第1章 第3節 2 持ち直しの動きがみられる個人消費

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(2009年春頃から一部商品にみられ始めた持ち直しの動き)

急速に冷え込んだ個人消費も、2009年春頃から、全ての地域において持ち直しの動きがみられ始めた。「家計消費状況調査」における名目消費支出額(前年同期比)を地域別にみると、2009年1~3月期に、東海で大幅に減少したのをはじめ、全ての地域で減少したが、4~6月期から7~9月期にかけて、大半の地域で減少幅が縮小ないしは増加に転じており、改善がみられる。こうした個人消費の動きの背景には、環境対応車の購入に係る減税・補助金12、グリーン家電の購入に係るエコポイント付与13といった政策効果があったとみられる(第1-3-7図)。

第1-3-7図 二人以上世帯の消費支出額
―2009年春頃から全地域で持ち直しの動き―

第1-3-7図

(備考) 1. 総務省「家計消費状況調査」により作成。
2. 地域区分はC。

乗用車新規登録・届出台数の動き(前年同月比)をみると、全ての地域において2009年1~3月期を底に減少幅が縮小し、7~9月期には8地域で増加に転じるとともに、南関東、東海、沖縄の3地域でも減少幅が大幅に縮小した。さらに、減少していた3地域でも、8月から10月にかけては、3か月連続で増加している。また、7~9月期の新規登録・届出台数を車種別にみると、ハイブリッド車の販売好調等により、多くの地域において普通車だけでなく小型車も増加している(第1-3-8図)。

第1-3-8図 乗用車新規登録・届出台数 車種別寄与度(2009年7~9月期)

第1-3-8図

(備考) (社) 日本自動車販売協会連合会「自動車登録統計情報」の登録ナンバーベース及び
(社) 全国軽自動車協会連合会「軽自動車新車日報累計表」により作成。

主要家電量販店における売上動向をみると、7月は、2008年が猛暑であった一方、2009年は冷夏であったため、エアコンの前年に対する減少幅が大きく、北海道・東北以外の地域では前年を下回る結果となった。しかし、その7月を除くと、エコポイント制度が開始された2009年5月以降は、ほぼ全ての地域において、前年を上回る動きが続いている。特に8月以降は、大型商品へのシフトが進む薄型テレビを中心に、ほぼ全ての地域において増加率が上昇してきた。11月には、ほぼ全ての地域において増加率が低下したものの、増加基調は続いている。東海・北陸では、他地域に比べ売上の持ち直しが遅れていたが、8月以降は、他地域より増加率は低いものの、増加が続いている(第1-3-9図)。

第1-3-9図 主要家電量販店の売上金額の推移

第1-3-9図

(備考) 1. GfKジャパン集計データ(全国の主要家電量販店販売実績を調査・集計)により作成。
2. 関東・甲信越は茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、東京都、千葉県、神奈川県、山梨県、新潟県の計。

(多くの地域で発行されたプレミアム付き商品券)

経済対策の一環として行われた定額給付金の給付は、早い地域では2009年3月から始まり、3月下旬から4月にかけては多くの市区町村で実施された14。定額給付金の給付時期にあわせて、多くの地域で、地域内の消費喚起のため、地方自治体と地元商店会等が共同でプレミアム付き商品券の発行や消費拡大セールを行った。2009年6月26日時点で、全国の市区町村の約6割に相当する1,084市区町村で、プレミアム付き商品券が既に発行されていたり、これから発行される予定となっていた。地域別の発行率をみると、北陸では約8割、北海道、東北、九州で7割を上回るなど、総じて、地方圏における発行率が高かった(第1-3-10図)。

第1-3-10図 地域別 プレミアム付き商品券発行率

第1-3-10図

(備考) 1. 総務省「定額給付金の給付状況等の状況(平成21年6月26日時点)」により作成。
2. 各地域の市町村総数に占めるプレミアム付き商品券を発行した市町村数の比率。

プレミアム付き商品券の発行に際しては、プレミアム率やプレミアム分の財源の負担方法などに関して、様々な形態がみられた。財源負担についてみると、市区町村が地域活性化・生活対策臨時交付金等も活用し、プレミアム分の金額や商品券の印刷費等の運営経費の一部を負担し、残りを商店会等が負担する方法が大半であったが、なかには市区町村が全額負担する地域もあった。プレミアム率については、大半の地域が10~20%であったが、60%超の高プレミアム率の地域もあった。

プレミアム付き商品券の利用できる店舗や分野等において、地域の実情に応じた様々な工夫もみられた。例えば、商品券を利用できる店舗に、地元商店街の小規模店のみならず、大型店を含めたり、小売業に限らず、病院、旅行代理店、自動車整備、建設会社、学習塾等でも利用可能とする等、利用できる場所や分野を拡大する取組がみられた。また、幅広い店舗でプレミアム付き商品券が利用できるようにするため、利用可能店舗の中に大型店を含めつつも、消費の大型店への集中を防止し、地域のより多くの店舗に消費拡大効果が及ぶことを目指し、プレミアム付き商品券1セット(1つづり)の中に、大型店を含む加盟店全店で使用できる商品券と、大型店では使用できない商品券を組み入れるといった工夫もみられた(第1-3-11表)。さらに、子育て支援に積極的な地域のなかには、子育て世帯向けと一般向けの2種類の商品券を発行し、子育て世帯には、一般向けの商品券に加え、高プレミアムの子育て世帯向けの商品券を購入可能とするなど、子育て支援との連携を図った取組等もあった。

第1-3-11表 プレミアム付き商品券発行での工夫の例

第1-3-11表

(備考) 地方自治体へのヒアリング、地方自治体や商工会議所のホームページ等により作成。

景気ウォッチャー調査においても、2009年3月~6月においては、「5月の定額給付金の給付に合わせ、商店街独自の10%のプレミアム付き商品券を販売したところ、3日で完売し、商店街の売上に貢献している(東北=商店街)」、「今月は市内に定額給付金が支給され、プレミアム付き商品券が発売されたことで購買意欲が高まったのか、商品券を活用しての買物で、衣料、食品ともに順調に推移している(中国=百貨店)」のように、プレミアム付き商品券の発行が販売増につながっているとのコメント等が小売関連を中心にみられた。

(個人消費を取り巻く厳しい環境)

経済対策の効果によって、全ての地域において、個人消費が上向きつつあるとはいえ、雇用情勢が厳しく、賃金が減少を続けている状況下では、持ち直しの動きも弱いものにとどまらざるを得ない。また、新型インフルエンザの流行による影響から、旅行や外食が手控えられるリスクについても注視する必要がある。景気ウォッチャー調査の家計動向関連DI(現状判断)の推移をみると、2009年に入り、夏頃までは全ての地域で上昇傾向であったものの、7~8月には、天候不順や新型インフルエンザ流行の影響から、小売関連、飲食関連を中心とした売上不振により低下した。9月には、天候に恵まれた上、大型連休の影響もあり一旦上昇したが、10月には、全国11地域中、前月の低下幅が最も大きかった北海道を除く10地域で再び低下した。このようにほぼ全ての地域で家計動向関連に弱い動きが見られる要因としては、旅行関連を中心とした前月の大型連休での需要増の反動のほか、消費者の節約志向の高まりに加え、販売側におけるプライベート・ブランド商品等の低価格商品・サービスの提供の拡大の影響もあり、幅広い分野で低価格化が進んでいること等があげられる(第1-3-12図)。

第1-3-12図 景気ウォッチャー調査 家計動向関連DIの推移

第1-3-12図

(備考) 内閣府「景気ウォッチャー調査」により作成。

続く11月調査では、全国11地域中、全ての地域で低下した。これは、グリーン家電の購入に係るエコポイント付与や、環境対応車の購入に係る減税・補助金による販売増の鈍化に加え、冬季ボーナスの減額見込みによる購買意欲の低下等によるものである。家計動向関連の景気ウォッチャーのコメント(11月調査)をみても、「歳末商戦は、件数、単価ともに低下し、前年比70~80%である。一般の売場では、カード決済でのボーナス払いが極端に減少している。全体的には先を見越した消費が厳しく、進物にまで節約・倹約が高まっている(北陸=百貨店)」、「今年の冬はボーナスが出ないとか、減額されるといった話をする客が多い(近畿=乗用車販売店)」といった例が示すように、冬季ボーナスの減額見込みがすでに消費者の購買行動を慎重化させていることに言及する声が多かった。


12.
環境対応車関連施策は、一定の排ガス性能・燃費性能を備えた自動車の購入について、(1)自動車重量税及び自動車取得税の減免措置(2009年4月1日から実施)、(2)4月10日以降、登録・廃車することを条件に、新車を購入した場合の補助金(乗用車10万円(軽自動車5万円))の支給や、車齢13年を経過した車を買い換える際の廃車代替補助金(乗用車25万円(軽自動車12.5万円))がある。
13.
省エネ性能の高いエアコン、冷蔵庫、テレビを購入した者に対して、購入した製品に応じてエコポイントを付与し、様々な商品等と交換できる仕組みである。2009年5月15日購入分から対象となっている。
14.
定額給付金の給付は、3月5日に全国で最も早く北海道西興部村(にしおこっぺむら)と青森県西目屋村(にしめやむら)で開始され、全国最後となった札幌市で5月28日に開始された。

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