第2章 第2節 2.1990年代後半から2000年代前半の動き
(就業者数と生産年齢人口との関係)
次に、日本全体として緩やかながらも就業者数が増加していた1985年~1995年の10年間と、就業者数が減少してきた1995年~2005年の10年間に分け、この2つの期間で就業者数の変化を生産年齢人口との比較でみてみることにしよう。
1985年~1995年の10年間には、生産年齢人口が、東北や四国といった一部の地域ブロックでは減少したものの、就業者数は、東北や四国も含め全地域で増加し、増加率も生産年齢人口の増加率を上回っていた(第2-2-5図)。他方、1995年~2005年の10年間では、東海と九州では、就業者数の減少率が生産年齢人口の減少率を下回っているものの、それ以外の地域では、就業数者の減少率が生産年齢人口の減少率を上回っており、特に南関東や四国等では、人口動態から想定される以上に就業者数の落ち込みが大きかった。
第2-2-5図 生産年齢人口と就業者数の変化率の比較
(備考) | 1. | 総務省「国勢調査」により作成。 |
2. | 地域区分はA。 |
(地域差がみられた女性、60歳代の活用)
人口減少・高齢化の下でも、地域の活力を維持するためには、幅広い分野で女性や高齢者等の人材の参加を得ることが重要となる。
1995年~2005年の10年間では、既に多くの地域で人口減少が始まっており、生産年齢人口も沖縄以外の全ての地域で減少していた。こうした中で、就業者数は、ほぼ全ての地域で生産年齢人口を上回るテンポで減少したが、各地域で、働き手としての側面から女性や高齢者の活用がどの程度進んできたのかをみてみよう。
この期間に、全国でみると、女性の就業者数が僅かに増加したが、既に生産年齢人口の減少局面に入っていたこともあり、男性の就業者数の減少が大きく、全体としての就業者数は減少している。
地域別に、就業者数の変化を男女別に要因分解すると、全地域で、男性の就業者数の減少が就業者数を大きく押し下げている。男性の就業者数の減少についてみると、地方圏での減少幅が大きいが、近畿の減少幅も地方圏並みに大きい。一方、女性の就業者数は、男性の動きと違い、増加した地域もあれば、減少した地域もある。三大都市圏、九州、沖縄では増加した一方、それ以外の地方圏の地域では減少した。
次に、こうした就業者数の変動がどのような年齢・性別の動きによって生じているのかをみるため、この期間の男女別の就業者数の変化を4つの年齢階層(15~59歳、60~64歳、65~69歳、70歳以上)に分けてみてみることにした(第2-2-6図)。
男性の就業者の変化を年齢階層別にみると、「15~59歳」は全地域で大きく低下したが、その低下幅は地域間でかなり差がある。「70歳以上」は小幅ではあるが全地域で増加した。一方、「60~64歳」、「65~69歳」については、地域によってばらつきがある。三大都市圏では、「60~64歳」、「65~69歳」が共に増加した一方、北海道、東北、四国、九州では、「60~64歳」、「65~69歳」が共に減少した。
女性の就業者の年齢階層別の動きは男性以上に地域差がある。この期間に就業者数が増加した三大都市圏では、「15~59歳」は減少したものの、「60~64歳」、「65~69歳」、「70歳以上」は全て増加していた。また、南関東では、「15~59歳」の減少の程度が他地域(沖縄以外の地域)と比べ、極めて小幅であった。他方、九州では、「60~64歳」、「65~69歳」は、横ばいとなっている。また、この期間に女性の就業者数が減少している地域においても、北海道のように、「60~64歳」、「65~69歳」、「70歳以上」が全て増加していた地域もあれば、東北や四国のように、「15~59歳」の減少に加え、雇用拡大が期待される「60~64歳」、「65~69歳」の年齢階層でも減少がみられた地域もある。
(就業者数増減の要因分解)
次に、1995年~2005年における地域別の就業者数の動きの違いをさらにみるため、年齢階層別の就業者の変化をその階層の人口の増減による「人口変化要因」と、その年齢階層の就業率が変動することによる「就業率変化要因」とに要因分解してみることにした。
この期間において、いずれの地域(沖縄を除く)でも、就業率が相対的に高い「15~59歳」が大きく減少し、就業者数の全体を引下げていた。これは、全ての地域で、人口変化要因が大きく減少に寄与したためである。女性の「15~59歳」では、全ての地域で就業率変化要因が増加に寄与していたが、人口変化要因のマイナス幅が大きくなっていた。就業率の上昇によって就業者数の減少を食い止めることはできなかった。
第2-2-6図 就業者数の変化率 年齢階層別要因分解(95→05年)
(備考) | 1. | 総務省「国勢調査」により作成。 |
2. | 地域区分はA。 |
以下では、地域間のばらつきが大きい「60~64歳」についてみてみよう。「男性・60~64歳」は、全国でみると、この期間、就業率は低下していたものの、この年齢階層の人口増により増加した(第2-2-7図)。しかし、地方圏の東北、四国、九州等では減少した。これは、就業率変化要因が東海以外の全ての地域でマイナスの寄与となっていたものの、三大都市圏や北関東等では人口変化要因がプラスに寄与し、人口減少・高齢化が先に始まっていた東北、四国、九州では、就業率変化要因、人口変化要因がともに減少に寄与していたためである。
次に、「女性・60~64歳」については、全国でみると、人口変化要因、就業率変化要因ともに増加に寄与していた。地域別にみると、人口変化要因は、三大都市圏では大きく増加に寄与した一方、東北、四国、九州、沖縄では減少に寄与した。さらに、就業率変化要因も、三大都市圏を中心にほぼ半数の地域で全国平均を上回る程度で増加に寄与したものの、北関東や中国ではマイナスとなり、東北や四国では小幅な伸びにとどまった。
第2-2-7図 60歳代前半(60-64歳)の就業者数変化率要因分解(95→05年)
(備考) | 1. | 総務省「国勢調査」により作成。 |
2. | 地域区分はA。 | |
3. | 要因分解は以下による。 | |
就業者数:E、人口:P、就業率:eとしたとき、E=e×Pより | ||
(就業者数前期差)=ΔE≒Δe×P+e×ΔP | ||
両辺をEで除して | ||
(就業者数変化率)=ΔE/E≒(Δe/e)+(ΔP/P)=(就業率変化要因)+(人口変化要因) | ||
4. | 労働力状態不詳数は人口に含まない。 |