第2章 第2節 消費及び観光の動向

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本節では、地域別の消費を消費者側からとらえたカード支出に基づいて財、サービス別も含めてみるとともに、販売者側からとらえた消費動向として、財は百貨店・スーパー及びコンビニエンスストアの売上高、サービスについては旅行・観光の動向を示す宿泊施設稼働率をみていく。

(カード支出に基づく財・サービス別の消費額は全国的に緩やかに持ち直し)

2022年夏以降、地域別の消費支出は緩やかに持ち直している。カード支出に基づく地域別の財・サービス別の消費支出額(実質63)をみると(第2-2-1図)、財への消費支出は、2021年以降の各期においていずれの地域も一貫して感染症前(2016-2018年度の同期平均)を上回っており、底堅く推移している。一方、サービスへの消費支出は、2022年1-3月期までは感染症の影響もありいずれの地域でも弱い動きとなっていたが、2022年3月に全国的にまん延防止等重点措置が解除されて以降は持ち直しの動きとなり、2022年10・11月にはいずれの地域においても感染症前の水準におおむね戻ってくるなど回復傾向にある。こうした動きにより、財とサービスをあわせた消費支出は、いずれの地域においても10・11月は感染症前の水準を超えている。

(百貨店販売は感染症の影響で振れを伴って推移する一方、スーパー販売は堅調に推移)

次に、販売側からみた財消費を示す百貨店とスーパーの販売額の地域別推移をみよう。地域別の百貨店販売額(全店ベース)の推移をみると、各地域同様に感染が拡大している時には落ち込み、感染が落ち着いている時には持ち直す動きがみられる(第2-2-2図(1))。2021年1-3月期から7-9月期については行動制限措置が講じられた時期があったため、各地域とも販売額が感染症前(2016-2018年度の同期)を100とした場合60~70台となっていたが、10-12月期は感染者数の落ち着きや行動制限の緩和から、いずれの地域も7-9月期と比較して10ポイント前後の上昇がみられた。2022年の1-3月期は変異株による感染拡大やそれに伴う行動制限措置の影響で再び落ち込んだ。3月にまん延防止等重点措置が解除されたことから4-6月期は全国的に持ち直したが、7-9月期は感染症の影響によって販売額に地域差が生じている。近畿より東の地域では4-6月期と同程度となっているが、感染者数をみるとピーク時でも10万人当たり200人程度までにとどまっていた。一方、中国、四国、九州・沖縄においては、4-6月期より販売額が減少した。これらの地域における同期の感染者数をみると、まず四国および九州・沖縄においては、ピーク時に10万人当たり250人ないしそれ以上と他の地域より高かった。また中国においては、これまでの感染拡大の程度が10万人当たり50人未満と限定的であったのに対し、2022年夏のピーク時は10万人当たり200人と他地域と同等ないしそれ以上となっていた(付図2-2)。こうした感染者数の動向が、地域における百貨店販売額に影響したものとみられる。

地域別のスーパー販売額(全店ベース)は2021年以降、おおむねいずれの地域においても感染症前を上回る水準が続いている(第2-2-2図(2))。行動制限が緩和された2021年10-12月期に多くの地域で感染症前と比べた増加に一服感がみられる以外は堅調な推移となっている。

(宿泊施設稼働率はいずれの地域においても概ね上昇傾向で推移)

全国の宿泊施設稼働率は、まん延防止等重点措置が解除された2022年3月以降、上昇傾向にある(第2-2-3図)。地域別にみても、2022年の各月は、いずれの地域の稼働率も前年同月を上回って推移するとともに、夏季休暇時期の8月に高まったほか、月を経ることに上昇するという傾向で推移した。特に、2022年10月以降については、全国旅行支援が実施されたことにより、感染者数が過去最多となった北海道以外の地域においては、稼働率が上昇するとともに、遠方への旅行が増加するという動きもみられた64


脚注63 実質値は、総務省「消費者物価指数」の全国を用いて実質化した試算値。なお、各系列の実質化にあたって使用した消費者物価指数の品目については、第2-2-1図の(備考)を参照。
脚注64 宇佐美(2022)では、「JCB消費NOW」のデータを用いて感染症後における国内旅行消費に対する需要喚起策の効果を比較している。それによると、第1回目のGoToトラベル事業(2020年7月から同年12月末)では同一県または近隣県への旅行が活発になり、第2回目の県民割支援(2021年4月から2022年10月10日)では、近隣ブロックへの旅行まで効果が波及したが、第3回目の全国旅行支援(2022年10月11日から)では、支援に際して旅行先の制限がないことから、近隣ブロックのみならず遠方への旅行が増えていたことが分かるとの結果を示している。
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