補論2 大都市圏内における“街の高齢化”
補論1では、戦後の人口の首都圏への集中の動きや首都圏の人口の推移を概観した。
その中で、首都圏では人口の自然増の勢いが緩慢となり、老年人口の急速な増加や少子化が進行する一方、地方からの人口流入がその数を変動させながらも持続することで、他地域よりも人口を増加させ、結果的に首都圏への人口集中が現在も進んでいることが分かった。
しかし、大都市圏内においても、人口を巡る様相は全域で一様ではなく、地域によって人口及び人口構成は異なり、また大きく変化している。こうした人口の動きは、地域の所得水準の低下や消費活動の停滞、地方税収の減少といった経済的影響のみならず、地域の交通インフラを始めとする公共インフラ、まちづくり、治安や公共サービス供給のあり方など多方面に影響を及ぼし、それらへの対応・見直しに多大な社会的負担が発生することも懸念される。特に、戦後の大都市圏への膨大な人口流入に対応するため、都市の郊外地域には新興住宅地が開発され、主に若年層が定住したが、現在、その世代が高齢層に入りつつあり、これらの地域では老年人口比率が高まり、“街の高齢化”が生じている。
本論でも、補論1に続き首都圏114を取り上げ、圏内を都心部・郊外・その他地域に三分し、その各地域における人口の動きをみる。その上で、郊外地域で進んでいる“街の高齢化”がその地域の経済社会にどのような影響を及ぼしているのかを整理する115。
114 本論でも首都圏を東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県の1都3県とする。
115 首都圏人口の流れや郊外地域の変化を分析した研究として、江崎(2006)、荒井他(2002)など。本論の分析も、江崎(2006)の成果に多くを拠っている。