第2章 第3節 生産への影響

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前節までみてきたとおり、感染症は人々の日常生活の変容を通じて、特に家計消費に関わる小売業やサービス業などに大きな負の影響を与えた。一方、感染症の世界的流行は、サプライチェーンの混乱や輸出の減少などを通じて、国内の製造業等にも大きな影響を及ぼしている。そこで本節では、2020年に感染症が与えた地域の経済への影響の大きさについて、主に製造業等の生産者側の視点からみていく。

(企業の景況感は各地域で大きく低下したがその後は持ち直しがみられる)

企業側からみた景況感について、2020年の推移を地域別に確認すると(第2-3-1図)、日銀短観DI(全規模全産業)によれば、企業の景況感は2020年3月から6月まで、すべての地域で大幅に低下した。しかし続く9月のDIは、南関東と四国を除いて上昇に転じており、12月には全ての地域でDIは上昇した。3月には北海道を除く全ての地域で一段とDIは上昇しており、各地域の企業の景況感は、感染症前の水準にまでは回復していないが、持ち直しがみられる。

(各地域の生産は2020年4-6月期に落ち込んだ後持ち直している)

製造業の生産の状況をまず全国の鉱工業生産指数によって確認すると(第2-3-2図)、生産指数は2020年4-6月期に感染症の影響により大きく低下したが、その後は2021年1-3月期まで連続して上昇する動きが続いている。地域別に指数の推移をみると、4-6月期には全ての地域で生産指数は大きく低下した。しかし続く7-9月期には、北関東、南関東、東海、近畿、中国及び九州といった地域で生産が持ち直し、指数は大きく上昇した。10-12月期は前述の地域に加え、北海道、東北、甲信越及び北陸といった地域でも生産が持ち直し、指数が大きく上昇している。2021年1-3月期には、東海で持ち直しに足踏みがみられたものの、全ての地域で指数は前期より連続して上昇しており、生産は各地域で持ち直しといえる状態となっている。

以上のような各地域の生産の持ち直しの状況を、産業別の寄与度によって確認すると(第2-3-3図)、7-9月期には、輸送機械の生産が他の産業に比べて増加したことを背景に、代表的な輸送機械である自動車の生産が盛んな地域で、生産指数への上昇寄与が大きかった。具体的には、北関東、南関東、東海、近畿、中国及び九州といった、製造業のうち輸送機械の占める割合が高い地域(第2-3-4図)では、7-9月期の輸送機械による上昇寄与が大きく、生産指数は上昇している。続く10-12月期には、より多くの地域で生産に持ち直しの動きが広がった。具体的には、引き続き輸送機械の生産が増加したことが、北関東、南関東、東海、中国及び九州といった地域の生産の増加に寄与した。また汎用・生産用・業務用機械は、東北、北関東、南関東、甲信越、北陸、近畿及び九州などの生産の増加に寄与した。電子デバイス、電気・情報通信機械は、東北、北関東、南関東、甲信越、近畿及び九州などの生産の増加に寄与した。鉄鋼業・非鉄金属・金属製品は、北海道や北陸の生産の増加に寄与した。2021年1-3月期には、輸送機械がマイナスに寄与したことから、東海の生産指数の前期比増減率が特に大きく低下したが、全ての地域で生産指数の前期比増減率はプラスが続いた。引き続き汎用・生産用・業務用機械が、東北、北関東、南関東、甲信越、北陸、近畿、中国、九州といった地域の生産の増加に寄与したほか、電子デバイス、電気・情報通信機械も、東北、北陸、近畿、四国の生産の増加に寄与した。その他には、鉄鋼業・非鉄金属・金属製品が北海道の生産の増加に寄与している。総じて2020年以降の我が国の地域の生産は、感染症の影響により4-6月期には大きく減少したが、その後の推移をみれば、地域差はあるものの概ね持ち直していると言える。

(企業の開業率は南関東等で低下したが地方圏では上昇した地域も多い)

2019年の企業の開業率と廃業率を都道府県別にみると(図2-3-5)、開業率と廃業率との間には正の相関関係(相関係数は0.598)がみられる。こうした背景には、開業率が高い都道府県ほど、企業の新陳代謝が活発であることがあると考えられる。特に沖縄及び都市圏の開業率と廃業率は他地域と比べて高い傾向がみられる。感染症の影響を受けた2020年の開業率について、2019年からの変化をみると(図2-3-6)、南関東、近畿、沖縄等では低下している一方、地方圏では開業率が上昇した地域も多い。地方圏を含めて企業を後押しすることが重要となる。

(企業の倒産件数は減少傾向)

企業の倒産件数の推移を業種別に三大都市圏(南関東、東海及び近畿)と地方圏(三大都市圏以外の地域)とでみると(図2-3-7)、どちらの地域においても倒産件数は2020年4-6月期より減少傾向にある。業種の詳細をみると、三大都市圏では卸・小売業やサービス業他(宿泊業、飲食業を含む)が倒産件数の減少に寄与している一方、地方圏では建設業や卸・小売業が減少に寄与しているといった違いが見られる。このように倒産が抑制されている背景には、政府等の資金繰り支援の効果もあるものとみられる。

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