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第2節 企業・雇用・家計の動向

1.企業の動向

(1)生産の動向

(輸送機械の他、一般機械、電気機械等で増加)

まず、全国の生産の動きをみてみよう(第1-2-1図)。

4月頃までの生産の回復を主導したのが、輸送機械の増加である。これは、資産効果や消費者マインドの改善などから個人消費が持ち直すなかで、新型車投入の効果が強くみられたこと、さらに円安や世界経済の改善から輸出環境が好転してきたことなどに起因するものである。はん用・生産用・業務用機械及び電気機械については、輸出向け需要が牽引する形で概ね同様の動きとなっている。一方、電子部品・デバイスは低水準となっているが、これは、スマートフォン向けの半導体などは増加したものの、従来型の携帯電話やデジタルカメラ向けの部品が減少していることに起因している。

(円安もあり増加に転じた輸出)

このように、生産の回復には輸出環境の改善が重要な要素となっていることから、ここで全国の輸出の動きを確認しておこう(第1-2-2図)。輸出は2012年10~12月期には減少していたが2013年1~3月期に増加に転じた。この内訳をみると、自動車が2013年1~3月期には増加に転じた他、一般機械でも2013年4~6月期に増加に転じている。自動車や建築物などの部材となる鉄鋼は微増が続いた。スマートフォンの生産動向などに依存する半導体等電子部品は2013年1~3月期には減少となったものの、4~6月期にはプラスとなっている。

(北陸、東海などで2013年に入り増加に転じた鉱工業生産)

地域別の鉱工業生産指数の動きを説明するにあたり、過半の地域で基準年としている2010年の水準を100としてその推移をみよう(第1-2-3図)。2012年後半は多くの地域で横ばいに近かった生産が、2013年に入り増加に転じた。地域別には、もとより生産水準の高い北陸でさらに上昇し、東海では1月、4月に大きく増加した。

鉱工業生産指数の地域別・業種別ウェイト(第1-2-4図)をみると、東海では輸送機械工業のウェイトが最も大きいほか、九州、中国でも全国平均より大きくなっており、特に東海では自動車生産増加が地域に与える影響が大きいことが窺える。一方、北陸は輸送機械のウェイトが低いにもかかわらず、生産の拡大幅が大きいが、これは、同地域が電子部品・デバイスや一般機械、医薬品等で高い競争力を持っていることによる。

また、生産の動きを地域別に業種別寄与度でみると(第1-2-5図)、まず目につくのが、輸送機械の増加である。特に東海で2013年に入り輸送機械の生産が大きく増加しているほか、中国でも2013年1~3月期の増加要因となっていることがわかる。次に、電子部品・デバイスについて全国的には2月を境に増加に転じているが、地域別には特に2013年4~6月期ではスマートフォン向けの生産比率が高いかどうかにより、増加した地域と減少した地域に分かれた。具体的には、フラッシュメモリを生産している東海、モス型計数回路などを生産している九州などで増加した一方、スマートフォン向けの製品の比較的少ない東北では減少した。一般機械及び電気機械については、製品の納品時期に応じて大きく上下する傾向があるが、四半期ベースでみると、2013年に入り、北陸や近畿などで生産の増加に寄与している。化学については、医薬品が増加している北陸に加え、中国などでも増加がみられた。

(コラム)基準年変更に伴う鉱工業生産指数ウェイトの変化

2013年10月現在、各地域の鉱工業生産指数のウェイトは2005年基準から2010年基準に改定作業中である。すでに2010年基準が公表されている地域についての推移をみると()、九州で特に輸送機械が増加していることがわかる。これは、この期間に南関東等から自動車生産の移管が行われたことが背景にある。また、中国でも輸送機械が増加しているが、これは、自動車の他、船舶関連が増加していることによる。四国の化学の増加はナイロン原料の増加等に起因している。北陸では電子部品・デバイスが増加している。

(2012年10月を底に好転した企業マインド)

輸出、生産が増加するなかでの企業マインドの好転を確認しよう。景気ウォッチャー調査の企業動向関連DIをみると(第1-2-6図第1-2-7表)、2012年10月からそれまで低下していたDIが上昇に転じていることがわかる。特に、先行き判断DIは製造業、非製造業ともに、円安・株価上昇や新政権の政策の期待感等から12月から大きく上昇し、2月がピークとなっている。現状判断DIでも円安を背景に、受注や採算の改善がみられたことから、5月まで上昇が続いた。現状判断DI、先行き判断DIともに、その後も高水準を保っている。

(2)設備投資、企業倒産等の動向

(各地で増加に転じた設備投資)

日本銀行「企業短期経済観測調査」をみると(第1-2-8図)、多くの地域で、2013年度は前年度を上回る設備投資が見込まれている。

また、法人企業統計調査における各地域の設備投資をみると1別ウィンドウで開きます第1-2-9図)、投資規模が一番大きな関東では増加と減少が交互に現れている一方、東海では増加を続けており、近畿では減少を続けていることがわかる。これは、東海では自動車を中心とした生産が増加しているのに対し、近畿では電気機械や電子部品・デバイスなどで生産が減少していることに起因しているものと考えられる。この他、九州で続く減少は、2011年後半に電子部品・デバイス関係の大規模投資が行われた反動減であると考えられるが、2013年4~6月期には大幅増加となっている。

(補助金効果もあり太陽光発電などが増加した工業立地2別ウィンドウで開きます件数及び面積)

次に、地域別にみた工場立地件数及び立地面積をみると(第1-2-10図第1-2-11図)、2012年は全地域で2011年より増加していることがわかる。これを地域別にみると、工場立地件数、工場立地面積ともに、北海道、東北、北関東、九州で大きく増加している。

2012年は、再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度の導入もあり、発電所の立地が多いことが特徴である。実際、北関東を除く九州、東北、北海道では、メガソーラーを含む太陽光発電所の立地が多く、特に東北では立地面積の8割近くが雪の少ない太平洋側(宮城、青森、福島等)での太陽光発電所である。また、北海道では雪の少ない道東地区を中心に、メガソーラーや風力発電所が立地した。九州でも、日本国内では効率のよい発電ができる場所として太陽光発電所の立地が進んだ。

この他の要因としては、九州での増加は熊本の電子部品・デバイス関係の工場立地等を反映している。また、北関東では首都圏から近く震災被害が比較的小さかったこと等を中心に、国内の再配置の観点から長期的な戦略として製造業を中心とした立地がみられた。

(九州で盛んとなった大規模小売店立地)

大規模小売店の新設届出数を地域別にみると、大都市を抱える南関東や近畿で多い他、九州で多い(第1-2-12図)。これは、九州ではドラッグストアなどを併設した大規模小売店の新設により集客を図る動きが目立っているためと考えられる。

人口100万人当たりでみると(第1-2-13図)、大規模小売店が必ずしも大消費地に建設されるわけではないため南関東や近畿で相対的に低く、むしろ九州、北陸などが高い。

(都市部で安定しているほか、東北で伸びている不動産業用建物)

不動産業用建物の着工件数を地域別にみると(第1-2-14図)、南関東や近畿といった大都市圏では安定した着工件数となっている。一方、東北では、宮城や福島で件数が増加しており、東日本大震災からの復興需要の影響などが考えられる。

また、人口100万人当たりでみると(第1-2-15図)、大都市を有する南関東、近畿、東海で多くなっている。12年度については、次に多いのが東北であるが、東日本大震災からの復旧・復興によるものであると考えられる。

(卸売・小売業や建設業などで減少している倒産件数)

倒産件数は、2013年度に入り、多くの地域で卸売・小売業や建設業などを中心に減少している(第1-2-16図)。

(総じて堅調に推移する公共工事請負金額)

公共工事請負金額は2013年4~6月期に全地域で大きく増加し、続く7~9月期も多くの地域で増加している(第1-2-17図)。大きな事業としては、北海道新幹線の函館総合車両基地や、北陸新幹線の白山総合車両基地といった新幹線建設に係る事業の他、北近畿自動車道、四国横断自動車道のような高速道路の建設事業が目立つ。復旧・復興が進む東北では、除染事業が本格化している。また、観光客が増加している沖縄では、国際線ターミナルビルの建設が進んでいる。

(企業の動向のまとめ)

これまでみてきた企業の動向についてまとめると以下のとおりである。

第1に、地域経済も世界経済などのマクロ経済環境の影響を受けていることである。今回の生産の上昇は世界経済の改善や為替の円安方向へのシフトを受けた輸出増加が製造業の生産増加の要因になっており、採算改善等から、産業空洞化への懸念が後退する動きもみられる。

第2に、かなりの地域経済が輸送機械(自動車)の生産動向に影響を受けていることである。特に自動車産業が集積している東海の他、自動車産業が多く立地している九州、東北、中国などで自動車生産の増加に応じて地域全体の生産が底上げされている。

第3に、非製造業、特に建設業の回復が景気を下支えしていることである。建設業の好調はオフィスビルや商業施設等の建設や公共工事の増加によるところが大きい。

2.雇用の動向

(東海、北陸で改善し、北関東で伸び悩んだ有効求人倍率)

雇用情勢については、2012年後半に東海・北陸などで弱含みの動きもみられたものの、総じてみれば2011年後半以降、改善の動きが続いてきた。

有効求人倍率の動きをみると(第1-2-18図)、2012年10~11月にかけて有効求人倍率の高い東海や北陸で低下の動きがみられたものの、その後東海では自動車生産の持ち直し、北陸では一般機械等の生産持ち直しを受け有効求人倍率が改善した。この他、東日本大震災からの復興が進む東北でも有効求人倍率は上昇した。ただし、同様に有効求人倍率が上昇している中国では、後ほどみるとおり失業率が増加するなどの動きがあり注視する必要がある。

この他、2012年に大規模な雇用調整が行われた北関東では、13年春ごろまで有効求人倍率は横ばいとなっていたが、その後は緩やかながら改善がみられている。

(沖縄以外で1.0倍を超えた新規求人倍率)

次に、有効求人倍率に先行して動く傾向のある新規求人倍率を地域別にみてみよう(第1-2-19図)。まず目立つのが、自動車の増産を背景に伸びている東海、電子部品・デバイスや一般機械等の生産増加を背景に伸びている北陸である。また、サービス業のウェイトの高い南関東や近畿でも上昇している。このように、多くの地域で2013年4月には改善に転じており、2013年6月には沖縄を除く全地域で1.0倍を超えた。

(医療・福祉、卸売・小売、宿泊・飲食の他、建設業にみられる地域別にみた業種別新規求人数)

新規求人倍率の改善はどの業種によるものであろうか。これを確認するために、地域別にみた業種別新規求人数をみてみよう(第1-2-20図)。

第1に、地域横断的にみて、医療・福祉、卸売・小売、宿泊・飲食といった業種で増加しているほか、建設業では北海道や東北を中心に増加幅が大きくなっていることである。これは、介護士や店員などの不足に加え、建設業は公共工事や民間発注などの増加により人出不足となっていることに起因している。

第2に、サービスの求人が増加しているほか、製造業の求人も2013年7~8月期には対前年同期比で増加に転じている点である。サービスには製造業向けの請負や派遣が含まれているほか、製造業では2012年に起きた雇用調整が終了したこともあり、しばらくは対前年同期比で製造業求人の増加が見込まれる。

第3に、地域別にみると、自動車以外の製造業が他地域に比べ集中している北関東の求人数は全体的に弱いことである。北関東では卸売・小売などは増加しているものの、製造業や請負・派遣などを含むサービスが2013年4~6月期まで減少しており、いまだ厳しい雇用情勢が続いていることが予想される。ただし、2013年7~8月期にはサービス業が増加に転じるとともに、新規求人数全体も増加するなど、明るい兆しがみえつつある。

(コラム)いわゆる「バブル期」以降で最高水準の有効求人倍率となった沖縄と北海道

沖縄及び北海道では他地域に比べ低い有効求人倍率となっている。しかしながら、各々の地域にとって、この有効求人倍率は歴史的な高水準である。

北海道では、1991年7月にいわゆるバブル期最高値である0.79を記録した後、低下に転じており、2013年9月の0.78はこの水準に肉薄する水準である。ただし、資格や経験を必要とし、労働強度の強い建設業(建設土木測量技術者、型枠大工、とび工など)や医療・福祉(介護士など)の求人が中心となっており、すべての求職者が求人要件を満たせるわけではないため、求人が埋まり難くなっていることもある。

(図1)

沖縄の有効求人倍率もバブル期以来の高水準となっており、この内容も、全国的に増加している医療・福祉やサービス業に加え、宿泊・飲食などが中心となっている。この背景には観光客の増加なども考えられる。

(図2)

この他、バブル期以降の最高値を記録している県は、四国の徳島県、愛媛県、高知県、九州の長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、東北の青森県、岩手県、宮城県、福島県がある(各県の有効求人倍率の推移は付図1参照)。このうち四国3県では卸売・小売業の求人が伸びており、コンビニエンスストアの新規出店などが一因と考えられる。また、九州では、建設業等が伸びており、2012年の豪雨による災害復旧といった要因も考えられる。最後に東北では、復興需要がある被災3県に加え、青森県でも建設業の求人が増加している。

(北海道、近畿、南関東で低下した完全失業率)

完全失業率(季節調整値)をみると(第1-2-21図)、2013年度に入り北海道、南関東、近畿では低下を示しており、中国・四国、九州・沖縄は横ばいとなっている。東北、北関東では上昇している。東海、北陸も横ばい圏内の動きであるが、水準は3%台半ばと低い。

次に、地域別に完全失業率(原数値)の前年同期差と、その構成要素となる就業者数、完全失業者数の寄与をみることで、失業率の動きの背景を探ることとしよう(第1-2-22図)。

労働市場への新たな参入が進んで労働力人口が増加し、それを上回って企業が雇用を吸収する形で就業者数が増加(就業者数の失業率への寄与がマイナス)して失業率が低下するのが、当該地域にとって一つの望ましい姿と考えることができる。2012年10~12月期以降そのような動きをたどったのが、沖縄、近畿であり、両地域とも失業率は低下している。逆のパターンが、就業者が減少するなか、労働力人口も減少し、完全失業率が上昇するケースであり、北陸がこれに近い動きではあるが、失業率が前年並みの低水準となっており、大きな問題とはいえない。

(コラム)「再就職援助計画」の認定状況

雇用調整について確認するため、1事業所当たり30人以上の雇用調整の際に届出を必要としている「再就職援助計画」の認定状況を地域別にみてみると、就業者1万人当たりの離職者数は、東北、中国、北関東、九州が高い(参照、各県の数値は付図2参照)。また、届出の時期別にみると、中国は2012年の届出が多いのに対し、東北、北関東などでは2013年に入ってからが多い。こうした雇用調整の時期の違いが現在の景況感に影響を及ぼしている可能性がある。

(雇用関係者のマインド)

最後に、景気ウォッチャー調査の雇用関連DIを使用し、雇用関係者のマインド変化をみてみよう(第1-2-23図)。現状は2012年10月、先行きは2012年11月を境に上昇に転じており、現状は2013年3月、先行きは2013年4月に各々最高値となっている。その後は、高水準を維持しており、雇用関係者の期待が高いことが窺える。

(雇用の動向のまとめ)

雇用の動きをまとめると以下のとおりである。

第1に、地域横断的に新規求人数が増加するなかで、製造業でも求人が増加に転じるなど雇用情勢は確実に改善している。有効求人倍率は2013年に入り全地域で上昇を続けており、東海、北陸などで有効求人倍率は1を超えて求人が求職を超える水準まで上昇した。また、沖縄や北海道ではいわゆるバブル期以降で最高の有効求人倍率となっている。また、新規求人数を業種別にみると、各地域とも共通して医療・福祉や卸売・小売、宿泊・飲食、建設といった従来から増加を続ける職種に加え、多くの地域で製造業の求人が増加に転じている。

第2に、完全失業率をみると、北海道、近畿、南関東では低下したほか、東海、北陸でも3%台半ばと低い水準で推移していることである。ただし、東北では2013年7~9月期には4.4%に上昇するなど注意が必要である。

第3に、北関東に雇用改善の弱さがみられた。これは、2013年4~6月期に新規求人数が前年比で減少し、完全失業率も上昇となったことや、再就職援助計画において1万人あたりの離職者数が多いことにも表れている。ただし、2013年7~8月期には新規求人数が増加に転じるなど明るい兆しが出ている。

3.家計の動向

(1)消費の動向

(多くの地域で2012年10~12月期に増加に転じた地域別消費総合指数)

地域別の消費の動きを説明するにあたり、まずは地域別消費総合指数の推移からみていこう(第1-2-24図)。概ね全ての地域で、2012年9月を底として上昇傾向に転じている。2013年1月は豪雪や寒波のため東北、北陸を中心に販売が低下し、消費総合指数も低下した。その後は北陸で低下、中国、四国で横ばいとなっているものの、その他の地域では上昇傾向にある。

地域別消費総合指数を要因分解すると、沖縄では2012年10~12月期から大型小売店を中心に大きく増加している(第1-2-25図)。加えて、東海、南関東、東北でも2013年4~6月期には、大型小売店と一般小売店が増加に転じている。一方、中国や四国では大型小売店、一般小売店も小幅な動きとなっており、2012年4~6月期には全体で横ばいとなった。また、北陸でも、その他サービスなどの減少もあり、横ばいとなった。

(コラム)2013年の天候要因

1月には全国的な寒波と北東北を中心とした豪雪により経済活動が停滞した。降雪状況をみると、2012年度は累積降雪深が387cmと歴史的にも5番目となっており、北海道、青森、岩手、宮城、秋田、福島と北海道、東北地方で平年の降雪を上回った(図1)。

加えて、低気温は4月にも発生し、春物衣料などの売上が伸び悩む一因となった。

また、7、8月は東北・北陸を除く全国的に記録的な猛暑がある中で、東北・北陸では豪雨があった。このため、通常は暑くなると売れ行きがよくなるコンビニエンスストアなどでも来客数などに影響があった模様である(図2)。

この他、毎年数個の台風の来襲を受ける沖縄では、2013年8月には台風の直撃がなく、観光客増加の一因となっている(図3)。

(多くの地域で2012年10~12月期に増加に転じた大型小売店販売額)

次に、地域別消費総合指数の動きの要因ともなっている大型小売店販売額の推移をみてみよう(第1-2-26図)。まず、ほとんどの地域で2013年1月と4月に天候要因を背景として一時的な低下がみられることである。しかし、こうした月々の振れを別とすれば、大型小売店の販売額は、2012年10~12月期以降、多くの地域で基調的に増加していることがわかる。地域別にみると、観光客増加などで景気が回復している沖縄をはじめ、東海、九州、北海道、近畿など大都市を含む地域で増加が目立っている。

(高い増加率を記録した百貨店販売額)

大型小売店販売額のうち百貨店販売額をみると(第1-2-27図)、全国ベースでは2013年に入り前年比で増加に転じている。地域別では、生産の回復が著しい中部、12年以来大阪地区の開発が進む近畿、全般的に経済が好調な南関東などで増加している。なお、中国ではマイナスが続いているが、百貨店2店舗が閉店となった影響もあるため、必ずしも同地域の弱さを示すものとは限らない。

日本百貨店協会が公表する百貨店売上高を用いてこうした販売増加の内訳をみると(第1-2-28図)、2013年に入り、美術・宝飾・貴金属など高額品の売上が増加しており、天候などと関係なく百貨店売上高に貢献していることがわかる。この背景には、2013年に入り株高がもたらした資産効果や消費者マインド改善、円安に伴うブランド品値上げ前の駆け込みなどがあげられる。6月の全店ベースの売上高は前年同期比7.0%増を記録し、東日本大震災の反動で14.1%増となった2012年3月を除くと、消費税率引き上げで落ち込んだ反動増が寄与した1998年4月(8.3%増)以来、15年2か月ぶりの高い増加率となった。

6月は、セールの前倒しを行った影響もあり、7月はその反動が出ているが、8月は再び増加しており、6~8月平均では、前年比1.9%増と堅調に推移している。

こうした高額品販売の好調さは景気ウォッチャー調査でも確認できる。第1-2-29図では、景気ウォッチャー調査の現状判断におけるコメントから「高額」または「ブランド」の言葉が含まれるコメントの数とそのDIを抽出したものである。DIは2012年12月から全体のDIを上回りはじめ、2013年2月調査からその件数は大幅に増加した。その後、DIコメント件数ともに高水準が続いている。

(地方への新規出店が相次いだコンビニエンスストア)

コンビニエンスストアの販売額をみると(第1-2-30図第1-2-31図)、既存店ベースでは減少、全店ベースでは増加となっており、新規出店が相次いだことを示している。このうち、四国において高速道路を活用した物流拠点の整備等を背景に2013年に大手コンビニチェーンが進出するなどの動きがあった。進出にあたり、既存のコンビニエンスストアがキャンペーン等の販促活動を行ったため、四国の1~3月期の販売額は既存店でもプラスとなっている。このほか、九州南部や東北北部などでも大手コンビニエンスストアの進出が相次いでいる。

(エコカー補助金の反動減が落ち着いた乗用車販売)

乗用車販売を乗用車新規登録・届出台数からみてみよう(第1-2-32図)。2012年9月にエコカー補助金が終了して以来数か月の間、自動車販売は低調に推移した。年度末に向けて軽自動車やエコカーを中心に販売が盛り上がり、期ずれもあり2013年4月に登録台数が増加した後、一時期横ばいとなった。8~9月には新型車販売もあり増勢に転じている。

(2012年11月以降急速に回復した消費者マインド)

消費者マインドの動きを地域別にみるため、景気ウォッチャー調査家計動向部門の現状判断DIの推移を確認すると、全国的に寒さが本格化し、冬物商材が好調となった2012年12月には全地域で上昇に転じた。2013年1月には高額品や乗用車などをはじめ消費者の購買意欲の改善がみられるようになり、2013年3月にかけて大幅な上昇が生じた。2013年4月以降はこうした動きが一服したものの、高水準を維持している。

(第1-2-33図)

(2)観光

(インバウンド及び国内が好調な旅行)

訪日外国人客数をみてみよう(第1-2-34図)。2011年3月に発生した東日本大震災の影響により、訪日外国人客数は2012年2月まで減少し、2012年3月以降は反動増となっていた。こうした影響は2012年夏にはほぼ解消したと考えられるが、同年9月に発生した尖閣をめぐる状況変化により中国からの観光客数が減少に転じた。悪影響が懸念されたが、航空便の増加やビザ制度の改定などもあり東南アジアからの観光客数が増加し、中国からの減少を補って訪日観光客数は伸びている。

また、北海道、沖縄への入域観光客数をみると、両地域とも増加している。このうち沖縄への観光客数は、2012年9月以降、中国からは減少したものの、LCCの増便もあり、国内からの観光客が増加したため入域観光客数は大きく伸びている。特に2013年8、9月は台風の悪影響があまりなかったことからきわめて高い伸びとなり、歴史的にみても高い水準となっている。また、北海道への入域観光客数も約9割を占める空路がLCCの就航などもあり増加しているため、全体として好調に推移している。

(第1-2-35図)

(コラム)ローコストキャリア(LCC)の活躍

2011年に運航を開始したLCCは乗客数、便数とも順調に増加し、本文でみたとおり航空便数が観光客数の供給制約となる沖縄や北海道等の観光振興にも貢献している。

(図1)

また、沖縄県が実施したアンケート調査からは、相対的に安価なLCCはこれまであまり旅行していない層の拡大に貢献していることが窺える。このため、LCCの増便はこれまで旅行している層のシェアを奪うというよりは、旅行者のすそ野拡大に貢献していると評価できそうである。

(図2)

(3)住宅の動向

(駆込み需要もあって堅調な住宅着工)

2012年10~12月期より四半期ベースで住宅着工戸数をみると(第1-2-36図)、北海道の2013年7~8月期を除き概ね各期・各地域とも増加している。特に、東北は復興需要もあり、貸家を中心に増加率は高めであるほか、大都市を抱える南関東や近畿でも貸家の寄与が高い。こうした底堅い動きの背景には、マインドや所得・雇用環境の改善、金利や不動産関係の先高感に加え、2014年4月に実施予定の消費税増税をにらんだ駆込み需要によるところもあると考えられる。

(上昇に転じた住宅価格)

住宅価格の推移をみるため、5か月後方移動平均した前年同期比の不動産価格指数(住宅)をみてみよう(第1-2-37図)。

東日本大震災からの復旧・復興もあり、以前から上昇を続けている東北の他、北海道、関東と東日本で上昇に転じている。これに対し、近畿は横ばい圏内の動きとなっており、中国、四国、九州・沖縄と西日本ではまだ下落が続いている。

また、三大都市圏でみると、南関東圏、名古屋圏では上昇トレンドに変化しているのに対し、京阪神圏では依然下落が続いている。

(4)消費税引き上げの景況感に与える影響

(決定直後と施行決定時に多かった「消費税」に関するコメント)

景気ウォッチャー調査で「消費税」に関するコメントを集め、そのDIを算出した(第1-2-38図第1-2-39図)。これをみると、消費税増税の導入が決まった2012年6月と、消費税増税を実施するかを決定する直前の2013年9月に先行きのコメントが増加しており、この2時点で関心が高まっていることを示唆している。「消費税」に関するコメントをした人のDIは2012年冬頃から現状、先行きとも上昇し、概ね全体のDIよりも良くなっている。これは、消費税に関するコメントをした回答者は、平均的な回答者より景況感が良いと感じていることを意味している。

消費税増税に関する駆込み需要の状況を確認するため、住宅部門の景気ウォッチャーのうち「駆け込み」等に関するコメントをした回答数及びDIを集計してみよう(第1-2-40図第1-2-41図)。これをみると、コメント数は増加傾向にあり、住宅部門で「駆け込み」需要に対する関心が高まってきたことがわかる。現状判断DIでは、2013年1月から4月にかけて上昇した他、高水準を維持している。コメントの内容では、2012年末には「住宅展示場への来場者数が増加した」といったコメントが多かったが、年度末にかけて「契約が増加した」といったコメントに変化していった。現状判断DIは2013年5月から8月にかけて低下傾向にあったが、消費税増税後の完成でも増税前の適用を受けるためには9月には請負契約を締結する必要があり、9月には駆込み需要もあってDIは上昇した。

また、先行き判断DIをみると、2012年11月から2013年3月に向けてコメント数が増加し、DIも上昇していたが、7月から大きく低下している。「駆け込み」等に関するコメントの先行きDIと住宅関連全体のDIの差をみても、7月からマイナスに転じており、2013年の冬ごろには消費税増税の駆込み需要の剥落が生じると予想していることが窺える。

(家計の動向のまとめ)

家計動向を消費や住宅に関する指標からみてきたが、以下のようにまとめられる。

第1に、消費は南関東、中部、近畿といった大都市圏を擁する地域を中心に増加がみられることである。この背景には2012年末からの円安株高もあって、資産効果や消費者マインドの向上、所得・雇用環境の改善が考えられる。こうしたこともあり、2013年に入り貴金属や高級時計、絵画といった高額品販売が増加した。

第2に、大型小売をみると、2013年1月には東北や北陸などを中心に、4月には東北や九州などを中心に減少した点である。この背景として、地域別にみると、天候要因も無視できないことがあげられる。特に、2013年1月には厳冬や豪雪により北日本や日本海側を中心に大型小売が減少したほか、4月の低気温からは春物商材の商戦などに影響が出たことが先述の減少の要因となっている。

第3に、住宅建設に関しては2013年に入り消費者マインドや雇用環境の改善、金利や不動産価格の先高観に加え、消費税引上げ前の駆込み需要もあり、全国的に増加がみられたことである。ただし、景気ウォッチャー調査の先行き判断DIにみられるように、今後の動きには注意が必要である。

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