第3章 第3節 4.地域を想う気持ちを名前として残す
近年、地域を想う気持ちを名前として残すことで、地域をサポートする取組みがみられるようにもなってきている。
鳥取県境港市の水木しげるロードでは、妖怪を模したブロンズ像を設置するに当たって、資金不足であったため、04年に1体当たり100万円で全国に寄付を募った。28体の応募に対し、応募が殺到し、瞬く間に希望枠が埋まることとなった19。ブロンズ像にこれを寄贈した人もしくは団体の名前を入れられるという仕掛けが功を奏したと考えられる。人々の一種の名誉欲をくすぐることになったのである。07年1月には、既存の街灯に妖怪の絵を描いた「妖怪街灯」のスポンサーを募集したが、1基当たり3万円と価格が低かったため、個人からの申込も多く、43基の募集に対し、すぐに受付が終了した。ブロンズ像が増えるにつれて、水木しげるロードを訪れる観光客数も飛躍的に増加している(第3-3-4図)。
第3-3-4図 水木しげるロードへの観光客数
(備考) | 境港市観光協会へのヒアリングにより作成。 |
また、東京都が発案した「思い出ベンチ」も同様の仕組みを取っており、都立の公園や霊園などでのベンチの設置に当たって、寄贈した人や団体の名前を冠するようになっている。ここでも1基当たり15万円ないし20万円という価格付けが行われている。これは入園者の目立った増加を意図したものではなく、支出の節約を試みたものであるが、03年度から総計532基のベンチがこの仕組みで設置されており、少なく見積もったとしても、計8,000万円の節約になった計算である。
やや性格は異なるが、スポーツ施設などへの命名権も、地域の持つ資源に対して価格を付ける試みである。日本では2000年代前半から導入され、応募主体は地方自治体のみならず、民間企業にまで広がっている(第3-3-5表)。
第3-3-5表 ネーミングライツの具体例
施設 | 場所 | 始期 | 期間 | 契約額 | 応募主体 | スポンサー |
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サッカー競技場 | 東京都調布市 | 2003年3月 | 5年 | 12億円 | 東京都 | 食品製造会社 |
野球場 | 兵庫県神戸市 | 2005年2月 | 3年 | 2億円 | 神戸市 | 航空会社 |
総合競技場 | 神奈川県横浜市 | 2005年3月 | 5年 | 23.5億円 | 横浜市 | 自動車製造会社 |
ドーム球場 | 福岡県福岡市 | 2005年3月 | 5年 | 25億円 | 民間 | 情報通信会社 |
サッカー競技場 | 千葉県千葉市 | 2005年8月 | 5年半 | 4.5~5.3億円 | 千葉市 | 電気機器製造会社 |
総合競技場 | 宮城県仙台市 | 2006年3月 | 3年 | 2.1億円 | 仙台市 | 電気設備会社 |
ドーム球場 | 大分県大分市 | 2006年3月 | 3年 | 2.1億円 | 大分県 | 石油会社 |
ドーム球場 | 埼玉県所沢市 | 2007年1月 | 5年 | 25億円 | 民間 | 人材派遣会社 |
(備考) | 各社ホームページ、各社へのヒアリング、新聞等により作成。 |
19. | 05年にも1体募集。 |