第2章 第1節 1.地域ブロック別の人口の動き

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日本では、2000年代半ばより人口減少が始まったが、地域別にみると、地方圏を中心に既に1990年代後半から人口が減少する地域には広がりがみられていた。しかし、一方で、南関東や東海のように、2000年代に入り、人口増加率を高めている地域もある。このように、人口の動きには地域間でばらつきがみられる。そこで、第1節では、こうした地域間の違いを踏まえつつ、中期的な人口の動きを地域ブロックといった広域的な視点からみるとともに、市町村が直面する最近の人口減少の状況をみてみる。

第2節では、地方圏を中心に人口減少の地域が広がり始めた1990年代後半以降において、生産年齢人口の減少に伴う就業者数の動きを地域ブロック別にみてみる。さらに、2000年代半ば以降において、就業者数が地方圏では減少が続く一方、南関東などでは増加に転じるといった、地域間の異なる動きについてもみてみることにする。

第3節では、2000年代前半以降、沖縄以外の地方圏では人口や就業者が減少する状況の下、地域経済の活力や都市関連サービスの水準を維持するため、広域的エリアで拠点となる市における都市機能の集積を有効に活用しつつ、周辺地域とのネットワークを強化し、圏域全体として活力を維持することが一層重要となっている。そこで、地方圏にある人口20万人程度以上の拠点的な都市を取り上げ、これらの市が、広域的な拠点として求められる役割を果たしているかどうかについて、就業機会の面を中心にみてみることにする。

第1節 地域別にみた人口減少の動き

日本の総人口は2005年に戦後初めての減少を記録した後、2006年、2007年とほぼ横ばいとなったものの、2008年(10月現在)には前年同月に比べ6万人の減少となっており、今後も減少傾向は続くと見込まれている。人口の状況を年齢別にみると、15歳から64歳までのいわゆる生産年齢人口は、総人口が減少を始めた時期よりも10年ほど前の1996年に既に減少に転じていた。65歳以上人口が総人口に占める高齢化率も上昇を続け、2005年には20%を超えている。

ところで、以上は、国全体で捉えたものであるが、人口減少や高齢化の進み方やその程度は地域差があり、国全体として捉えた統計値だけで地域差をつかむことはできない。そこで、本節では、まず、人口減少の進み方を地域ブロック別に比較し、次に、市町村レベルでみていくことにする。

1.地域ブロック別の人口の動き

(地域差がみられる人口の動き)

全国を11の地域ブロックに分け、1980年代以降の各地域の人口の推移をみると、地域間でかなりの違いがある。そこで、相違点のほか、類似点も考慮に入れつつ、全国11の地域ブロックを過去30年程度の人口の動きに基づき、大きく3つのグループに分けてみることにしよう。

まず、Aグループは、依然、人口の増加が続いている地域であり、南関東、東海、沖縄が該当する。

Bグループは、2000年代に入り人口減少が始まった地域であり、北関東、北陸、近畿、九州の4地域が該当する。北関東、北陸、九州では、2000年代前半に人口の減少が始まった。近畿では、2000年代前半までは人口は僅かながらも増加していたが、2000年代半ばに人口減少に転じた。

Cグループは、1980年代もしくは1990年代に、既に人口が減少していた地域で、北海道、東北、中国、四国の4地域が該当する。

(人口増加の続く南関東、東海、沖縄)

初めに、人口増加の続くAグループに属する3地域を南関東、東海、沖縄の順にみていくことにしよう。

戦後の高度成長期には、地方圏から三大都市圏への人口流入が進んだが、1980年代以降になると、それまでの動きが変化する。南関東への流入は進んだが、東海ではほぼ横ばい、近畿では流出に転じ、いわゆる東京一極集中が進んだ。南関東への転入超過数の推移をみると、1980年代前半に増勢を強め、ピーク時の1987年には16万人強となった。その後、転入超過数は縮小し、1994年、1995年には、転出超過に転じた。

東京一極集中が1990年代半ばに沈静化した背景の一つとして、労働需給の地域差があるものとみられる。1980年代以降の有効求人倍率を南関東と地方圏との間で比較すると、1990年代初めまでは、南関東が地方圏を上回っていたものの、1990年代半ばには、地方圏が南関東を上回るようになり、地方圏のほうが南関東よりも相対的に職を得る機会が多くなっていた(第2-1-1図)。

1995年以降も有効求人倍率は地方圏が南関東を上回っていたものの、その差が徐々に縮小し、2001年には南関東が地方圏を再び上回ることとなった。こうした労働需給の動きに対応し、1996年以降、南関東への転入超過数が再び増加を始め、2007年には1980年代半ばのピークに迫る勢いとなった。

南関東の人口増減を出生者数から死亡者数を差し引いたものである自然増減と、他地域からの転入・転出に海外からの転入・転出を加えたものである社会増減に分けてみてみると、少子化の影響で自然増は縮小傾向にあるものの、1990年代以降、南関東への転入が勢いを増し、社会増が拡大している。この結果、人口増加率は、1990年代後半以降、上昇を続けている(第2-1-2図)。

第2-1-1図 南関東の人口転入超過数
第2-1-1図
(備考) 1. 総務省「住民基本台帳移動報告」、厚生労働省「一般職業紹介状況」により作成。
2. 南関東と地方圏の有効求人倍率の相対比とは、南関東の有効求人倍率を地方圏の有効求人倍率で除した値。

次に、東海の人口変化率の推移をみると、製造業を中心とした景気回復の影響から、2000年代前半より社会増加率が上昇している。人口増加率は、南関東には及ばないものの、2000年代後半に入っても高まっている。

沖縄については、南関東や東海と異なり、社会増は1990年代以降、ほぼ横ばいであり、2000年代半ば以降は社会減に転じているものの、出生率が他地域に比べて高いことから、自然増を主因とした人口増加となっている。

(人口減少に転じる地域の広がり)

次に、2000年代に入り人口減少期を迎えたBグループを近畿、北陸、九州、北関東の順にみることとする。

近畿の人口増加率をみると、1980年代以降、低下傾向にあった。これは、1980年代以降の東京への人口集中が強まるなか、近畿では転出超過が続き、社会増加率がマイナスとなっていたことに加え、出生率の低下の影響から、自然増加率が縮小傾向にあったためである。ただし、自然増加率のプラス幅が社会増加率のマイナス幅を上回っていたことから、2000年代前半には人口はまだ横ばいとなっていた。しかし、2000年代半ばには、自然増加率が縮小し、人口減少に転じた。

北陸と九州は、両地域でほぼ同じような動きがみられる。両地域の1980年代以降の社会増加率の動きをみると、1980年代後半の東京一極集中がみられた時期には、社会増加率のマイナス幅が拡大し、1990年代前半の東京一極集中の沈静化の時期には、社会増加率のマイナス幅が大きく縮小した。しかし、2000年代に入ると、東京や東海への人口流入が進むなか、両地域ともに、社会増加率のマイナス幅が再び拡大した。このように、両地域では、社会減に変動がみられたものの、自然増加率がプラスを維持していたことから、1990年代後半までは、人口は増加で推移した。しかし、2000年代前半に自然増加率のプラス幅が縮小し、2000年代半ばには、マイナスとなったため、人口は減少している。

第2-1-2図 地域ブロック別の人口増減率
第2-1-2図
 
第2-1-2図
 
第2-1-2図
 
(備考) 1. 総務省「国勢調査」、「住民基本台帳人口要覧」、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集」により作成。
2. 05年までの地域ブロック別自然増加率は、上記1の「人口統計資料集」の都道府県別自然増加率に期首人口を乗じて都道府県別自然増加数を算出した後、地域ブロックごとに合計した自然増加数を期首人口で除すことにより算出。
3. 05年までの社会増加率は、上記1に基づく人口増加率と、上記2の自然増加率の差として算出。
4. 05年以降の人口増加率等は、上記1の「住民基本台帳人口要覧」により算出。
5. 地域区分はA。

一方、北関東では、2000年代以降、人口減少となっているものの、近畿、北陸、九州とはやや要因が異なる。北関東では1990年代までは社会増加率がプラスを続けていた。しかし、2000年代前半に社会増加率がマイナスに転じたことから、自然増加率は依然プラスを維持していたものの、人口減少となった。

さらに、北関東、北陸、九州の3地域では、2000年代半ばに入り、自然増加率と社会増加率が共にマイナスとなっている。

(自然減により人口減少圧力が一層強まる地域)

最後に、人口減少が既に1980年代後半、もしくは、1990年代後半から始まっていたCグループの北海道、東北、中国、四国の4地域の動きをみてみよう。

南関東への人口の集中が進んだ1980年代後半に、北海道、中国、四国では、既に人口減少となり、東北では、ほぼ横ばいの状況であった。しかし、バブル景気の崩壊後、南関東の雇用情勢が相対的に地方圏に比べ悪化した1990年代前半には、北海道や中国では再び人口が増加に転じ、東北では人口増加率が上昇した。

四国では、他地域と異なり、1990年代前半にも人口減少が依然として続いたが、社会増加率のマイナス幅が大きく縮小したことにより、人口減少のテンポは緩んだ。その後、四国では、早くも1990年代後半に、死亡数が出生数を上回る自然減の状況が生じていた。

2000年代前半には、これら4地域の全てで、自然増加率と社会増加率が共にマイナスとなり、2000年代後半に入り、東北、四国では人口減少率が拡大している。

以上に述べたように、他地域への転出(純減)による社会減に加え、死亡数が出生数を上回る自然減が、1990年代後半までに、北海道、東北、中国、四国の4地域でみられ、2000年代半ばには、北関東、北陸、九州でもみられるようになった。さらに、三大都市圏にある近畿でも、自然減とはなっていないものの、2000年代半ばには人口減少に転じた。

2000年代前半と2000年代半ば(2004~2007年度)を比較すると、Aグループ(南関東、東海、沖縄)では、人口増加率がさらに高まっている一方、Bグループ(北関東、北陸、近畿、九州)とCグループ(北海道、東北、中国、四国)では、人口減少が続いており、特にCグループにおいては、減少テンポが速まっている(第2-1-3図)。人口増加率を高めている地域がある一方、地方圏を中心に人口減少圧力がさらに強まっている地域もあり、地域間のばらつきが拡大している。

第2-1-3図 人口変化率の比較 (2000年代前半・2000年代半ば)
 
第2-1-3図
(備考) 1. 00-05年は総務省「国勢調査」、04-07年度は「住民基本台帳人口要覧」により作成。
2. 地域区分はA。
3. 人口変化率は、00-05年及び04-07年度ともに年率換算を行った上で比較している。

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