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2.雇用の動向

(震災後、生産の持ち直しに連動し、持ち直しの動きがみられた有効求人倍率)

雇用では、リーマンショックから回復した生産の動きにやや遅れて持ち直しの動きがみられるようになっていた。地域別の有効求人倍率(季節調整値)は、2009年9月頃から上昇しはじめ、10年平均では南関東を除く地域で前年を上回り、11年に入ってからも上昇が続いていた。

しかし、震災による生産の減少に伴って、有効求人倍率も、4月には被災地の東北で前月差0.03ポイントの低下、5月には東海で同0.03ポイントの低下など、再び低下した。その後の生産の持ち直しに伴い、有効求人倍率は7月以降、沖縄を除く地域で上昇している(第1-3-22図)。有効求人倍率の変動が他地域に比べて大きかった東北、北関東、東海、中国の推移をみると、鉱工業生産指数に1か月程度の遅れをもって動いていることが分かる(第1-3-23図)。なお、「激甚災害法の雇用保険の特例措置」(休業する場合の特例措置)13により失業給付を受給している被災者は、現在、求職者に含まれていないことから、そのような被災者の存在が被災者のいる地域の有効求人倍率には反映されていない点に留意が必要である。

第1-3-22図 有効求人倍率の推移
第1-3-22(1)図 有効求人倍率の推移 第1-3-22(2)図 有効求人倍率の推移
(備考)
  1. 厚生労働省「職業安定業務統計」より作成。
  2. 地域区分はA
第1-3-23図 鉱工業生産指数と有効求人倍率の推移
第1-3-23図 鉱工業生産指数と有効求人倍率の推移
(備考)
  1. 経済産業省、各経済産業局、中部経済産業局電力・ガス事業北陸支局「鉱工業生産指数」により作成。
  2. 地域区分はB
第1-3-23図 鉱工業生産指数と有効求人倍率の推移
(備考)
  1. 厚生労働省「職業安定業務統計」より作成。
  2. 地域区分はA

また、有効求人倍率に先行して動く新規求人倍率をみても、輸送機械のサプライチェーンの立て直しによる生産の持ち直しなどにより、東北、北関東、東海、九州などで5月以降、上昇傾向にある。しかし、8月には、東北、東海、九州などで低下しており、有効求人倍率の先行きには注意が必要である(第1-3-24図)。

第1-3-24図 新規求人倍率の推移
第1-3-24図 新規求人倍率の推移
(備考)
  1. 厚生労働省「職業安定業務統計」より作成。
  2. 地域区分はA

(厳しい状況にあるものの低下がみられる完全失業率)

完全失業率(季節調整値)の推移をみると、2011年1~3月期には東海で前期に比べて横ばいとなり、その他の地域では低下し、また、4~6月期には北海道、中国・四国を除く地域で低下した。その後、7~9月期には中国・四国で横ばいとなり、南関東、北陸を除く地域で低下した。このように震災後も多くの地域で低下している背景には、雇用調整助成金や雇用保険失業給付の特例措置(後述)などの様々な対策が講じられ、雇用維持が図られたことの他、4~6月期以降の生産の持ち直しも影響しているとみられる。しかし、失業率の水準をみると、7~9月期では北海道、南関東、九州・沖縄で4.5%以上となっており、雇用情勢は依然として厳しい状況にあることが分かる(第1-3-25図)。

第1-3-25図 完全失業率の推移
第1-3-25図 完全失業率の推移
(備考)
  1. 総務省「労働力調査」により作成。
  2. 完全失業率の東北地域は2011年1~3月期以降のデータは未公表。全国は岩手県、宮城県及び福島県を除く値。
  3. 地域区分はC

(震災により、東北、北関東、東海などで大幅に増加した雇用調整助成金対象者数)

雇用調整助成金等に係る「休業等実施計画届」14受理事業所の対象者数(全国)をみると、2010年から11年2月までは月を追うごとに減少していたが、震災のあった11年3月に引き続き4月にも大幅に増加した。これは、雇用調整圧力が大きくなり、多くの企業が助成金を利用して雇用の維持を図ったことを示している。その後は、企業の生産活動の回復などに伴って、対象者数は減少している(第1-3-26図)。

第1-3-26図 雇用調整助成金等に係る休業等の対象者数(休業計画受理分)の推移
第1-3-26図 雇用調整助成金等に係る休業等の対象者数(休業計画受理分)の推移
(備考)
厚生労働省「雇用調整助成金等に係る休業等実施計画届受理状況、支給決定状況及び大量雇用変動届提出状況」により作成。

地域別に対象者数(前月比)をみると、11年3月、4月には被災地である東北に加え、製造業に占める輸送機械のウェイトが高くサプライチェーンの寸断による影響が大きかった北関東、東海で大幅に増加した。5月には、サプライチェーンの立て直しによる企業の生産活動の回復に伴い、東北を除く多くの地域で減少した。また、東北でも、他地域に遅れて7月になって減少に転じたが、これは特例措置により、青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野の9県の災害救助法適用地域に所在する事業所の場合、本来は事前に届け出る必要のある計画届の事後提出が11年6月16日まで認められていたため、6月までは事後提出も含めた計画届の申請が多く、7月にはその反動が現れたものとみられる(第1-3-27図)。

第1-3-27図 雇用調整助成金等に係る休業等の対象者数(地域別)
第1-3-27図 雇用調整助成金等に係る休業等の対象者数(地域別)
(備考)
  1. 厚生労働省「雇用調整助成金等に係る休業等実施計画届受理状況、支給決定状況及び大量雇用変動届提出状況」により作成。
  2. 地域区分はA

(震災により、東北で大幅に増加した雇用保険の受給資格決定件数)

雇用保険一般被保険者の求職者給付状況(基本手当(延長給付を除く))を地域別にみると、雇用保険の受給資格決定件数の前年同期比は、2011年1~2月には全ての地域で減少していたが、東北では、震災のあった3~4月には67.2%増、さらに5~6月も74.3%増と大幅な増加が続き、震災による雇用への影響が大きかったことを示している。その後、7~8月には南関東で僅かに増加したものの、その他の地域では減少し、雇用保険の受給資格決定件数は1~2月の前年同期比の水準に戻った(第1-3-28図)。

第1-3-28図 雇用保険一般被保険者の求職者給付(基本手当)受給資格決定件数
第1-3-28図 雇用保険一般被保険者の求職者給付(基本手当)受給資格決定件数
(備考)
  1. 厚生労働省「雇用保険事業月報」より作成。
  2. 地域区分はA

なお、震災後、雇用保険では、東日本大震災により、最大120日分延長して支給する特例措置15を実施していたが、10月から支給終了となる人が出始めるとみられた。そのため、9月27日に厚生労働省は、雇用保険法第25条(広域延長給付)の規定に基づき、震災被害が大きく特に雇用情勢が厳しい被災3県(岩手・宮城・福島)の沿岸地域などの市区町村に住む給付対象者に対して、雇用保険の給付日数をさらに90日分延長(期間は11年10月1日から12年9月30日まで)することを決定した。これは、特に被害が大きく復興に時間を要する地域では、雇用保険の支給終了者が新たな職に就くことが難しいと想定されたためである。

(震災を契機に東北、南関東、東海などで大幅に増加した、非正規労働者の雇止め数)

非正規労働者の雇止め数をみると、2011年1~2月に比べて、震災のあった11年3~4月には被災地の東北、南関東に加え、震災の影響で輸送機械の生産が減少した東海などで大幅に増加した。これら大幅に増加した地域では、5~6月以降には生産の持ち直しなどにより雇止め数は減少し、7~8月には多くの地域で1~2月の水準に戻った(第1-3-29図)。

第1-3-29図 非正規労働者の雇止め等の状況
第1-3-29図 非正規労働者の雇止め等の状況
(備考)
  1. 厚生労働省「非正規労働者の雇止め等の状況について」より作成。
  2. 地域区分はA

(東海、四国など多くの地域で減少した現金給与総額)

全国の現金給与総額は、製造業を中心とした所定外給与の増加等を背景に2010年3月に前年同月比1.0%増と増加に転じ、それ以降も増加を続けた。しかし、11年に入ると所定内給与の減少などから伸び率の鈍化がみられた。さらに、震災のあった3月以降には残業時間の減少などにより所定外給与が減少したことから、現金給与総額は弱い動きとなっている。

現金給与総額の前年比の動きを地域別にみると、11年1~3月期に東海、近畿、九州・沖縄で所定外給与や特別給与も減少に転じるなど悪化の動きがみられた。さらに、震災後の4~6月期には関東、北陸でも減少に転じ、東海、四国の2地域では減少幅が拡大するなど弱い動きとなっていた。このうち、減少幅が最も大きい東海について内訳をみると、製造業の所定外給与の減少がその要因となっている。その後、7月には現金給与総額は、東海で特別給与の増加などにより増加するなど7地域で増加したが、北海道と九州・沖縄などでは弱い動きが続いた(第1-3-30図)。

第1-3-30図 現金給与総額の推移
第1-3-30図 現金給与総額の推移
(備考)
  1. 厚生労働省、各都道府県「毎月勤労統計(地方調査)」により作成。
  2. 都道府県別の現金給与総額を、常用労働者数でウェイト付けし、算出。
  3. 岩手県(3月、4月)、宮城県(3月~5月)、福島県(3月、4月)は同調査が行われていないため、前年同月と同値とした。

(雇用の動向のまとめ)

2011年秋の時点において、有効求人倍率では多くの地域で持ち直しの動きがみられる。しかしながら、東北での雇用保険の受給資格決定件数が11年3~4月、5~6月に前年同期比65%以上の大幅な増加となり、それ以降減少していないこと、また、災害時の雇用保険の特例により失業給付を受給している被災者は求職者に含まれていないため、そのような被災者の存在が有効求人倍率には反映されていないことなどを踏まえると、東北など被災地を中心に雇用状況は依然として厳しい状況にあると考えられる。また、失業率も依然として厳しい水準にあり、現金給与総額も弱い動きとなっている。


13 「激甚災害法の雇用保険の特例措置」(休業する場合の特例措置)とは、事業所が災害を受けたことにより休止・廃止したために、休業を余儀なくされ、賃金を受けることができない状態にある方について、実際に離職していなくても雇用保険の基本手当を受給できるというもの。
14 厚生労働省は本制度の機動性を高めるため、2011年3月17日の通達で、特例措置を適用した。これは、災害救助法適用地域に所在する事業所の事業主に対し、1最近3か月としている生産量等の確認期間を1か月に短縮する、2震災後1か月の生産量等が直前1か月又は前年同月と比較して5%以上減少見込みの事業所も対象に含める、3一定期間、計画届の事後提出を可能とする、ことを内容とするものである。被災地域に事業所等と一定規模以上の経済的関係を有する事業所の事業主についても、1及び2の特例を適用している。
15 雇用保険の給付日数は、対象者の勤続年数等により最短90日から最長330日であるが、被災地では特例により120日分延長されていた。延長後の給付日数は最短で210日(約7か月)であることから、震災後7か月経過する10月から支給終了となる人が出始めることとなる。
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