第1章 第1節 緩やかな持ち直しの状況が続いた地域経済

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第1節 緩やかな持ち直しの状況が続いた地域経済

1. 景気はおおむね横ばいから持ち直しの動きへ

全国的な経済動向は、2002年1月に景気の谷を通過し、2002年から2003年前半まで緩やかな回復局面が続いている(1)。2002年前半にはアメリカ向けとアジア向けの輸出が増加したことなどから、鉱工業生産の持ち直しが続き、景気は底入れから持ち直しに向かった。

ところが、2002年後半から年末にかけて、完全失業率の上昇、賞与の減少など雇用と所得をめぐる環境に厳しさが増し、株式市況も6月以降低下基調に転じたことなどから、持ち直しの動きは緩やかとなった。さらに、2003年に入ると、欧米景気の減速に加えて、イラク戦争とSARS(重症急性呼吸器症候群)問題など国際的なマイナス要因も重なり、国内の景気は一時的に弱含んだ。

政府は、経済活性化や将来の発展につながる分野に重点配分を行った2003年度予算の編成や中央・地方合わせて1.8兆円程度の先行減税などを実施することにより、2002年度補正予算と併せ、年度を通じた切れ目ない対応を行ってきた。さらに、都市再生や、構造改革特区を始めとする規制改革などの取組を進めてきた。また、2003年5月には「証券市場の構造改革と活性化に関する対応について」をとりまとめたほか、6月には大手銀行に対する資本増強を行うことを決定した。日本銀行においても、当座預金残高目標の引き上げ、長期国債買入れの増額、資産担保証券の買い入れなど金融政策を機動的に実施した。こうした対策に加え、SARSなどの問題もほぼ終息したことから、2003年央までに、景気は横ばい状況を脱し、再び持ち直しに向かった。

2. 大部分において持ち直しの動きが続く地域経済

地域経済の動向をみると、2002年度の上期には、多くの地域において景気は下げ止まりから持ち直しに向かっていた(第2-1-1表)。輸出の増加による鉱工業生産の持ち直しを主な理由として、同年5月の「地域経済動向」においては、2年11か月振りに11地域すべてについての景気判断を上方に修正した。さらに、同年8月においても、北海道、四国、沖縄の3地域を除く8地域について景気判断を上方に修正した(2)

2002年11月においては、鉱工業生産の増勢がやや鈍化し、雇用・所得環境の低調なことを受けて個人消費が近畿などでやや弱含んだことから、南関東と近畿の2地域について判断を下方修正した。他地域より回復のやや遅れていた北陸については個人消費の回復などから上方修正したものの、残る8地域の景気判断は据え置きとなった。

2003年2月においては、欧米向け輸出が弱含んだことなどから電気機械を中心に鉱工業生産が弱い動きとなったため、東北、四国、近畿、九州、中国について、また個人消費がやや弱含んだことなどから北関東について判断を下方修正し、計6地域について判断を下方修正した。一方、観光の増加などにより北海道と沖縄の2地域については判断を上方修正した。

2003年5月においては、鉱工業生産の持ち直しなどにより北関東、南関東、九州について、個人消費の持ち直しにより近畿について景気判断を上方修正し、計4地域について上方修正した。一方、東海と北陸については鉱工業生産が緩やかに減少したことなどから、北海道については雇用情勢がより厳しくなったことなどから下方修正し、計3地域について下方修正した。このように、鉱工業生産の動きを主因として、景気の動きに地域差がみられた。

2003年8月においては、自動車関連の生産と住宅投資が増加した東海について判断を上方修正したのに対し、鉱工業生産が緩やかに減少し雇用情勢の改善が遅れている中国について判断を下方修正したが、他の9地域については前回の判断を据え置いた。

このように、地域の主力産業の動きなどに影響されて、景気は地域ごとにやや異なる動きをみせているものの、輸出と設備投資の増加などにけん引され、多くの地域において持ち直しの動きが続いている。

(1) 動きに地域差のみられた鉱工業生産

鉱工業生産は、2001年にすべての地域において前年から減少した。2002年に入るとほとんどの地域において下げ止まり、年央までには持ち直しをみせたものの、同年10-12月期から2003年前半にかけて多くの地域において増勢が鈍化するなかで、地域別の動きに違いがみられた(第2-1-2図)。

地域別の鉱工業生産をみると2002年には東海、中国、沖縄、北海道の4地域において前年比増加したのに対し、東北においては横ばい、関東、近畿、北陸、九州、四国の5地域においては前年比減少するなど、地域別の動きに違いがみられた。四半期毎にみると、2002年1-3月期から2003年4-6月期にかけて前期比増加し続けた地域は東海であり、6四半期連続して増加した。また、九州、近畿、関東、東北の4地域においては1四半期を除いて増加を続けた。一方、北陸、中国、北海道の3地域は2003年度に入り緩やかに減少し、四国は一進一退の状況となった。

東海の鉱工業生産は、自動車が国内向け販売・輸出ともに比較的堅調であることから自動車とその関連産業の生産が底固く推移している。また、九州と東北においてはデジタル家電製品や自動車の生産による半導体への需要が増加し、電気機械の生産が回復している。近畿と関東においては、設備投資の増加による一般機械の回復と携帯電話関連生産の増加、そして素材業種を中心とする輸出増加の効果がみられる。

特に、九州、中国をはじめ多くの地域において、アジア向け輸出が鉱工業生産をけん引している。アジア向け輸出は、2003年前半にSARS 問題の影響を受けて減少したが、その後回復し、多くの地域の生産にその効果が現われている。

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