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第II部のポイント

1.アメリカでは2002年後半以降、回復が一層緩やかに

●アメリカ経済は、(i)雇用や生産・設備投資の回復の遅れ、(ii)企業会計不信問題を契機とした株価の大幅な下落、(iii)個人消費の鈍化、などから2002年後半以降、回復が一層緩やかなものとなっている。
●これまでの株価にはバブル的要素が含まれていたと考えられる一方、高水準で推移する住宅価格は需要の高まりや家賃の動き等で説明される可能性が高い。

2.外需主導ではなく、内需が強い国ほど回復力は持続

●アジアは2002年に入りはっきりと回復に転じ、2002年後半も回復が続いている。これに対し、ヨーロッパでは2002年初めにみられた緩やかな回復がこのところ停滞している。この差は、アジアの内需が強いことによる。
●アジア諸国でも、内需が強い国ほど回復力は持続している。また、高成長を続ける中国がアジア諸国の外需を下支えする役割を果たすようになっている。
●ドイツでは国内最終需要の弱さが続いている。この背景には、雇用コストが硬直的で高い水準にあることや、統合後の不動産市場の低迷などの構造的な要因がある。

3.財政金融政策は課題に直面

●アメリカの財政収支は、2002年度に入り赤字に転じている。景気回復の遅れから、当初見通しよりも赤字幅は拡大し、双子の赤字が懸念されている。
●ユーロ圏でも主要国の財政収支は悪化している。「安定と成長の協定」に定める上限を超える可能性が高いことから、「協定」のあり方を巡る議論に発展している。
●景気の回復が緩やかになったことから、主要中央銀行は利上げから利下げへと視野を移している。アメリカ、イギリス、韓国などを代表として、株価の下落、住宅価格の上昇により、金融政策運営における資産価格の位置付けを巡る議論が高まっている。
●インフレ・ターゲティングを導入している国でも金融政策は柔軟に運営されており、また、目標の下限が重視されている。

4.世界経済の回復は2003年前半までは緩やかなものに

●中心シナリオでは、アメリカは、2002年後半には成長が鈍化するものの、2003年後半に向けて回復力が高まる見通し。
●北東アジアでは、2002年から2003年にかけて景気拡大が持続する。ASEANでは、投資の回復が遅れているが、2003年に向けて成長率は高まる。
●ヨーロッパでは景気回復の確かさが増すのは2003年後半以降になる。
●今後の動向を左右する大きな不確定要素としては、設備投資の回復傾向が明確でないこと、イラクを巡る軍事的緊張の高まりがあげられる。
●このほか、アメリカの経常収支赤字とドルの持続可能性、中南米諸国における経済危機と動揺も世界経済の先行きへのリスク要因である。


第II部 世界経済の展望――緩やかな景気回復

 海外経済(日本に関係の深い22か国/地域)は、世界同時減速によって2001年には成長率が低下した。2002年に入るとアメリカ経済の回復が世界経済を牽引することによって、世界の景気回復が進みつつあった。春時点ではこのような動きが広がるものと期待されていたが、その後の世界的な株安の下で世界経済の回復は緩やかになっている。
 以下では、このような動きの中で2003年の海外経済がどのような姿になるのかを整理する。そして、2002年の回復が緩やかになった要因、主要地域別の回復の特徴、財政金融政策の課題を明らかにしたい。


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