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第1節 この1年間の経済社会の動き

(底堅さもみられるようになった世界経済)

世界経済は、2012年に入るとヨーロッパでは政府債務危機の影響から景気後退の度合が強まる一方、比較的高い成長を維持していた中国等の新興国でも景気減速の動きが広まった。しかし、先進国を中心とした世界的な金融緩和と各種の政策対応から、2013年初めころからアメリカを始め一部に底堅さもみられるようになっている。

主要国・地域の実質経済成長率をみると(第1-1-1図)、アメリカでは振れを伴いながらも緩やかに回復しており、日本も2012年10~12月期以降成長率が持ち直している。ユーロ圏でも6四半期連続のマイナス成長となるなど弱い動きがみられたものの、2013年4~6月期にはプラス成長となっている。一方、中国では、一部で弱めの動きもみられていたが、再び成長ペースが速まっている。

(円安株高シフトと企業利益の回復)

2012年4月以降、欧州ソブリン・金融危機の再燃に対する懸念や米国経済指標の悪化等を背景に円高方向に振れていたが、2012年11月以降、新政権の経済政策への期待等から為替は円安方向に推移し、株高が進んだ(第1-1-2図)。安倍内閣発足後は、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略からなる「三本の矢」に一体的に取り組むとの方針の下、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」の策定(2013年1月11日)、政府と日本銀行による共同声明の発表(1月22日)、日本銀行による「量的・質的金融緩和」の導入(4月4日)などが行われた。国内におけるこうした一連の取組に加え、世界景気の底堅い推移などを背景として、円安方向への動きや株価の上昇はその後も続いた。すなわち、2012年11月中旬まで1ドル78円前後であった為替相場は2013年5月には1ドル100円前後に、9千円程度であった日経平均株価は1万5千円台まで上昇した。それ以降は、6月に一時円高株安方向に推移したものの、概ね横ばい圏内の推移となっている。

こうした動きもあって、企業の売上高経常利益率は上昇している(第1-1-3図)。

(底堅く推移している現金給与総額)

現金給与総額をみると2012年後半は減少が続いていたが、2013年に入り減少幅が縮小するなど改善に転じており、直近では底堅く推移している(第1-1-4図)。

また、夏季賞与を含む特別給与については従業員5~99人の小規模事業所でも建設業をはじめとして増加している(第1-1-5図)。

(消費を中心とした景気回復の動き)

資産効果やマインドの改善、さらには所得・雇用環境の改善などを背景に、2013年に入ってから消費が伸びている。2012年10~12月期から2013年4~6月期までの経済成長率の需要項目別寄与度をみると、民間最終消費支出が一番大きくなっていることがわかる(第1-1-6図)。

(2020年東京オリンピック開催決定)

2013年9月8日、2020年オリンピックが東京で開催されることが決定した。

景気ウォッチャー調査の7月調査ではオリンピックに関するコメントは先行き判断で3件しかなく、8月調査でもオリンピック開催地決定前ということもあり、現状判断で3件、先行き判断11件と多くはないが、決定後に実施された9月調査では現状33件、先行き判断84件と、先行き判断を中心に全国的にコメントが増加した(第1-1-7図)。また、DIは現状判断DI、先行き判断DIとも全体に比べ高く、オリンピック開催への期待がみられる。

景気ウォッチャー調査9月調査に寄せられた特徴的なコメントとしては、東京オリンピックの開催に向けた商品開発やテレビへの関心の高まりを期待するなど、景気の改善期待がみられた(第1-1-8表)。

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