは、電力公社の株式会社化に伴って職員年金が一般制度に移行するのに伴い、公社から国庫に清算金が支払われるという特殊要因にも基づいている。また、政府の経済見通しは欧州委員会やIMFと比べ楽観的で、税収が過大に見積もられているとも指摘されており、実際には達成できない可能性もある。一方、政府債務残高対GDP比は04年に64.7%となっていたが、05年も65.8%と上昇し、「安定と成長の協定」で定められている60%を上回る見込みとなっている。
06年度予算案は雇用対策を最重点施策としており、また、財政の健全化を図ることを目的としている。歳出は前年度比名目1.8%増の2,661億ユーロと予想インフレ率程度に抑えられ、実質的に4年連続で横ばいとなっている。雇用対策、研究開発、国防、治安、司法、ODA等の優先施策には重点的に予算を配分している。なお、歳入は同3.2%増の2,577億ユーロとなっている。雇用対策としては、6月に就任したドビルパン首相が、零細企業における雇用創出の促進や、長期失業者の復帰促進のための経済的支援措置といった緊急雇用対策を既に打ち出している。また、財政赤字削減優先のため、所得税の本格減税は見送られたが、公正、簡素、競争力を税制の基本とし、こうした観点から所得税の簡素化、中所得層の負担軽減を図るため、07年から課税所得段階のフラット化を図るとともに最高税率を引き下げるといった税制改革を実施するとしている。