第3章 第1節 3.観光資源を創造する試み

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温泉などの自然資源や神社・仏閣といった、従来から観光資源として認知されているものに加えて、最近では料理、ドラマ・映画、地元出身の作家等実に様々な分野に渡って、地域資源を掘り起こし、磨き上げようという取組みがなされている。伝統的な観光地でなくても、そうした観光資源が深化すれば、観光地になれる可能性を秘めていると考えられる。

旅の楽しみの1つにグルメがあるが、讃岐うどんや長崎ちゃんぽんのような、すでに固有名詞化した郷土料理に加えて、地域内では日常的に食べられていても、全国的な知名度には至らないようなご当地料理を売り出していこうという動きも起こっている。「B-1グランプリ」(B級ご当地グルメの祭典)は、「B級ご当地グルメの祭典実行委員会」主催により、07年6月に開催された。2回目ながら、21市(11市は2回目から参加)のご当地グルメが出展され、2日間で25万人を集客した。

従来より、大河ドラマの地域経済への効果は知られている4。しかし、1.そもそも、地元出身者に1年間の大河ドラマ放映に値するような歴史的人物が存在しているか否か、2.存在していたとしても、放映を決めるのは地元ではなく、結局は外部頼みになること、3.放映中は確実に観光客の増加は見込めるものの、放映終了後には必ずと言っていいほど反動が来ることなど、その効果に期待するには様々な制約がある。

こうした中で、歴史的な人物に限らず、地元出身の作家や漫画家など地域の人的資源を観光の目玉にしようとする自主的な取組みも、各地でなされている。山形県の鶴岡市では、地元出身の作家藤沢周平氏原作の映画「蝉しぐれ」のオープンセットなどが観光客を集めたことから、没後10年となる07年度中に、同氏の記念館の着工を開始する予定である。鳥取県北栄町では、漫画家青山剛昌氏の記念館を07年3月に開館したところ、予定より5日早く入館者数1万人を達成するなど好調である。

さらに、地域をロケ地や舞台にした日本映画も見逃せない5。ここ2、3年の作品では、伝統ある映画雑誌のランキングでは、04年度3位の「下妻物語」(茨城県下妻市)、05年度同8位の「男たちの大和/YAMATO」(広島県呉市)、06年度同1位の「フラガール」(福島県いわき市)が挙げられる。地元がロケ地になれば、撮影隊や見物客による直接的な効果(宿泊費や飲食費)に加えて、地元の知名度向上やロケ地観光も期待できる。そうした地域の映画作りの支援のために、全国的にフィルム・コミッション(FC)6を設立する動きが広まっている7。全国フィルム・コミッション連絡協議会の加盟FCが撮影支援した作品(日本で公開された長長編劇映画)は年々増加しており、04年の79作品に対して、06年には117作品となった(全体の公開作品に占める割合も04年の68.7%から06年には73.6%と上昇)。


4.
山梨県北杜市では、07年の大河ドラマ「風林火山」との連動企画として、「風林火山館」を開館させた。開館から半年で入場者数が38万人となり、入場者数の目標値(27万人)を大幅に上回った。また、甲府市で開催中の「風林火山博」は入場者数が40万人を突破し、採算ラインの20万人をすでに上回っている。また、山梨県のお土産品として知られる「信玄餅」の出荷量は、前年を20%上回っている(07年7月31日現在)。
5.
千葉県木更津市が舞台となり、カルト的な人気を誇ったテレビドラマ「木更津キャッツアイ」(02年)は、03年及び06年に続編が映画化されている。
6.
映画等のロケを側面から支援する組織。道路占有許可等の行政への許認可手続き、エキストラの募集や地域でロケに使える場所を紹介するなどの仕事を行う。
7.
07年9月10日現在、97団体が全国フィルム・コミッション連絡協議会に加盟している。

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