第3章 産業集積のメリットと地域経済の成長に関する統計的検証 3.製造業の成長と都市圏全体の成長
3. 製造業の成長と都市圏全体の成長
前述したとおり、90年代においては製造業のほとんどの業種、特に特化係数第1位の都市圏において従業者数が大きく減少したが、ここで、各都市圏における製造業全体の雇用の動向、製造業の雇用の動向と都市圏の全産業の雇用の動向の関係について検証しておくことにする。
第1-3-7図は各都市圏における製造業従業者数の増減率と全産業従業者総数増減率の関係を都市圏規模別にプロットしたものである。268都市圏すべてについてプロットした左上の図をみると、製造業従業者数増減率が減少した都市圏の数が、それが増加した都市圏の数よりも圧倒的に多くなっていることが見てとれる。製造業従業者数が20~40%の大幅な減少率を記録した都市圏も数多くみられる。一方で、製造業従業者数の増加した都市圏もいくつか存在しており、全体として、製造業従業者数と全産業従業者総数の増減率の間に正の相関関係がみられる。
また、各都市圏における製造業従業者数の増減と、全産業従業者総数の増減の関係について都市圏規模別に整理すると、以下のような特徴がみられる(第1-3-8表、第1-3-9図)。
- 製造業従業者数、全産業従業者総数がいずれも増加した都市圏は人口25万人未満のみでみられ、その割合は人口規模が小さくなるほど拡大する。
- 製造業従業者数、全産業従業者総数がいずれも減少した都市圏はどの規模の都市圏においてもみられるが、その割合は人口100万人以上の都市圏を除くと人口規模が小さくなるほど拡大する。
- 製造業従業者数が増加したにもかかわらず、全産業従業者総数が減少した都市圏は皆無である。
- 製造業従業者数が減少し、全産業従業者総数が増加した都市圏はどの規模の都市圏においてもみられるが、その割合は、人口100万人以上の都市圏を除くと、人口規模が大きくなるほど拡大する。
以上からは、製造業の雇用の成長と都市圏全体の雇用の成長の間には相関関係がみられ、特に、人口規模の比較的小さい都市圏においては、製造業従業者数、全産業従業者総数のいずれについても増加を記録した都市圏がいくつかみられるなど、製造業の成長が都市圏全体の成長にとって依然として重要な役割を果たしているとみることができる。