第1節 雇用の推移と人口流出入
1.各地域の労働市場と雇用
(各地域の雇用情勢)
90年以降の各地域の失業率の推移をみたのが、第3-1-1図である。都市部では、東海地域が全国平均を大きく下回って推移しており、南関東地域は全国平均と近似した動きを示している一方、近畿地域は全国平均を大幅に上回って推移しており、都市部においても地域差が大きい。地方部においては、さらに地域間でばらつきが大きく、北関東、北陸、中国地域では一貫して全国平均を下回って推移している一方、北海道、九州・沖縄地域は全国を上回っており、東北地域も2000年代に入って失業率が全国平均を上回っている。
- 「労働力調査」より作成。
- 地域区分はC。
有効求人倍率の長期的推移について、第3-1-2図でみると、都市部では、東海地域はやはり一貫して全国平均を大きく上回っており、南関東地域は、いわゆるバブル景気の崩壊以降90年代中は全国平均を下回って推移したものの、2000年代に入ると全国平均より高い値で推移している。これに対し近畿地域は、長期的に全国平均を下回って推移していたが、2000年代後半に入って全国の動きとほぼ同じ水準となっている。
- 厚生労働省「一般職業紹介状況」より作成。季節調整値。
- 地域区分はA。
他方、地方部では、北陸、北関東、中国地域は全国平均を一貫して上回って推移しているのに対し、北海道、九州・沖縄地域は一貫して全国平均を大きく下回って推移している。また、東北、四国地域は、90年代は全国平均を上回って推移していたが、2000年代に入ると逆に下回る期間が多くなっている。
このように、雇用指標の趨勢をみてみると、地方部においても例えば北陸や北関東、中国地域では、失業率は全国平均を一貫して下回って推移し、有効求人倍率でも全国平均を上回るなど、良好な雇用状況となっており、地方部の地域間で差異が生じている。他方、都市部においても、近畿地域は失業率でも有効求人倍率でも良好な状況にはなく、好調を維持する東海地域とは様相が大きく異なる。
(労働力人口の推移)
失業率の値は労働力人口と就業者数の比率で表現することができる58。失業率の動きを考えるために、ここでは、労働力人口の長期的な動きを、総人口及び15歳以上人口と併せて見ておくことにしよう59(第3-1-3図)。
全国の労働力人口は、90年に6,384万人であったが、98年の6,793万人をピークに減り始め、2000年には6,766万人、2010年には6,590万人まで減少しており、ピーク時から約3%減少となった60。
ところで、全国の総人口は、90年の1億2,361万人から2000年の1億2,693万人へと増加基調にあったが、2005年に戦後初めて対前年比マイナスを記録し(1億2,777万人)、2010年には1億2,806万人と若干の増加となっている。また、15歳以上人口は、90年の1億107万人から増加し続けていたが、2008年の1億1,052万人をピークに減少基調に転じている。
このように、90年代後半に労働力人口が減少に転じ、遅れて2000年代半ば以降総人口及び15歳以上人口も減少局面に入りつつあり、人口減少社会を迎えている。
この労働力人口と15歳以上人口が減少に転じるタイミングの差は、労働力率の変化で説明される。労働力率は、90年代半ばまで64%前後で推移していたが、97年以降急速に低下し続け、2004年には60.4%となった。その後しばらくその水準を維持していたが、2008年から再び低下傾向にあり、2010年には59.6%となっている。