第2部 第2章 1.公的部門の効率性の追究
第1章で簡単にみたように、公的部門の比率の高いところは回復に遅れがみられており、今後、地域が更なる成長を遂げるためには、公的部門から民間部門へ、いわゆる「官」から「民」へ軸足を移していくことが必要である。
それとともに、公的部門の効率化を進めることで、公的部門の生産性を高めることが重要なのは言うまでもない。これには「ヒト」と「カネ」の両面が考えられる。「ヒト」の効率化は、そもそも人員削減を行うことが考えられるが、現行の法体系において、民間企業の行っているような、リストラによる人員削減は難しいかもしれない。このため、人事体系を見直して、現下の重要課題に対応する部署の人員をいかに柔軟に配置することが求められている。「カネ」の効率化は、結局、限られた予算をいかに効率的に使用するかである。重要性を失った事業を思い切って廃止してしまうことに加え、現在行っている事業の1つ1つについて、単価を下げる仕組みを考えることも必要である。その中で、給与体系の見直しを行い、人件費の抑制に努めることも課題となっている。
このような「効率化」を進めるためには、公的部門において民間部門の考え方を導入する仕組みが以前から採られて来た。80年代には、いわゆる3公社(国鉄、電電公社、日本専売公社)の民営化への道筋がつけられた。90年代初めにかけて、観光振興などを目的として、公共団体と民間企業の双方が出資する第3セクターの設立が相次いだものの、責任の所在が明確でなかったため、多額の負債を抱えて破綻するケースもでてきている。
こうした反省すべき点も踏まえて、90年代後半以降、公共サービスへの民間部門の参入を確保するための制度作りが急速に進んだ。99年には、民間資金等の活用による公共施設等の整備等に関する法律(いわゆるPFI法)が成立し、民間の資金、経営能力及び技術能力の活用などにより、効率的・効果的に社会資本を整備する仕組みが整った。
また、03年9月に地方自治法の一部を改正する法律の施行に伴い、公の施設の管理に関する「管理委託制度」が改正、「指定管理者制度」が創設され、以下の点が新しく可能となった。
- 民間、NPO、その他団体が、議会の議決を経て公の施設1の管理を行うことも可能。
- 指定管理者は条例の定めにより、施設の使用許可や利用料金の徴収など、処分に該当する業務を含む公の施設の管理を行うことができる2。
○指定管理者制度と従来の管理委託制度との主な違い | |||||||||||||||||||||
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なお、a) 事業者が施設を一括運営・管理できないことや、利用料金を自ら収受できないことによる煩雑業務発生(公共部門への収納業務等)等、地方自治法上の制約から民間ノウハウを充分発揮できず、VFM(バリュー・フォー・マネー)実現が阻害されていたり、b)事業規模が大きく対象期間も長期化する事業が多く、中小事業者には参入が難しく、そのノウハウを充分活用できなかったりするというデメリットもあったため、地方自治法の改正により、公の施設の設置目的を損なうことなく、適切な管理を確保した上で民間の能力を活用し、住民サービスを向上させつつ、経費節減を図ることとしている。
指定管理者制度の導入までの流れは以下のようになっている。
- a) 施行日時点で既に管理委託を行っている公の施設
経過措置として、施行日から起算して3年を経過する日(06年9月1日)までの間は、従来の管理委託制度も可。期間中に「指定管理者」・「直接管理」のいずれか決定。 - b) 新設又は施行日時点で直接管理を行っている既存施設で管理を委ねる公の施設
管理を委ねる時点から指定管理者制度を導入
さらに、規制改革・民間開放推進会議における議論を経て、国や地方公共団体が実施する公共サービスに関し、官と民が対等に競争し、質及び価格の両面で最も優れた者にそのサービスの実施を担わせる仕組みである「官民競争入札」制度の導入等、公共サービスの不断の見直しを行っていくための制度として、06年通常国会で「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(いわゆる「市場化テスト法」)として、成立・施行(06年7月)された。07年度からは国民年金保険料収納事業や職業紹介サービスなど9事業を対象に実施することとなっており、地方自治体レベルでも導入に向けた検討が進んでいる。中でも和歌山県は都道府県ではじめて、年内に完成する県庁南別館(仮称)の委託について、市場化テストを実施することとしている。
このほか、庁舎の清掃や夜間の警備、ゴミ収集等への外部委託も進んでいる。
1. | 住民の福祉を増進する目的をもってその利用に供するために地方公共団体が設ける施設(地自法§244第1項)。なお、道路法、河川法、学校教育法等個別の法律において公の施設の管理主体が限定される場合には、指定管理者制度を採ることができない。 |
2. | 使用料の強制徴収や不服申し立てに対する決定、行政財産の目的外使用許可など、法令上、地方公共団体あるいは長に専属的に付与された行政処分は除く。 |