第3章 第1節 4.観光資源を顕在化させるための試み

[目次]  [戻る]  [次へ]

日経リサーチの地域ブランド指数のうち、「訪問意向」8は、人々が都道府県に対して持っている現在のイメージを数値化したものとも言える。1位北海道、2位沖縄県、3位京都府、4位鹿児島県、5位大阪府と、実際の観光客数とはいささか異なる傾向がみえる(第3-1-4表)。「訪問意向」を都道府県の潜在力ととらえると、この数値が高いところは、観光客数の増える可能性のあるところとみなすことが出来る。潜在力と実際の観光客数の差異は、未だに資源が十分に活用されていない場合や、活用したくとも障害があってできない例も存在すると考えられる。

第3-1-4表 訪問意向

順位 都道府県名 スコア
1 北海道 94.5
2 沖縄県 93.8
3 京都府 88.4
4 鹿児島県 84.7
5 大阪府 79.3
6 東京都 78.2
7 長野県 77.8
8 兵庫県 77.3
9 長崎県 77.1
10 神奈川県 76.2
11 福岡県 75.9
12 奈良県 73.1
13 静岡県 71.6
14 広島県 70.9
15 石川県 70.3
16 青森県 69.8
17 愛知県 66.9
18 高知県 66.8
19 千葉県 65.2
20 山梨県 64.7
21 新潟県 64.5
22 宮崎県 64.0
23 富山県 63.5
24 香川県 63.0
順位 都道府県名 スコア
25 秋田県 62.4
26 熊本県 62.3
27 岩手県 61.8
28 宮城県 61.0
29 鳥取県 60.4
30 和歌山県 60.2
31 岡山県 59.9
32 大分県 59.8
33 愛媛県 59.3
34 山口県 58.0
35 岐阜県 57.8
36 徳島県 57.8
37 山形県 57.6
38 三重県 57.0
39 福井県 56.6
40 島根県 55.2
41 滋賀県 54.0
42 福島県 52.3
43 佐賀県 50.4
44 埼玉県 47.0
45 群馬県 46.3
46 栃木県 43.0
47 茨城県 41.2
(備考) (株)日経リサーチ「2006地域ブランド戦略サーベイ」により作成。

従来から、自然資源を中心に、○○100選のようなものは選出されている。これらについて、単純にある/なしで点数化して(複数個ある場合にはその数)、総計すると、長野県と北海道が圧倒的に多くなっている。実際の観光客数と比較すると、この面からも資源力を十分に活かしきれていない県が浮かび上がってくる(第3-1-5図)。

第3-1-5図 百選ものデータと宿泊観光者数

第3-1-5図

(備考) 1. 環境省選定の名水100選等自然資源に係る100選(18種類)、国土交通省「宿泊旅行統計調査」により作成。
2. 百選ものデータは、100選資源の有無により点数化した値。複数個ある場合はその数。 宿泊観光者数は、06年6-8月及び07年1-3月分を加算した。

世界遺産への登録も観光客を増やす大きな要因になり得るものである。ユネスコの世界遺産登録に向けた暫定リストに入るところからメディアの露出が多くなり、知名度が上昇するにつれて、観光客数も増加してくる。事実、2000年以降に世界遺産登録されたものをみると、いずれにおいても、登録後の観光客数は登録される1年前の数を上回っている。

また、四国を例に挙げると、観光目的の宿泊者数(06年6-8月)は全国で4県とも40位台と振るわない。一方で、宿泊旅行者の意識調査によると、地元ならではのおいしい食べ物が多い県として、高知県が1位、香川県が4位に入っている。徳島県の阿波踊りは集客数が約130万人と、全国各地の夏祭りの中でも有数の規模を誇り、四国以外の住民の認知度は99.1%と非常に高いが、実際の体験度は8.3%とその差は極めて大きい(第3-1-6表)。これらの差を少しでも埋めることが出来れば、四国以外からの集客数ももっと増加し、祭り全体で消費される金額も増加し、地域経済を盛り上げることが出来るであろう。

第3-1-6表 四国観光資源の認知度・体験度

(%)
観光資源 四国外住民の認知度 (1) 四国外住民の体験度 (2) ギャップ (1-2)
讃岐うどん 99.2 46.0 53.2
阿波おどり 99.1 8.3 90.8
四万十川 97.9 20.8 77.1
鳴門の渦潮 96.9 40.2 56.7
四国八十八ヶ所霊場巡り 95.9 5.2 90.7
高知「かつおのたたき」 94.7 28.5 66.2
松山城 90.7 26.4 64.3
金刀比羅宮 88.1 37.2 50.9
道後温泉 86.2 32.5 53.7
坂本龍馬像 84.6 30.1 54.5
(備考) 1. 四国経済連合会「四国に観光資源の認知度・体験度並びに四国に対するイメージアンケート調査」により作成。
2. 認知度とはその観光資源を「知っている」と回答した人の割合、体験度とはその観光資源に 「行ったこと(四国で食べたこと)がある」と回答した人の割合。

8.
日経リサーチが、全国400人程度のモニターに対して、その土地について、「訪問してみたいか」どうかを尋ねて、数値化したもの。

[目次]  [戻る]  [次へ]