14 ユーロ圏 Euro Area
<2004年>
<2005年の経済>
2005年の経済成長率は、1%台前半程度となる見込みである(欧州委員会見通し1.3%(05年11月時点)、民間機関27社の平均1.3%(05年10月時点))。民間機関の見通しは、半年前(05年5月時点1.4%)に比べて下方修正されている。04年後半には外需の成長への寄与がマイナスとなる中で個人消費等内需が成長のけん引役となったものの、再び回復のペースは鈍化し、05年前半の経済成長率は、1〜3月期が前期比年率1.5%、4〜6月期が同1.2%と、緩やかな成長となった。
ユーロは、05年初以降対ドルで減価傾向にあったが、フランスにおいて「EU憲法」が国民投票で否決されたことをきっかけに大きく減価し、5月末に1ユーロ=1.22ドルを下回った。その後も米欧の金利差を背景におおむね1ユーロ=1.2ドル台前半で推移し、11月には1ユーロ=1.18ドルを下回る水準となっている。
こうした状況を受けて、企業は輸出拡大期待を強めており、企業景況感は改善している。消費者信頼感は低迷を続けていることから、個人消費の回復には時間がかかるとみられるが、年後半の景気は輸出主導で持ち直すと見られている。7〜9月期の経済成長率は前期比年率2.6%となった。また、欧州委員会では、10〜12月期には前期比年率に換算して1.6%程度(見通しの中央値)と、緩やかな回復が続くと予想している。
物価は、05年からは主要国での医療制度改革による自己負担増等の影響が剥落したものの、原油価格の高騰によるエネルギー価格の上昇を受け、総合消費者物価指数(HICP)上昇率は、このところ2%を上回って推移している。失業率は、04年(8.9%)からはわずかに低下しているが、依然8%台後半の高水準で推移している。
<2006年の経済見通し>
06年の経済成長率は、2%弱程度となる見込みである(欧州委員会見通し1.9%(05年11月時点)、民間機関27社の平均1.8%(05年10月時点))。
世界経済が堅調に成長しており、ユーロが減価傾向にあること、長期金利が歴史的低水準にあることから、企業のバランスシートは改善を続けており、利益率も上昇している。これらを受けて輸出や生産がおおむね強含んでいる。また、失業率は依然高水準であるものの、労働市場の柔軟性は徐々に改善してきている。
下方リスクとしては、ユーロ圏の内需が弱いことから、原油価格の上昇や長期金利の反転、ユーロが再び増価するといった外的要因に、特に影響を受けやすいことが挙げられる。また、企業のバランスシート改善にもかかわらず企業投資の回復が遅れていることや、一部のユーロ加盟国では、住宅市場の過熱や高水準の家計債務等、構造的な問題を抱えていることも挙げられる。
<財政金融政策の動向>
欧州中央銀行(ECB)は、03年6月に政策金利(短期買いオペの最低応札金利)を0.5%ポイント引下げ2.00%とした後、2年以上の間、ユーロ圏では戦後最低の水準である2.00%に据え置いている。総合消費者物価指数(HICP)上昇率が「前年比2%を下回るが2%に近く」とする目標値を超えて推移しているものの、ECBは、原油高による物価上昇圧力にもかかわらず、金融政策スタンスは引き続き「適切」だとしている。ただし、ECBは10月の理事会において、「物価の上振れリスクは増大しており、その背景にあるのは原油相場の不確実性、川下への価格転嫁の可能性、さらに賃上げや価格設定における二次的影響の可能性である。」と強い警戒的な態度を示しており、市場では、12月の理事会において利上げが行われると見ている。