●アメリカ経済は、(i)雇用や生産・設備投資の回復の遅れ、(ii)企業会計不信問題を契機とした株価の大幅な下落、(iii)個人消費の鈍化、などから2002年後半以降、回復が一層緩やかなものとなっている。
●アジアは2002年に入りはっきりと回復に転じ、2002年後半も回復が続いている。これに対し、ヨーロッパでは2002年初めにみられた緩やかな回復がこのところ停滞している。この差は、アジアの内需が強いことによる。
●アメリカの財政収支は、2002年度に入り赤字に転じている。景気回復の遅れから、当初見通しよりも赤字幅は拡大し、双子の赤字が懸念されている。
●中心シナリオでは、アメリカは、2002年後半には成長が鈍化するものの、2003年後半に向けて回復力が高まる見通し。
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第II部 世界経済の展望――緩やかな景気回復 |
海外経済(日本に関係の深い22か国/地域)は、世界同時減速によって2001年には成長率が低下した。2002年に入るとアメリカ経済の回復が世界経済を牽引することによって、世界の景気回復が進みつつあった。春時点ではこのような動きが広がるものと期待されていたが、その後の世界的な株安の下で世界経済の回復は緩やかになっている。
以下では、このような動きの中で2003年の海外経済がどのような姿になるのかを整理する。そして、2002年の回復が緩やかになった要因、主要地域別の回復の特徴、財政金融政策の課題を明らかにしたい。