[目次]  [戻る]  [次へ]

3.人口の自然増の実態

(首都圏における出生数・死亡数の推移)

首都圏人口が一貫して自然増を続けていること、しかしその増加ペースが減少傾向にあることは、既に述べた。その人口の自然増減について、出生数と死亡数の推移に分けて見てみる。

首都圏における出生率は第4-1-8図で見るように、70年以降低下し続け、出生数も70年には年間51.7万人に達していたが、その後減少して90年以降は30万人程度で推移し、2010年には29.7万人となっている。

第4-1-8図 首都圏の出生数・死亡数等の推移
第4-1-8図 首都圏の出生数・死亡数等の推移
(備考)
総務省「国勢調査」及び厚生労働省「人口動態統計」より作成。

出生数は、再生産年齢女性人口と合計特殊出生率に左右される。我が国の場合は婚外子が少ないため、女性の結婚率が重要な意味を持つ113。15~49歳女性人口は、例えば東京都では70年には347万人であったが、90年に319万人、2010年には314万人と減少している。また、首都圏では未婚率が全国を上回る勢いで上昇しており、2010年には若干低下したものの、20歳代後半の女性の62%が、また30歳代前半の36%が未婚であり、特に東京の特別区ではそれぞれ64%、41%と未婚率が高い(第4-1-9図)。さらに、女性の平均初婚年齢も上昇傾向にあり、東京都の場合70年に24.9歳、90年には26.7歳であったが、2010年には29.9歳にまで上昇しており、晩婚化が進行していることがうかがわれる。こうしたことを受けて、特に東京都での合計特殊出生率は、70年頃から全国平均を大きく下回りながら低下傾向で推移し、65年に2.00であったのが、その後逓減し、90年には1.23、2005年には1.00にまで低下した(第4-1-10図)。

第4-1-9図 女性の未婚率の推移
第4-1-9図 女性の未婚率の推移
(備考)
  1. 総務省「国勢調査」より作成。
  2. 全国、首都圏、東京都特別区のデータ。
第4-1-10図 首都圏の合計特殊出生率の推移
第4-1-10図 首都圏の合計特殊出生率の推移
(備考)
厚生労働省「人口動態統計」より作成。

他方、首都圏における死亡数は、趨勢としてやや増加傾向にあり、70年に年間12.5万人であった死亡数は、90年には17.0万人、2010年には27.7万人となっている(前掲第4-1-8図)。これは、人口が増え続ける中で、死亡率が緩やかながら上昇していることによる。死亡率は70年の5.2‰から80年に4.7‰で減った後、90年には5.4‰、2010年には7.8‰に上っている。この死亡率の上昇には、老年人口比率が上昇していることが寄与している。

(首都圏における高齢化の状況)

首都圏では、老年人口比率の上昇が全国平均と比べて緩やかであるが、老年人口数は激増している。これを全国の各地域と比較したのが、第4-1-11図である。図表中では、首都圏及び10地域について、70年から2010年まで10年毎に、横軸に人口、縦軸に老年人口をとり、その推移を見たものである。右方に移動するほど人口が増加し、上方に移動するほど老年人口が増加する。座標と原点を結んだ直線が横軸と成す角度が大きくなるほど、老年人口比率が上昇したことを意味する。

第4-1-11図 総人口及び老年人口の推移
第4-1-11図 総人口及び老年人口の推移
(備考)
  1. 総務省「国勢調査」より作成。
  2. 首都圏は東京、神奈川、千葉、埼玉(南関東と同じ)。
  3. 地域区分はA

これをみると、まず第1に、各地域とも上方に伸びており、人口が大きく変化していないにもかかわらず、老年人口が大きく増加していることが示されている。また、東北、北海道、四国、九州地域等では特に2000年代に人口が減少し、グラフが左方へ屈折していることが見て取れる。他方、首都圏や東海、沖縄地域では人口増加が継続し、グラフが右上がりの形状を維持しており、特に首都圏ではその勢いをある程度維持している。

第2に、各地域とも90年代以降グラフの動きが横方向よりも縦方向に強まっており、老年人口が急速に増加し、老年人口比率が高まっていることがうかがわれる。特に、四国(26.9%)、東北(25.8%)、中国地域(25.7%)では、老年人口比率が高い(首都圏は20.6%)。

第3に、首都圏の老年人口比率は他地域と比べ相対的にまだ低いが、老年人口自体は急激に伸びていることが分かる。首都圏では、70年に126万人、80年に200万人だった老年人口は、90年に299万人、2000年に481万人、2010年には725万人と加速度的に増加している。


113 我が国では、少子化の傾向は既婚女性の出生率が低下しているためではなく、未婚率の上昇や晩婚化の影響が大きいことが指摘されている。例えば八代(1999)、松谷他(2002)、吉田他(2011)など。
[目次]  [戻る]  [次へ]