補論1 首都圏人口の変化の長期的推移
戦後我が国では、地方から大都市に向けて、若年層を中心にほぼ一貫して人口の流出が生じたことは、第3章で述べた。こうした人口の動きは、地方における高齢化の加速、都市経済の成長と地方経済の停滞、さらには所得の地域間格差の大きな要因の一つとして、長らく議論されてきた。都市圏では人口の自然増が緩やかになってきているものの、それを地方部からの人口流入すなわち人口の社会増が補う構図となっており、その意味では、確かに大都市圏が地方から人口を吸収することで、その規模を成長させ続けていることは事実である。
しかし、今日全国規模で進行している少子高齢化は大都市圏でも例外ではなく、むしろ大都市圏においてこそ老年人口の急増が今後予想されている。また、未婚化・晩婚化も急速に進んでおり、それに伴って少子化のスピードも顕著である。そうした人口の変化が大都市圏では加速度的に進行しているが故に、それが引き起こす問題はむしろ深刻となり得る。
本論では、最大の都市圏である首都圏(東京都及び神奈川・千葉・埼玉県)96を例として取り上げ、戦後の首都圏人口の変化の長期的推移を概観する。そして、それを前提として、引き続き補論2では、都市圏内で生じている重大な問題である郊外地域での“街の高齢化”を、首都圏について詳論する。
96 首都圏の範囲については、首都圏整備法及び施行令では、1都7県(埼玉県、千葉県、神奈川県、茨城県、栃木県、群馬県、山梨県)を首都圏と定めている。また、国勢調査では、関東大都市圏として、東京都特別区部、横浜市、川崎市、さいたま市、千葉市、相模原市の「中心市」及び「周辺市町村」(中心市への15歳以上通勤・通学者数の割合が常住人口の1.5%以上で、かつ中心市と連接している市町村)を設定しているが、本論では、首都圏を東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県と設定して議論を進める。