第2章 第2節 4.偏在のみられる地方税収

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国と地方の歳入・歳出に関して、歳入(税収比率)は国:地方=6:4、歳出(業務量の比率)は国:地方=4:6となっているように、地方の歳出は地方税収だけではまかなえず、地方交付税や国庫支出金といった制度を用いて、補填が行われているところである。

しかも、税収全体の4割に過ぎない地方税収が、都市圏、しかも東京都に偏りすぎているいった傾向がみられ、地方税自体の配分を見直すべきという意見も強い。そこで、地方税収の地域別割合を、県民所得や人口、事業所数など、地域の経済力を測る上でのいくつかの指標と比較してみると、地方消費税は民間最終消費の都道府県間の支出割合とほぼ同程度となっているのに対して、個人住民税は県民所得の都道府県間の割合に比較して、若干都市圏においてより多く徴収されている。

偏在が際立っているのは法人2税である。法人2税は都市圏の中でもとりわけ東京に偏在しており、04年度には東京が全体の25.7%を占めている。東京の県民所得は全体の14.8%、人口は9.8%、事業所数は11.6%であり、経済規模を示す様々なデータと比較しても際立って高い(第2-2-16図)。

第2-2-16図 地方税収の偏在性

第2-2-16図

(備考) 内閣府「県民経済計算」、総務省「国勢調査」、「人口推計」、「地方財政統計年報」 経済産業省「事業所・企業統計調査」により作成。地方消費税は清算後。

法人2税は、法人事業税の一部に外形標準が導入されてはいるものの、法人所得に対する課税という性格がなお強い。そこで、(株)帝国データバンクの企業概要ファイルを基に、着実に売上を伸ばしている企業(以下、「成長企業」と呼ぶ)を抽出して地域別に企業数を比較してみる7。05年をみると、成長企業数のうち、東京が27.6%、大阪が11.6%、愛知が8.0%を占めており、これは法人2税のシェアとかなり近い傾向にある。同様に、2000年においても、成長企業数では東京が30.1%、大阪が9.8%、愛知が4.5%なのに対して、法人2税は東京が27.3%、大阪が8.5%、愛知が7.1%となっており、成長企業と法人2税の東京への偏りがみられる(第2-2-17図)。こうしたことから、04年度の都道府県別の1人当たり地方税収額の変動係数は21.5と、1人当たり県民所得の変動係数である15.6よりも高くなっている(個人住民税の変動係数は27.1、法人2税の変動係数は45.5)。東京を除いて変動係数を試算すると、15.9にまで縮小する(法人2税の変動係数も45.5から30.1まで縮小)(第2-2-18図)。このことは、東京都への法人2税の集中がいかに大きいかを物語っている。

第2-2-17図 成長企業数の偏在

第2-2-17図

(備考) 1. (株)帝国データバンクの企業概要ファイルを用いて内閣府にて作成。
2. 「最新年の売上高が5億円以上」、「最新期と前期の2期(2年)連続して売上高が10%以上伸びている」、 「従業者1名以上」、「法人」の条件を満たす企業を成長企業として抽出。

第2-2-18図 地方税収と1人当たり県民所得の変動係数(04年度)

第2-2-18図

(備考) 内閣府「県民経済計算」、総務省「地方財政統計年報」により作成。

7.
抽出条件は右のとおり。1.各企業の決算期において、最新期と前期の2期(2年)連続で売上高が10%以上伸びていること、2.法人であること、3.最新決算期において売上が5億円以上であること、4.従業員数が1名以上であること。

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