第2章 第2節

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2-2.地域別生産と中国経済の関係

生産の動きが緩やかになった背景には、中国経済の減速がしばしば指摘される。中国経済の動向は、主に、貿易(輸出入)、インバウンド消費、及び現地法人企業における企業収益の3つのルートを通じて、日本経済に影響を与えると整理されるが、ここでは、国内各地域における生産と中国への輸出動向の関係についてみていく。

(2015年は中国経済の影響を懸念するコメントが増加)

「景気ウォッチャー調査」のコメント欄には、景気ウォッチャーの街角景況感を示す言葉が寄せられる。「中国」、「中国経済」という単語が頻繁に登場し出したのは2015年の夏頃からである。時には、企業動向の現状や先行きに関するコメントの中、またある時は、家計動向についてのコメントの中に登場してきた。そこで、「中国」、「中国経済」という言葉を記載した景気ウォッチャーの景況判断だけを集計すると、現状判断及び先行き判断DIともに、2015年夏以降は総合DIを下回っている。2016年2月の現状判断DIは、わずかながら総合判断DIを上回ったが、引き続き低水準で推移している(第2-2-1図)。これは、7月以降はマイナスの意味で用いられることが増えたためと考えられる。

(輸出に占める中国の割合は2割弱。主な内容は電子部品・デバイス)

マインドの悪化要因となった中国経済と我が国の経済の関係は密であり、2015年の輸出総額は13.2兆円、輸出全体の17.5%を占め、米国に次ぐ第二位の輸出相手国である。2013年~2015年(暦年)の中国向け輸出品目の内訳の推移をみると、電気機器、一般機械、化学の割合が高く、特に、スマートフォン向け需要を受けて、半導体等電子部品(鉱工業生産指数でいう「電子部品・デバイス」)の輸出に占める割合が最も高いことが分かる(第2-2-2(1)、(2)図)。

(税関別にみると、中国への依存度が高いのは大阪)

我が国輸出の2割を占める対中輸出と地域経済の関係を直接把握できる統計がないことから、ここでは貿易統計の税関別・品目別のデータを活用して推論する。全国9つの税関(函館、東京、横浜、名古屋、大阪、神戸、門司、長崎、沖縄)の各税関管内に所属する各港(空港、港湾)で把握した輸出金額について、各地域からの輸出動向を示すものとみなす。

税関別の中国(香港を含む)向け輸出の依存度をみると、2015年には、大阪税関、東京税関、門司税関等が全国平均23.1%を上回っており、これらの地域が、中国経済の影響を相対的に受けやすくなっている可能性がある(第2-2-3図)。

(税関別取扱い上位品目と各地域の産業特化パターンには相関)

各税関における中国向け輸出額の上位3品目と、当該品目の地域別の鉱工業生産指数におけるウエイトとの関係をみると、総じて、多くの地域で生産ウエイトが高い業種において対中輸出額が高い傾向があるようにみてとれる。このように、域内生産の主要業種と中国向け輸出が対応していることから、特化パターンによって中国経済の減速が特定の地域に大きく影響する構造となっている(第2-2-4図)。

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