第2章 第3節 生産の動向

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本章冒頭で述べた通り、2021年以降においては、原材料価格の上昇や部品供給不足が、製造業を中心に影響を与えたが、ここでは地域別の生産への影響を整理するとともに、原材料から製品への価格転嫁の状況についても確認する。

(生産は2021年後半以降の地域毎の持ち直しの状況にばらつきがみられる)

まず全国の鉱工業生産の推移をみると(第2-3-1図(1))、2021年前半は持ち直していたが、後半に入ると、半導体などの部品供給不足の影響による自動車や家電などの電気・情報通信機械の生産減少等により、持ち直しに足踏みがみられた。その後は、2022年4月末からの中国の都市封鎖による経済活動の抑制などによる影響もあったが、2022年7-9月期の生産は前期比増加と持ち直しの動きとなっている。

地域別の推移をみると、2021年前半についてはおおむね全地域において四半期でみた前期比が増加となるなど持ち直していたが、2021年後半以降は、各地域における製造業の産業構成、特に輸送機械の生産比率の違いによって持ち直しの状況に差がみられる(第2-3-1図(2)第2-3-2図)。

具体的に前期比の動きをみていくと、2021年7-9月期は、北海道や電子部品・デバイスが好調であった東北を除いた地域において、輸送機械の生産比率の高い東海や中国をはじめとして減少となった。10-12月期は、輸送機械の影響が大きい東海、中国、北関東、南関東、及び甲信越の5地域で増加に転じたが、それ以外の地域では減少となった。

2022年1-3月期は、多くの地域で増加となった一方、北関東、南関東では輸送機械、甲信越では電気・情報通信機械の減少により、また東北では3月16日の福島県沖地震の影響もあり、この4地域は減少となった。4-6月期は、東北が地震の影響による1-3月期の減少から増加と持ち直しの動きとなるなど、7地域で増加となった一方、輸送機械の影響の大きい東海、中国をはじめ、北海道、北陸、近畿の5地域で減少となった。7-9月期は生産用機械や輸送機械の増加により多くの地域で増加となったが、北陸や四国では電子部品・デバイス、北海道では食料品の減少により減少となった。

(原材料価格等の産出価格への転嫁の動きには地域差があり引き続き注視が必要)

原材料価格等の産出価格への転嫁の状況をみると、全体としては若干の進展がみられるものの、産業立地等の影響から地域間でのばらつきがみられる。日銀短観の販売価格判断DI(販売価格が3か月前と比べて上昇したと答えた企業の割合と下落したと答えた企業の割合の差)から仕入価格判断DI(仕入価格が3か月前と比べて上昇したと答えた企業の割合と下落したと答えた企業の割合の差)を差し引いた値(以下「疑似交易条件」という。)の推移をみていこう。これが疑似交易条件と呼ばれるのは、企業部門の利幅変化の方向を示しているからである。数量が一定の場合、販売価格DI-仕入価格DIが上昇すれば、例えば販売価格の上昇が仕入価格の上昇を上回っていることになり、いわゆる利幅が拡大していることを意味する。マイナスの場合は逆となる。2022年の輸入物価上昇下においては、仕入価格の上昇が先に生じており、販売価格の上昇が遅れていたが、両者の差が縮まれば、転嫁が進んで利幅が回復しているということになる。

地域別に確認すると(第2-3-3図)、2021年12月あるいは2022年3月以降、多くの地域においてはマイナス幅が縮小する動きとなっているが、その程度には地域差がある。中国や四国の転嫁は進んでいるようにみられるが、第三次産業比率の高い北海道や南関東(第2-3-4図)においては転嫁が進んでおらず、利益や賃金への影響も懸念されることから、引き続き状況を注視する必要がある。

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