第1章 第2節 1 雇用の動向

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(多くの地域で持ち直しの動きがみられる有効求人倍率)

雇用は生産の動きにやや遅れて持ち直しの動きがみられるようになった。地域別の有効求人倍率(季節調整値)は、ようやく2009年10~12月期になって下げ止まり、2010年に入ってからは、期を追うにつれて上昇している。全国の有効求人倍率は、2009年10~12月期の0.43倍から2010年7~9月期の0.54倍へと、0.11ポイントの上昇をみせたが、全国よりも上昇幅が大きい地域は、製造業からの求人の増えた東北、北関東、東海、北陸、中国、四国の6地域である。他方、全国よりも上昇幅が小さかったのは、第一次産業ウェイトの高い北海道や、観光等のサービス業が中心の沖縄といった、製造業のウェイトが比較的小さな地域であった(第1-2-1図)。

第1-2-1図 有効求人倍率の推移
―2010年に入ってから、全ての地域で上昇している有効求人倍率―

第1-2-1図

(備考)

  1. 厚生労働省「職業安定業務統計」より作成。
  2. 地域区分はA

有効求人倍率に上昇の動きがみられるようになったのは、新規求人が増加しているためである。新規求人数(季節調整値)について、2009年7~9月期から2010年7~9月期までの伸び率をみると、生産の増産に対応するため、輸送機械や電気機械などで期間工等の採用を再開したことなどを背景に、全ての地域で増加している。伸び率が全国よりも高い地域は、東北、北関東、東海、北陸、四国であり、有効求人倍率の上昇幅が大きい地域とほぼ一致している(第1-2-2図)。

第1-2-2図 新規求人数の増減率(季節調整値)
―2009年7~9月期→2010年7~9月期―

第1-2-2図

(備考)

  1. 厚生労働省「職業安定業務統計」より作成。
  2. 地域区分はA

(就業者全体の動向に影響を与える製造業)

産業別の就業者数の動きをみると、減産が行われた製造業、次いで建設業、サービス業でマイナスの寄与が大きい。他方、全期間を通じて医療・福祉はプラスに寄与している。

2010年7~9月期の就業者数は全国平均では前年比横ばいであったが、地域別にみると、前年比プラスとなった地域は、東北(0.2%増)、東海(1.1%増)、北陸(0.4%増)、九州・沖縄(1.6%増)の4地域であった。これらの地域では、製造業での改善ないし減少幅の縮小が就業者数の持ち直しに寄与した。また、東北、東海、北陸では製造業に加えてサービス業も増加に寄与した。

他方、前年比マイナスとなった地域をみると、近畿は製造業のマイナスの寄与が依然として大きいことから、他の地域に比べて改善のテンポが遅い。北海道は就業者に占める製造業のウェイトが小さいことから、他地域とは異なった動きとなっている。

全ての地域で医療・福祉の就業者数が概ね増加しているものの、その影響は小さく、やはり製造業の動向が就業者数の増減に大きな影響を与えている(第1-2-3図)。

第1-2-3図 就業者数(非農林業) 産業別寄与度

第1-2-3図

(備考)

  1. 総務省「労働力調査」より作成。サービス業は、医療・福祉を除く。
  2. 地域区分はC

(厳しい状況にあるものの低下もみられる完全失業率)

地域別の完全失業率(原数値)を2010年7~9月期の前年同期差で比較すると、全ての地域で低下(改善)している。特に、2009年7~9月期には東北、近畿、九州・沖縄で6%を超えていたが、2010年7~9月期にはこれらの地域でも近畿を除いて6%を下回った。多くの地域で、失業率の水準そのものは4~6%と引き続き厳しい状況にあるものの、総じて低下している(第1-2-4図)。

第1-2-4図 完全失業率 水準と前年同期差
―厳しい状況にあるものの、総じて低下している完全失業率―

第1-2-4図

(備考)

  1. 総務省「労働力調査」より作成。
  2. 地域区分はC

次に、地域ごとの年齢層別の雇用状況を2009年と2010年についてみると、両期とも全ての地域において、15~24歳層が全年齢層平均を大幅に上回っている。特に北海道、東北では、全年齢層平均の失業率が低下する中で、15~24歳層の失業率は逆に上昇しており、若者の雇用状況が厳しいことがうかがわれる(第1-2-5図)。

第1-2-5図 2009、2010年7~9月期の年齢層別完全失業率
―全ての地域で15~24歳層が全年齢層平均を上回る完全失業率―

第1-2-5図

(備考)

  1. 総務省「労働力調査」より作成。
  2. 地域区分はC

(雇用調整助成金の活用による休業者は減少)

このように失業率の水準としては依然として厳しい地域が多いものの、多くの地域において有効求人倍率では持ち直しの動きがみられる。こうした持ち直しの動きは雇用調整助成金等に係る休業等実施計画届の受理状況からもうかがわれる。すなわち、受理した計画の対象者数は2009年4月に253万人をピークに、その後は減少しており、2010年4月には149万人、2010年10月は106万人となっている。企業が雇用調整助成金を利用して雇用の維持を図らなければならないような時期から徐々に脱しつつあることがうかがわれる。

雇用調整助成金による対象者数の最近の動向を地域別にみると、全ての地域で減少しているが、特に南関東と東海の対象者数は、2010年10月には2009年10月の約半分にまで減少した(第1-2-6図)。

第1-2-6図 雇用調整助成金等に係る休業等の対象者数(休業計画受理分)

第1-2-6図

(備考)

  1. 厚生労働省「雇用調整助成金等に係る休業等実施計画届受理状況、支給決定状況及び大量雇用変動届提出状況」により作成。
  2. 地域区分はC

(多くの地域で増加に転じた現金給与総額)

全国の現金給与総額は、製造業を中心とした所定外給与の増加等を背景に2010年3月に前年同期比で増加に転じ、それ以降も増加を続けた。現金給与総額の前年比の動きを地域別にみると、2010年1~3月期には東北、東海、北陸、九州・沖縄の4地域で増加に転じ、その他の地域においてもほとんどの地域で減少幅が縮小するなど、賃金の改善の動きがみられる。2010年4~6月期には、増加となった地域は6地域に増えた。その中でも増加幅が大きかった地域は、輸送機械の生産が好調な東海、電気電子の生産が好調な東北、一般機械の生産が好調な北陸などである。さらに2010年7~9月期をみると、関東、東海、北陸などで増加幅が鈍化したものの、それ以外の多くの地域で引き続き改善がみられた(第1-2-7図)。

第1-2-7図 現金給与総額の推移

第1-2-7図

(備考)

  1. 厚生労働省、各都道府県「毎月勤労統計(地方調査)」により作成。
  2. 都道府県別の現金給与総額を、常用労働者数でウェイト付けし、算出。

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