第2章 第1節 景気ウォッチャー調査でみる景況感

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(現状判断DIは主に感染者数の推移に応じて振幅をもって推移)

景気ウォッチャー調査における現状判断DIの推移をみると、感染者数のピークに応じてDIが短期間で変動する姿となっている。2021年以降、これまで5回のピーク(第3回ピークから第7回ピーク)を迎えている(第2-1-1図(1)(2)(3))が、いずれのピーク時においても、当該月あるいはその前月にDIが底をつけている(第2-1-2図(1))。

現状判断DIの推移を感染症前も含めて中長期的に確認すると、感染症後は、過去の景気循環局面と比較して月次の振れが大きくなっている(第2-1-2図(2))。実際、直近(2020年6月以降)におけるDIの実績値と趨勢(DIの5か月移動平均値)との乖離の絶対値平均は5.0となっており、2009年以降の景気循環期における、第15循環(2009年4月から2012年11月)の2.3、第16循環(2012年12月から2020年5月)の1.5より大きくなっている(第2-1-2図(3))。

(ただし、最近では感染者数ピークでも現状判断DIは大幅な低下となっていない)

前述のとおり、現状判断DIは、感染者数が直近ピークとなった時期に低くなる傾向がみられたが、最近はこうした関係が薄らいでいる。2021年以降で直近の感染者数のピークを迎えている月の現状判断DIをみると、2022年2月までにおいてはいずれも現状判断DIは40を下回っているが、2022年8月の感染者数ピーク時には、現状判断DIは45.5と40を下回らなかった(第2-1-2図(1)(再掲))。

2022年2月までのピーク時には、緊急事態宣言やまん延防止等重点措置がとられていたのに対し、2022年8月のピーク時はこうした行動制限がとられなかったことが、感染者数が景況感へ与える影響を緩和した可能性がある(第2-1-3表)。現状判断DIの回答者比率をみても、2021年以降、2022年8月より前の感染者数ピーク時は、「やや悪くなっている」あるいは「悪くなっている」と回答した者の比率の合計が45~60%程度であったのに対し、2022年8月は33.5%にとどまっている(第2-1-4図)。

(最近は物価上昇が現状判断DIの推移に与える度合いが高まっている)

このように、現状判断DIは、感染者数の増減やその他の動向を反映した数字となっているが、景気ウォッチャーから寄せられた判断理由(コメント)を分析することで、DI変化の背景にある具体的な事象を探ることができる。

まず、感染症関連として「新型コロナウイルス」と記載のあった現状判断に関するウォッチャーからのコメント数の推移をみると、感染症後62は毎月100件から多い月では1000件近いが、感染者数がピークとなる月あるいはその前月にコメント数もピークをつけていることがわかる(第2-1-5図(1)①)。

次に、原材料価格や物価上昇関連として「価」または「値上」と記載のあったコメント数の推移をみると、2021年前半までは毎月100件前後までで推移してきたが、2021年9月に100件を超えた後は増加傾向で推移している(第2-1-5図(1)②)。また、原材料不足などの供給制約関連として「不足」と記載のあったコメント数は、2021年4月以降に増加し、2021年9月以降は、振れを伴いながら50件前後で推移している(第2-1-5図(1)③)。

コメントとDIの関係についてみていこう。「新型コロナウイルス感染症」とコメントしたウォッチャーの回答で作成した現状判断DI(以下、「「新型コロナウイルス」コメントDI」という。)と「価」または「値上」とコメントしたウォッチャーの回答で作成した現状判断DI(以下、「「価」または「値上」コメントDI」という。)の推移をみると、2021年7月までは全体の現状判断DIが「新型コロナウイルス」コメントDIよりも上回りながらも近接して推移していたが、その後は全体の現状判断DIと「新型コロナウイルス」コメントDIがそれまでよりも乖離して推移するとともに、現状判断DIが「価」または「値上」コメントDIに近づいて推移する傾向がみられる(第2-1-5図(2))。このことは、物価上昇が現状判断DIの推移に影響を与える度合いが高まっていることを示唆している。


脚注62 「新型コロナウイルス感染症対策本部」が設置(2020年1月30日)された後の2020年2月以降。
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