第1章 第2節 2 地域の雇用創出

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(地域の雇用創出の取組)

厳しい雇用情勢を踏まえ、都道府県や市町村は、雇用創出のための取組を行っている。都道府県等の取組は4つのグループに分類できる。第一は、国から交付された「ふるさと雇用再生特別交付金」、「緊急雇用創出事業臨時特例交付金」を活用して、事業や雇用の継続性を前提とした事業を行う「ふるさと雇用再生特別基金事業」や、臨時・一時的な雇用・就業機会の提供を目的とした「緊急雇用創出事業」の取組である。第二は、介護、医療、農林、環境、観光等において雇用機会を創出する「重点分野雇用創出事業」の取組である。第三は、失業者が地域の企業に就職するために必要な知識・技術を習得するため、職場外研修と職場内訓練を組み合わせた研修機会を提供する「地域人材育成事業」の取組である。第四は、地域の特性を活かした重点的な産業振興および雇用創出を図るために、事業主向け・求職者向けの人材育成の研修などを実施し、事業主に対しては事業拡大、求職者に対しては就職促進を図る「地域雇用創造推進事業(パッケージ事業)」5の取組である。パッケージ事業は、いわば、上記第一から第三までの取組を組み合わせた複合的な取組といえる。

例えば、北海道では、(1)「ふるさと雇用再生特別基金事業」として、通訳案内士等を活用した外国人観光客受入体制整備につながる新しいビジネスモデル事業、(2)「緊急雇用創出事業」として、全国学力・学習状況調査に係る回答の回収・採点・集計作業を行う事業、(3)「重点分野雇用創出事業」として、現任の介護職員等を研修に派遣する場合に、代替職員として失業者を雇用して派遣する事業、(4)「地域人材育成事業」として、IT技術を有する離職者のIT経営スキルの向上を支援する事業、などが実施されている。

ここでは、「地域雇用創造推進事業(パッケージ事業)」を活用して実際に雇用創出を行った事例として、北海道の天塩町における取組の事例を紹介する。

<事例紹介>北海道天塩町の地域密着型雇用創出チャレンジプロジェクト(2007~2009年度)

1 地域経済をめぐる課題

天塩町がパッケージ事業に取り組むこととしたのは、次に掲げる3つの課題を克服するためである。第一は、町内最大規模の酪農企業の廃業による雇用の場が減少していること、第二は、公共事業が減少しているため建設業の雇用が悪化していること、第三は、町内に雇用の場が少ないため、若者が域外へ流出していることである。

この3つの課題に対応するために取り組む重点分野として、天塩町では酪農・畜産業、漁業、観光振興の3分野を挙げている。酪農・畜産業では、かつては重要な基幹産業だったが、過酷な労働環境などから従業者が激減してしまった。このため、まずは、法人による営農等担い手の確保や優良な放牧地の維持・活用等が必要であった。漁業では、「しじみ」の減少や魚価の低迷により、漁業が衰退しつつあるため、新たな加工品の開発による収入源の確保が必要であった。観光では、地域間競争の激化により、中核的な温泉施設などへの観光客が減少していることに対応するため、豊富な地場産品の高付加価値化、販路拡大、多種多様な観光ニーズに対応する人材育成が必要であった。

これら3つの重点分野における取組を雇用創出へとつなげることを目的としてパッケージ事業が実施された。

2 パッケージ事業の内容

パッケージ事業として行われたのは、次の3つである。第1に、事業主向けの雇用拡大メニューとして、IT関連販売およびマーケティングセミナー、特産品販売促進のための研修派遣事業である。前者には2007~09年度において合計45社参加し、後者には8社参加した。第2に、求職者向け人材育成メニューとして、畜産技術者派遣研修、地場食材オリジナルメニュー開発研修などである。2007~09年度の合計で、前者は18人受講、後者は142人受講した。第3に、求職者向け就職促進メニューとして、前述した第1と第2のメニュー利用者等を対象に、合同就職フォーラムを実施した。これには、2007~09年度の合計で50人が参加した。

3 事業の成果

事業により、3年間で牧場スタッフや調理スタッフなど67人の雇用が創出された。また、特産品のしじみを活用したそば屋の新規創業が実現した。

また、この事業により育成した人材の活用により、たこキムチ丼などの新商品を開発したり、ホームページを活用して販路の拡大を行ったり、観光イベントの企画によって誘客を促進したりするなど、地域経済の発展や更なる雇用拡大が実現した。

北海道天塩町の事例は、地元の資源を活用しながら、地元に根ざした雇用創出を行った例である。このタイプの取組は、華々しさはないが、地域において一定の雇用を生み出す取組の一つである。さらに事業を発展させて、「地産地消」ではなく、生産地域を越えて全国的な商売に発展させ、「地産地商」となった事例もある。パッケージ事業ではないが、「葉っぱビジネス」を展開する徳島県上勝町の「いろどり」や、伝統食品のおやきを製造販売する長野県小川村の「小川の庄」などの取組が有名である。


5.政府は雇用創造に向けた意欲が高い地域への支援として、2007年度から「地域雇用創造推進事業(パッケージ事業)」を実施している。パッケージ事業は、市町村、都道府県、経済団体等が設置した協議会より、人材の育成や就職を促進するための事業の提案を受け付け、そのうちの雇用創造効果が高いと認められる事業について、その実施を国が協議会へ委託するものである。なお、本事業の対象地域は1または複数の市町村とされている。

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