第2章 新型コロナウイルス感染症の地域経済への影響
2020年以降の我が国の地域経済は、新型コロナウイルス感染症(以下、感染症)により、大きく落ち込んだ。年初より中国から各国へと感染が拡大した結果、国境をまたいだ人の行き来が減少し、日本を訪れる外国人観光客や国内のインバウンド需要は激減した。4月には国内の感染拡大を防止するため、初めは東京都や大阪府等7都府県で、後には全国に対象を拡大して緊急事態宣言が発出された。人々が外出の機会を減らし、飲食店や小売店などのサービス業が営業を自粛した結果、国内の消費は大幅に落ち込んだ。更に欧米やアジア諸国でも感染が急激に拡大したことから、世界的なサプライチェーンの混乱や海外市場での需要の減少などが生じ、国内製造業の生産活動も急激に低下した。感染症による経済減速の影響は雇用分野にも波及し、人手不足を背景に近年は堅調に推移してきた有効求人倍率は低下に転じた。5月に緊急事態宣言が解除されて以降、経済活動が段階的に再開され、景気には持ち直しの動きがみられるようになったものの、感染拡大防止と経済活動との両立が模索される中で、2021年1月には再び緊急事態宣言が都市部を中心とした地域に発出されるなど、依然として国内の地域経済は感染症の影響による厳しさの中にある。本章では、感染症が我が国の経済へ与えた影響について、特に地域経済の観点より概観する。