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第2節 企業・雇用・家計の動向

本節では、地域経済がどのような状況にあったのかを、企業、雇用、家計の分野ごとに分析する。

1.企業の動向

(1)生産の動向

(東北、関東などで2012年春頃から減少に転じた鉱工業生産)

地域別の鉱工業生産指数の動きを説明するにあたり、震災前である2011年2月の水準を100としてその推移をみよう(第1-2-1図)。東日本大震災の影響も幾分落ち着いた2011年後半については多少の減少がみられたものの、総じて早期に回復しており、2012年前半には各地域とも4月にかけて増加した。

鉱工業生産指数の地域別・業種別ウエイト表(第1-2-2図)とともにより詳しくみると、輸送機械工業のウエイトの大きい東海や電気・電子工業のウエイトの大きい九州では、復旧・復興とともに生産を回復させ、2011年8月にはほぼ震災前の水準に到達した。

電気・電子工業のウエイトの大きい九州では電子部品・デバイスの生産減に伴い9月に生産が減少したものの、その後やはりウエイトの大きい輸送機械工業の回復により九州の生産も回復した。また、一般機械工業や電気・電子工業のウエイトの大きい近畿では9月から生産が減少し、その後は回復していない。

こうした中、11月に本格化したタイ洪水によるサプライチェーンの影響に伴い、輸送機械工業のウエイトが高い東海や関東、九州の生産が減少した。しかしながら、タイ洪水の影響が小さくなるに従い、生産は回復した。

また、エコカー補助金制度の2011年12月開始に伴い、輸送機械工業のウエイトの大きい東海、関東、九州などで生産が増加した。この他、同じ電気・電子工業でも国際競争力を有し、医薬品等化学工業の強い北陸では生産が増加しており、その他、化学工業や紙・パルプ工業、食料品工業のウエイトが高い四国では、生産は横ばいが続いていたが、やはり3、4月には増加がみられた。

しかし、ちょうどこの時期を境に、多くの地域で生産の動向が変調をきたし始めた。その背景には、エコカー補助金の終了前に自動車の生産が頭打ちとなる中で、欧州政府債務危機や中国経済の減速等に伴う世界経済の減速の影響を受けたことなどが考えられる。具体的には、東北や関東では2012年3月から、東海では2012年5月から各々生産の減少がみられる他、九州、中国、近畿、北陸でも2012年4月以降横ばい傾向となっている。

(電子部品・デバイス工業の減少等により東北、九州、関東などで生産減)

生産の動きを地域別に業種別寄与度及び主要業種別の生産指数でみると、東日本大震災で発生した生産停止からの回復により2011年7~9月期において東海をはじめ、九州、関東、東北、北海道において輸送機械工業が大きく伸びた(第1-2-3図第1-2-4図)。輸送機械工業はタイ洪水の影響を受けた10~12月期においては伸び悩んだものの、2012年1~3月期には挽回生産やエコカー補助金の開始もあり、輸送機械工業の生産は再び大きく伸びた。4~6月期には輸送機械工業の伸びは小さくなったが、この背景の1つには、輸出の減速があげられる(第1-2-5図)。

また、電子部品・デバイス工業の生産をみると、2012年1~3月期には九州や北陸、東北で増加したものの、北陸を除き4~6月期にはマイナスに転じていることがわかる。その背景としては、半導体等電子部品の輸出が減少に転じたことから生産も減少したこと等が考えられる。

この他、化学工業については医薬品などが増加、四国や北陸、東北、関東などでプラスに寄与していることがわかる。

(地域間産業連関表を使用した輸送機械生産増の波及効果)

ここでは、輸送機械生産が増加した場合に地域及び産業を超えた生産押し上げ効果について、地域間産業連関表を用いて計算してみることとする。

まず、地域毎に2010年7月~2011年6月までの輸送機械の生産指数の平均値と、2011年7月~2012年6月までの輸送機械の生産指数の平均値を算出し、この差分をとる(第1-2-6(1)表、全国では15.7%増)。次に、算出された各地域の輸送機械生産指数の差分に2005年地域間産業連関表上の業種別、地域別生産額を積算することで各地域及び輸送機械内各産業及び各地域の生産増加額を推定する(第1-2-6(2)表)。最後に、各地域・各産業生産増額をもとに、地域間産業連関表(53業種)を利用して、生産誘発額を計算した(第1-2-6(3)表)。生産誘発額の生産増額に対する割合(全国輸送機械では生産増額の1.7倍の生産額が誘発)、生産誘発額の地域別、産業別生産額に対する割合(全国では2.4%の押し上げ効果)、各地域・各産業の生産額との比率から得られる生産押し上げ効果及び各産業の全国生産額合計値との比率から各産業の地域別寄与度を計算した(第1-2-6(4)(5)(6)表及び第1-2-7(1)(2)図)。

この結果をみると、以下3点を確認できる。

第1に、乗用車本体よりも自動車部品の生産誘発効果が大きいことである。輸送機械の産業内をみると、輸送機械生産が26.9%増となる中、乗用車本体の生産は16.3%増にとどまっているのに対し、自動車部品生産は36.7%増と、自動車部品生産の押し上げ効果が大きい。生産増額と生産誘発額の比率をみるとさらに明確で、乗用車は生産増額と比べ生産誘発額が若干少ないのに対して、自動車部品は約2.3倍になっていることがわかる。

第2に、生産誘発効果は広い産業及び地域にわたっていることである。産業別にみると、全産業の押し上げ効果である2.4%を超える増加率となっている産業は鉱業、合成樹脂、プラスチック製品、鉄鋼、非鉄金属の6業種に及んでいる。また、地域別の動きをみると、輸送機械のウエイトが高い中部へは上記6産業すべての生産押し上げ効果が全国を上回るなど高い波及効果がみられる他、沖縄を除く全地域で鉄鋼の増加に加え、東北では産業用電気機器、関東では非鉄金属や合成樹脂、九州ではプラスチック製品の伸びが各々みられるなど、広い地域での波及効果を確認できる。

第3に、特に自動車部品の生産押し上げ効果は一部の地域経済にとって大きいことである。たとえば東北の自動車部品産業の生産押し上げ額は約4700億円と関東や中部よりはるかに小さいが、元来の生産額は約7千億円と、関東や中部などに比べて小さいため、生産押し上げ効果は大きくなる。同様の事象は北海道や九州などでもみられ、エコカー補助金が案外被災地である東北をはじめ、北海道や九州に対して経済効果を生んでいる可能性があることを示唆している。

(持ち直しから弱い動きに変化した企業マインド)

2011年下半期から景気ウォッチャー調査の企業動向をみると(第1-2-8図)、2011年12月にはそれまで低下していた製造業の先行き判断DIが上昇に転じ、エコカー補助金の実施等を背景に景気上向きを予感していたことがわかる。現状判断DIも生産回復などを受け2012年1月を底に上昇に転じ、3月まで上昇した。4月には現状判断DIは低下したものの、先行き判断DIは上昇し、まだ景気の先行きに明るさをもっていたものと考えられる。5月以降は先行き判断DI、現状判断DIともに低下し、9月まで5か月連続で低下するのみならず、低下幅も毎月2ポイント程度と小さくないことから持ち直しから弱い動きに変化している。この背景としては、世界経済の減速に伴う輸出や生産の減少、エコカー補助金の終了、9月には尖閣をめぐる状況の影響等があげられる。

このうち、尖閣諸島をめぐる状況について、景気ウォッチャー調査のうち企業動向関連のコメント数及びDIを用いて、尖閣諸島が国有化された2012年9月と、中国漁船衝突事件が発生した2010年9月と比較してみよう(第1-2-9図)。まず、「中国」または「尖閣」に関するコメントの合計数をみると1別ウィンドウで開きます、2010年9月には先行きコメント数は24件であったが、翌10月には7件、11月には5件と減少しているのに対し、2012年9月には69件と前回の3倍弱に上っている。また、DIも2010年9月には現状判断DIについては全体とコメント分に大きなかい離がみられなかったのに対して、2012年9月には現状判断DI、先行き判断DIともに全体の判断DIに比べ大きく低下している。加えて、2010年では事件発生から2か月が経過した11月に入っても現状判断DIが回復していないなど、問題が長期化していることがうかがえる。こうしたことから、2010年に比較しても企業動向にかかわる人々にとって尖閣諸島をめぐる状況が景気に与える懸念が高まっていると推測される。次に、2012年9月景気ウォッチャー調査企業動向関連における「中国」または「尖閣」に関する主なコメントをみると(第1-2-10表)、現状、先行きともに輸出や生産など幅広い影響が懸念されていることがわかる。

なお、特例公債法案成立の遅れに関するコメントを景気ウォッチャー調査(2012年8月及び9月)からみると(第1-2-11表)、各々先行きに関し2件となっており、その内容は国などからの事業受注減を懸念するものとなっている。

(2)設備投資、企業倒産等の動向

(法人企業統計による設備投資額)

設備投資の内訳をみるために、まずは財務省「法人企業統計」により2011年度の全国の設備投資額をみてみよう(第1-2-12図)。同統計によると、2011年度の設備投資額は約35兆円となっているが、このうち製造業の設備投資額は約3割にあたる11兆円弱となっている。また、非製造業2別ウィンドウで開きますにおいてはサービス業、情報通信業、卸売業・小売業、運輸・郵便業、不動産業の順位なっており、この5業種で半分近くを占めている。

(石油関連や不動産投資を背景として、堅調な設備投資)

地域別の設備投資動向を詳細に調査している日本政策投資銀行「設備投資計画調査」(2012年7月調査)でみると、12年度(計画)は、火力発電所の増設や建設機械の能力増強投資が行われる北関東と、輸送用機械工業、鉄鋼業、電気機械工業等の増強投資などが行われる東海、大型ターミナル開発投資がピークを迎える運輸、不動産、建設などで増加が見込まれる近畿において大幅な増加が見込まれる(第1-2-13図)。

また、総設備投資額に占める震災復旧・復興投資の割合をみると、11年度実績では全産業で7.4%であったのが、12年度計画では2.5%と落ち着いたことがわかる。業種別にみると、製造業が3.4%、非製造業1.9%と、製造業の方が相対的に高い(第1-2-14図)。

(東海、近畿、東北で伸びた製造業の立地件数)

製造業による地域別設備投資の動向について、地域ブロック別立地件数及び立地面積をみてみよう(第1-2-15図第1-2-16図)。2011年には東海及び近畿で立地件数が大きく伸びており、近畿では立地面積も増加、東海では立地面積も横ばいであることから、近畿では2010年より大規模な立地が増加し、東海では1件あたりの立地面積が縮小したことがわかる。一方、東北では立地件数が増加したが、立地面積は縮小しており、小規模立地が増加したことがうかがえる。この他、北関東の立地件数は多いものの2010年度より減少しており、届出面積の減少率がより大きいことから小規模化したことがわかる。

(九州で盛んである大規模小売店立地)

次に、卸売業・小売業の設備投資に対応する地域別に大規模小売店立地をみると(第1-2-17図)、九州で大幅に伸びていることがわかる。これには、2011年3月に開通した九州新幹線の効果なども考えられる。この一方、大都市を抱える南関東や近畿では減少している。

なお、廃止の届出数は、実質的な閉店と一致するとは限らない3別ウィンドウで開きますため注意してみなければならないものの、その件数を集計すると第1-2-18図のとおりである。

届出と廃止の関係は第1-2-19図のとおりで、新規出店の多い地域ほど廃止届出数も多いことがわかる。

(都市部で伸びる不動産業用建物着工件数)

最後に、不動産業の設備投資に関連して、不動産用の建物着工件数を地域別にみると(第1-2-20図)、南関東や東海で伸びている。

(続いている東日本大震災関連倒産)

東日本大震災関連倒産4別ウィンドウで開きますについては、震災発生から2012年1月12日までの累計の倒産件数が全国で550件あり、最も件数が多いのは南関東の175件、次に東北104件となっている(第1-2-21図)。また、2012年1月13日から9月7日までの倒産件数は、全国で370件あり、もっとも件数が多いのは南関東の173件、次に東北の53件となっている(なお、被災3県の倒産件数は第2章参照)。

このように、東日本大震災関連の倒産は震災後1年を経過してもなお続いており、依然として予断を許さない状況にある。

(減少している地域別業種別倒産件数)

倒産件数を地域別業種別にみると(第1-2-22図)、東北、関東、近畿、四国においては2011年度は前年度と比べ減少した。しかし、2012年4月以降、このうち南関東、四国で倒産件数が増加している。これに寄与しているのは、卸売業・小売業の倒産の増加である。東日本大震災で甚大な被害を受けた東北では、復旧・復興需要もあり建設業の倒産が減少し、全体では前年度より倒産が減少している。北関東も建設業の倒産が減少するなど、東北の復旧・復興需要を取り込んでいることがうかがえる。

(総じて堅調に推移する公共工事請負金額)

地域別の公共工事請負金額は、2011年度は東日本大震災からの復旧・復興に資する予算の執行が増加したことから東北において増加した(第1-2-23図)。他地域では関東において、下水道整備や区画整理、マンション建設等のため増加したものの、関東以外ではリーマンショック後の景気低迷への対応から膨らんでいた支出を縮減したため減少した。

しかし、2012年度4~9月累計をみると、公共工事は総じて堅調に推移している。地域別にみると、震災からの復旧・復興が進む東北では大幅な増加が続いた他2012年4~6月期は全地域で2012年7~9月期は南関東、中国を除く各地で2011年度の減少の反動として増加した。

(企業の動向のまとめ)

これまでみてきた企業の動向についてまとめると以下のとおり。

第1に、2012年春以前に、輸送用機械工業(自動車)が牽引して生産が回復したが、その後エコカー補助金の剥落や海外経済の減速を背景に減少に転じたことである。地域別には東海や部品を供給する東北における生産回復が目立っていた他、工場のある関東、中国、九州などでも生産を下支えした。他方、自動車産業の割合が比較的低い近畿や四国などでは生産が伸び悩んだ。自動車生産増加の背景には2011年12月に始まったエコカー補助金制度がある。生産は2012年1~3月期が最盛期で、その後輸出の減少も相まって生産は減少に転じている。

第2に、地域経済も世界経済の影響を強く受けていることである。リーマンショック前まで製造業の1つの柱であった電子部品については世界経済の減速もあり、2012年4~6月期には東北や九州をはじめ各地で減少がみられるなど、影響を受けやすい産業や地域で生産も大きな減少となっている。ただし、一般機械工業(建設機械)や化学工業(医薬品)、競争力のある電子部品を生産する北陸では、これまでのところ生産が底堅く推移している他、化学工業(医薬品)などを主に生産する四国においては、5月以降の落ち込みが限定的である。

第3に、非製造業は比較的底堅いが、なかでも卸売業・小売業といった非製造業の投資が目立つことである。九州などでは、卸売業・小売業の立地が景気の下支えに貢献している。また、近畿や南関東といった大都市でも立地が多く、投資の下支えとなっていることが考えられる。

2.雇用の動向

(東北、東海で改善し、四国で伸び悩んだ有効求人倍率)

雇用情勢については、2011年後半以降、総じてみれば改善の動きが続いてきた。

2011年8月以降の求人倍率の動きをみると(第1-2-24図)、改善の動きが遅れた沖縄を除き、全地域で改善していることがわかる。この動きを地域別にみると、東海では2011年8月から続く改善の動きが、輸送用機械生産増加などに伴い2012年1月から5月にかけて大きくなっている。また、東日本大震災の影響が比較的軽微であった北陸では2011年8月には有効求人倍率は0.9を超え、他地域に比べ高い状態からの改善となった。北陸は2012年2月、東海は2012年4月にそれぞれ有効求人倍率が1を超え、求人が求職より多い状態になった。この他、東日本大震災で被災した東北でも、復旧・復興が進むにつれて求人数が増加、2011年8月から2012年5月にかけて有効求人倍率は上昇した。関東では2011年8月から2012年5月にかけて改善したものの、北関東と南関東において少し動きが異なっている。北関東では2011年8月から2012年5月まで改善幅が大きく、2012年5月以降横ばいとなっているのに対し、南関東では2011年8月から2012年8月まで継続的に改善している。

他方、四国の有効求人倍率は上昇せず、2011年8月には東北や関東、東海、中国より良かったものの、2012年8月には伸び悩んでいる。また、中国は2011年8月から2012年1月にかけて緩やかに改善したものの、2012年2月以降は伸び率が低下している。この他、北海道、近畿、九州、沖縄では2011年8月から2012年8月にかけて緩やかな改善が続いている。こうした中、2012年5月まで改善していた東海、東北では2012年6月以降、有効求人倍率が低下に転じている。

(東北、北関東、東海でも低下に転じた新規求人倍率)

有効求人倍率に先行して動く傾向のある新規求人倍率をみると、東海では2011年8月から2012年5月まで改善しているが、輸送機械工業の生産回復などにより特に2012年1月から5月にかけて急速に改善していることがわかる。また、北陸では2011年8月以降2012年4月まで緩やかな改善傾向となっている。東日本大震災震災からの復旧・復興需要を背景に東北では2011年8月から2012年5月にかけて改善している。他方、中国では伸びが緩やかになっており、四国では有効求人倍率同様、ほとんど改善がみられない。

しかしながら、2012年5月以降、東海、東北、北関東では低下、南関東、北陸、近畿、九州では横ばいとなっており、今後の新規求人倍率の推移に注意が必要である(第1-2-25図)。

(卸売業・小売業や医療・福祉、サービス業で求人数が伸びた地域別就業構造)

地域毎の有効求人倍率や新規求人倍率の動きの背景を考えるため、就業構造の違いに着目しよう(第1-2-26図及び第1-2-27図)。それによれば、2012年4~6月期までの製造業の伸びが東海や北陸の新規求人増の要因となっていたのに対し、増加の続く卸売業・小売業の新規求人数が九州、中国、四国などの新規求人倍率を下支えしていることがわかる。また、宿泊業・飲食サービス業などの動きが沖縄の新規求人倍率を改善させていると考えられる。

もっとも、2012年7~9月期には製造業の新規求人倍率が減少に転じた他、建設業の新規求人数も増加幅が縮小しており注意が必要である。

(東海、北陸では製造業が下支え、九州では卸売業・小売業が中心の新規求人倍率増分)

新規求人倍率がどのような業種により増加しているかを地域別にみるため、新規求人倍率の対前年同期差を業種別の求人数と求職者数(全体)に寄与度分解してみよう。

まず、比較のために全国の新規求人倍率の対前年同期差をみると(第1-2-28図)、東日本大震災から間がない2011年5月から12月にかけて、建設業や製造業が落ち着いた伸びを示しているのに対して卸売業・小売業、医療・福祉、サービス業といった業種で伸びが顕著である。また、2012年1月以降は、卸売業・小売業、医療・福祉の増加幅が大きくなっているのに対し、製造業は2012年7・8月には減少に転じている。

以上を念頭に、各地域における新規求人倍率の変化の寄与度分解をみてみよう(第1-2-29図)。

求人が増加している業種についてみると、卸売業・小売業は東北、北関東、北陸、近畿、中国、九州で伸びている。特に九州では2012年に入り卸売業・小売業の伸びが目立つが、これは後述するように大型小売店出店の多さも一因となっている。また、サービス業は東北、中国で増加していることがわかる。このうち東北におけるサービス業の増加は廃棄物処理業や労働者派遣業等によるものである。医療・福祉については、南関東、東海、中国で増加している。

次に、地域としての動きをみると、東日本大震災で甚大な被害を受けた東北では、特に2011年6月から2012年3月にかけて復旧・復興とともにサービス業や建設業の求人が増加している他、卸売業・小売業といった生活に直結する業種でも増加している。

東海では、2011年5月から2012年5月にかけて生産の回復を受け製造業の求人が伸びている。他方、北陸では製造業の伸びの低下を卸売業・小売業の増加で埋め合わせている形となっており、両者とも新規求人倍率が高い中で、業種別の求人パターンが異なることがわかる。

北海道については、後述するように、入域旅行者数の回復を受け、2011年12月から2012年5月にかけて宿泊業・飲食サービス業の求人が増加している。

四国では、自動車産業が立地していないという条件の下で景気をけん引する産業がなく、製造業の求人も2011年9月から増加幅が減少し、2012年1月には減少に転じた。こうした中、卸売業・小売業や医療・福祉といった全国的に堅調な業種の増加幅も目立った拡大がみられず、全体的な求人増加が停滞していることがわかる。この背景としては、高齢化が進行している四国では、大規模小売店出店数が相対的に少ないことなどが考えられる。

沖縄では、求職者数は2011年8月まで増加していたが、その後は増加幅が縮小に転じていることが新規求人倍率改善の最大の要因となっていることがわかる。

(近畿、九州・沖縄などで厳しい状況が続く完全失業率)

完全失業率の推移をみると(第1-2-30図)、北海道で2012年1~3月期以降上昇傾向がみられるものの、震災からの復旧・復興需要もあって、東北では2012年1~3月期以降、北関東では2011年10~12月期以降、それぞれ低下している。また、東海、北陸、中国・四国の失業率は生産の持ち直し等の影響もあって、横ばい圏内の推移となっている。こうした中、近畿や九州・沖縄では失業率も5%台近くにおいて推移するなど、厳しい状況が続いていることがわかる。

(北海道、九州・沖縄などで減少し、東北、四国などで増加した現金給与総額)

現金給与総額の前年比の動きを地域別にみると(第1-2-31図)、プラス、マイナスが混在しており、差が大きい。

はじめに全産業をみると、2011年7~9月期には北海道、関東、北陸、近畿、九州・沖縄の5地域で減少した一方、中国、四国では大きく増加、東海、東北でも増加した。2011年10~12月期には東海、北陸で伸び悩んだものの、関東、近畿が増加に転じた他、北海道、九州、沖縄では減少率が小さくなり、東北、中国では伸び率が大きくなっている。2012年1~3月には関東、中国で減少に転じたものの、北海道、東北、四国では増加を続け、東海、北陸、近畿、九州・沖縄では引き続き減少を続けた。2012年4~6月期には北海道、関東、近畿、中国、九州、沖縄で減少しているものの、東北、東海、北陸、四国で増加した。

また、同じく現金給与総額の前年比を製造業についてみると、関東、東海、北陸、近畿で2011年7~9月期から2012年4~6月期まで4四半期連続で増加しており、生産の回復とともに給与も増加していることがうかがえる。これらの地域では、全産業ではほぼ横ばいとなっている。また、中国及び四国では2011年7~9月期及び10~12月期に大きく増加した後、2012年1~3月期に減少に転じ、九州・沖縄では減少幅が低下している。

最後に、同様の動きを非製造業についてみると、関東、近畿、九州・沖縄で4四半期連続で低下しているものの、東北、四国では4四半期連続で増加しており、特に四国では増加率も大きくなっている。同様に、北陸では2012年4~6月期に増加に転じ、中国では2012年に入り増加から減少に転じている。

(雇用の動向のまとめ)

これまで、2011年後半以降の地域別雇用情勢について、業種による動きの違いをベースに説明を試みた。まとめると以下のとおりである。

第1に、今回の雇用の改善は、第三次産業が主導しており、その影響が地域別の雇用の動きに反映されている。具体的には、卸売業・小売業や医療・福祉、サービス業、宿泊業・飲食サービス業などが全国的には好調であり、これらの業種における求人が東北、中国、九州などでは有効求人倍率の改善に大きく寄与した。一方、四国など当該業種の改善が遅い地域では有効求人倍率、新規求人倍率も改善が遅かった。こうした中、2012年7~8月にはこれらの産業でも求人数増加の勢いが低下している。

第2に、製造業及び建設業に大幅な求人増加がみられたが、一時的な動きに留まり、これらの業種に牽引された雇用の改善は長続きしなかったことである。建設業における求人数増加率は2012年4~6月期にはそれまでに比べ小さくなり、製造業における求人数は2012年7~8月には前年より減少に転じた。こうした変化を受け、新規求人倍率も2012年5月以降は製造業中心の地域である東海や北陸、北関東では低下した。

求人数増加の勢いが失われつつある中で、完全失業率も北海道や東北、近畿、九州・沖縄など厳しい状況が続いており、今後の推移を注視していく必要がある。

3.家計の動向

(1)消費の動向

(東海、北陸などで減少した大型小売店販売額)

地域別の消費の動きを説明するにあたり、まずは大型小売店販売額の推移からみていこう。

地域別の大型小売店販売額の推移を四半期ベースの前期比でみると(第1-2-32図)、2011年10~12月期、2012年1~3月期は地域によるばらつきがあるものの、総じてやや弱めの動きにとどまったのに対し、2012年4~6月期は大きく減少した地域が目立った。仔細にみると、2012年1~3月期には北日本を中心に豪雪に見舞われ、全国的にも寒かったこともあり、北海道、東北、関東、近畿、九州で減少している一方、2012年4~6月期には4月の低気温や6月の長雨、台風もあり、東海、北陸、近畿で大幅な減少、近畿、中国でもある程度の減少が生じていることがわかる。

次に、震災前の2010年3月から2011年2月までの平均値を100とした大型小売店販売額(全店ベース)の推移を2011年後半からみてみよう(第1-2-33図)。復旧・復興需要の影響が強い東北で恒常的に強い動きとなっているが、2011年11月から2012年3月にかけては、2012年1~3月の豪雪及び全国的な低温により、北海道、東北、関東で減少している。この他、4月には寒さが残り、5月にはいったん回復したものの6月には長雨、台風接近があったため、4月、6月には総じて減少した。このため、北海道、東北、関東では5月にかけて増加した後6月に減少に転じ、近畿、九州、沖縄では4月に減少、5月に増加した後6月に減少した。

(関東、四国を中心に減少に転じたコンビニエンスストア販売額)

次に、比較のため地域別コンビニエンスストア販売額の前年比をみると(第1-2-34図)、2011年10~12月期には2010年10月のたばこ税増税直後の販売減が影響しており、全国的に高い伸びを示しているが、2012年1~3月には震災の反動増である東北を除き、各地域で安定的に増加した。2012年4~6月期には復興需要の強い東北や生産の増加した東海では引き続き増加したものの、四国では減少に転じるなどの変化が表れた。2012年7~8月は猛暑でアイスクリームや飲料などの売上増加はあったものの、サービス売上高や非食品での売上が伸び悩んだことなどから2011年7~8月対比で減少となった。

(エコカー補助金の効果剥落で減少した乗用車販売)

乗用車の販売の動きを乗用車新規登録・届出台数でみると(第1-2-35図)、エコカー補助金制度5別ウィンドウで開きますが始まった2012年1月には全ての地域で大幅な増加がみられた。ただし、エコカー補助金制度の終了が近づいた2012年6月から8月になっても駆け込み需要はみられず、2010年9月の終了時とは異なる動きを示した。こうした動きは、概ね各地域で共通であるが、やや仔細にみると、地域差も指摘できる。すなわち、東日本大震災で被災した東北では、エコカー補助金導入前から乗用車の販売が好調を続けた他、補助金終了が近づいても底堅さが残っている。また、北陸や西日本の各地域では、補助金導入後も夏場へ向けて増加傾向がみられた。なお、各地域で2012年4月には登録台数の減少がみられるが、これは自動車販売会社にて年度末の販売促進活動を行った反動減であることや、エコカー減税の対象車種が減少したこと6別ウィンドウで開きますなどが原因として考えられる。

(円高、節電等の影響を受けた家計関連業種の事業者のマインド)

景気ウォッチャー調査の家計動向の現状判断DIをみると(第1-2-36図)、2011年4月から7月までは、東日本大震災によるマイナスのマインドが和らぎ、概ね上昇した。2011年8月から10月にかけては欧州政府債務危機及び円高の本格化によりマインドは低下した。このマインド低下はその後の生産の回復などから概ね2011年11月を底に横ばいから回復に向かい、2012年3月に各地域ともDIが50前後になった。しかしながら、北陸、近畿、沖縄では2012年4月、その他地域では2012年3月にピークを迎えた後、円高や節電等、9月は尖閣諸島をめぐる状況の影響を背景に低下基調が続いている。

次に、2012年上半期において経済下押し圧力として懸念された電力不足と円高に関する景気ウォッチャー調査のコメントを集計してみよう(第1-2-37図第1-2-38図)。

まず、電力不足について、先行き判断における「電力不足」または「節電」に関するコメント数は2012年2月調査では全体で8であったものの、5月調査では122と約15倍にまで達し、電力不足や節電が先行きの景気に影響を与える要因とするコメントが増加している。また、「電力不足」または「節電」に関するコメントのみを対象にして作成したDIの推移をみると、5月調査では前月比で5.3ポイント低下の41.2と低位にあり、電力不足や節電が景気の下振れ要因と捉えられていたことがわかる。こうした傾向は実際に夏場を迎え大規模停電などが発生しなかったことにより減少し、8月にはコメント数も13まで低下した。「電力不足」または「節電」に関するコメントのみを対象にして作成したDIも44.2と全体の43.6より大きく、この点に関しては先行き懸念が弱まったといえよう。

同様に、円高について、先行き判断における「円高」または「為替」に関するコメント数は2012年2月から5月まで一貫して50を超え、円高が先行きの景気に影響を与える要因として捉えられていた。また、「円高」または「為替」に関するコメントのみを対象にして作成したDIの推移をみると、4月以降は全体のDIより低位にあり、円高や為替が景気の下振れ要因と捉えられていたことがわかる。

(増加に転じた一般世帯国内旅行)

旅行関連の動向をみると、消費動向調査の地域別一般世帯国内旅行増減率では2012年4~6月期には東日本大震災に伴う減少の反動とはいえ増加に転じている(第1-2-39図)。他方、2012年7~9月期には北海道、東北、関東、近畿、九州・沖縄で減少に転じ、総平均でも微増となっている。

沖縄への入域観光客数(国内客)や北海道への来道者数は、2011年3月には前年比で大幅に落ち込んだものの、秋にかけて回復し、2011年10月には対前年同期比でゼロとなった。その後は前年比ほぼゼロの推移が続き、2012年3月以降はこれまでの減少の反動増となっている(第1-2-40図)。比較のため2012年に入ってから2010年の前々年同月比をとると、概ね横ばいとなっている。2012年8月には北海道への訪問客数は、航空機の座席数増による潜在需要の顕在化等により増加した一方、沖縄への訪問客数は2個の台風が接近したこともあり減少した。

9月には沖縄に2個の台風が接近した他、尖閣諸島をめぐる状況の影響もあり前月に比べ、北海道では増加率の低下、沖縄では減少率の上昇がみられた。

訪日外国人総数をみると(第1-2-41図)、2010年には増加していた訪日外国人総数も、2011年3月に前年比で大幅なマイナスに転じた。2011年9月以降には減少幅は縮小しているものの、この傾向は続き、2012年3月以降も前々年比では同年6月を除き減少が続いている。こうした中発生した尖閣諸島をめぐる状況の影響により中国からの訪問客がキャンセルしたことなどから2012年9月の訪日外国人総数は前々年比8.0%減と8月までより減少率が上昇した。

(尖閣諸島をめぐる状況に関する景気ウォッチャー調査)

2012年9月には尖閣諸島国有化をきっかけとして中国で大規模デモが発生し、日中関係は悪化した。このマインド変化を景気ウォッチャー調査を使用し2010年9月に発生した中国漁船衝突事件と比較してみよう(第1-2-42図)。

まず、「中国」または「尖閣」に関するコメントの合計数をみると7別ウィンドウで開きます、2010年9月には現状コメント数が14件、先行きコメント数が79件となっているのに対し、2012年9月に実施された景気ウォッチャー調査では「中国」または「尖閣」に関するコメントが現状59件、先行き187件と大幅に多くなっており、尖閣諸島をめぐる状況が景気に与える懸念が高まっていることがうかがえる。

次に、「中国」または「尖閣」に関するコメントのみを対象にした判断DIを全体の判断DIと比較すると、2010年9月には全体の現状及び先行き判断DIより「中国」または「尖閣」に関するコメントのみを対象とした現状判断DIは高かった。しかし、2012年9月に関しては「中国」または「尖閣」に関するコメントのみを対象としたDIは、現状判断、先行き判断ともに全体より低く、景気の現状及び先行きに懸念を有している。また、2010年には事件発生から2か月が経過した2010年11月には先行き判断DIが上昇し、事態の終息を感じていることがうかがえるが、今回は依然予断を許さない状況にある。

さらに、2010年9月調査と2012年9月調査におけるコメント件数を地域別にみると、2010年9月調査の先行き判断では南関東、近畿で多かったのに対し、012年9月調査の現状判断コメント数は東海、近畿で多く、2012年9月調査の先行き判断では東海、南関東、近畿で多い。コメント数が多い地域が製造業生産の盛んな地域であることからも、尖閣を巡る状況が輸出や生産などを通じ事業者マインドに影響を与えていることが窺える。

主なコメントをみると(第1-2-43表)、2010年9月~11月調査に関しては中国からの輸入や観光、中国への対外直接投資などに影響がみられる。ただし、11月調査には中国からの観光の回復といったコメントもみられており、DIとあわせ影響は長期化しなかったことがうかがえる。これに対し、2012年9月調査では、前述した輸出や生産、投資といった企業活動への影響の他、中国からの観光や中国への渡航キャンセルに関するコメントがみられる。

(近畿、北陸・甲信越、北海道・東北、関東等でみられる地域別消費者態度指数の低下)

最後に、需要側のマインドを確認するため、地域別の消費者態度指数をみてみよう(第1-2-44図)。総じて、東日本大震災後の2011年6月が底となっており、2012年3月にむけて増加し、その後低下している。仔細にみると、関東、北海道・東北では全国の動きに類似している一方、北陸・甲信越では2011年12月にかけて回復が早く、2012年6月以降は低下となっている。また、東海、中国・四国では生産の回復とともに2011年12月に増加し、その後横ばいが続いており、近畿は2012年9月以降の増加はみられるものの、生産同様その回復ペースは遅く、他地域に比較して低水準のまま2012年3月を頂点に低下に転じている。

(2)住宅の動向

(東北を中心に底堅く推移する住宅建設)

新設住宅着工戸数の前年比をみると(第1-2-45図)、2011年には、北海道、南関東、北陸、中国、九州、沖縄でプラスとなり、東日本大震災の影響により供給制約が残るものの、住宅建設は持ち直すことになった。その内訳をみると、北海道を除く地域では分譲マンション及び分譲戸建が寄与している。

また、2012年上半期に関しては、震災直後の落ち込みの反動やペントアップデマンド8別ウィンドウで開きますの発現、復旧・復興へ向けた動きなどを背景に東北での住宅着工が大幅に増加した。この他、関東、近畿、中国、九州において増加しており、このうち近畿、中国では大きく伸びている。その他の地域では減少がみられるが、2011年の夏場に一部政策の終了に伴う駆け込みなどから大幅に伸びた反動も考えられ、総じてみると底堅いとの評価が可能である。

こうした最近の住宅着工戸数の推移の背景には、所得、雇用環境の底堅い動きが指摘できるほか、フラット35S9別ウィンドウで開きますや住宅エコポイント10別ウィンドウで開きますといった各種住宅支援策の効果も考えられる。また、特に東北については、震災直後の落ち込みの反動やペントアップデマンドの発現、復旧・復興へ向けた動きなどが影響したとみられる。ただし、被災3県を中心とした東北や、これに隣接する関東を中心に、建設労働者数に不足感があるなど供給面の制約が依然続いていることに注意が必要である。

(中部、近畿、四国を除き減少に転じた不動産価格指数)

2012年に新たに国土交通省から公表された不動産価格指数(住宅)を利用して不動産取引価格の推移を確認しよう(第1-2-46図)。なお、不動産価格指数は単月での上下が激しいため、5期後方移動平均をとった上で対前年比上昇をみることでその推移を確認する。その指標によると、全国では2010年央に不動産価格指数は上昇に転じ、約1年緩やかに上昇した後、2011年7月に減少に転じ、その後緩やかに下落を続けていることがわかる。全国にもっとも近い動きをしているのが関東で、2010年央以降緩やかに増加していた不動産価格指数が2011年後半以降緩やかに下落している。また、中国、近畿では2010年央以降不動産価格指数が上昇したが、2011年初以降下落に転じている。四国では2012年初以降上昇している。この他、東北ではそれまで下落していた不動産価格指数が2011年央に上昇に転じており、復旧・復興の進展がうかがえる。中部ではそれまでの緩やかな下落から2011年央以降横ばい水準となっていることがわかる。

三大都市圏についてみると、南関東が2010年に緩やかな上昇を示した後2012年に入り緩やかな下落に転じているのに対し、名古屋圏は2010年末以降緩やかな上昇に転じていることがわかる。また、京阪神圏は2011年央以降下落しているが、これは2010年の増加の反動減であることが考えられる。

次に、三大都市圏について、住宅全体、(第1-2-46図と同じ)、及びマンション、更地・建物付土地それぞれの指数を5か月後方移動平均の対前年上昇率によりみてみよう(第1-2-47図)。

南関東では更地・建物付土地価格は2011年上半期まで上昇した後、2011年下半期に横ばいとなり、2012年に入り下落に転じた。2か月上昇を続けたマンション価格は最近では下落に転じている。

他方、名古屋圏では更地・建物付土地価格が2010年末には上昇に転じ、その後、緩やかな上昇傾向が続いている一方、マンション価格は、一貫して上昇しているものの、2010年春以降そのテンポが次第に鈍化してきている。

最後に、京阪神圏ではマンション価格は上昇を続けているのに対し、更地・建物付土地価格は2011年から2012年初にかけて下落していることがわかる。

(家計の動向のまとめ)

家計動向を消費や住宅に関する指標からみてきたが、以下のようにまとめられる。

第1に、消費については、雇用環境や消費者マインドの動向を踏まえると、少なくとも春頃までは基調的な底堅さは維持されてきたとみられるが、地域ごとにみると、天候要因の影響も無視できない。特に、大型小売店販売額は、豪雪や全国的な低気温により、2012年1~3月期には北海道、東北、関東などで減少し、4~6月には4月の低気温や、6月の長雨、台風などもあって東海、北陸などで減少している。一方、自動車販売はエコカー補助金が復活した2012年1~3月を中心に北陸、中国、九州をはじめ好調だったものの、駆け込み需要はみられず、終了後には北海道や関東をはじめ全国的に低下した。

第2に、エコカー補助金などにより2011年後半から上昇した家計関連事業者のマインドは、節電、円高などを背景に2012年春以降は関東、中国、四国などで低調に推移した。夏頃からは、世界経済の減速やエコカー補助金の終了、尖閣諸島をめぐる状況の影響などを背景に関東、東海などをはじめ低下が続いている。観光については、震災による一時的なマインド低下から回復し、前々年比で北海道来道者数などはプラスになることもあったものの、2012年9月発生した尖閣諸島をめぐる一連の状況により中国からの訪日がキャンセルされるなどの問題が発生している。

第3に、住宅着工は東北を中心に関東、近畿、中国、九州において増加しており、総じて底堅く推移している中、不動産価格は下落に転じていることである。この背景には所得・雇用環境の底堅い動きの他、住宅エコポイントやフラット35Sなどの住宅支援策の効果も考えられる。また、東北においては震災直後の落ち込みの反動やペントアップデマンドの発現、復旧・復興へ向けた動きも影響しているとみられるが、労働者不足など供給面の制約には注意が必要である。

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