第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例8]
[事例8]株式会社T(東京都)
その他の卸売業
[産業集積のメリット]
- 購買力の高い購買者層が集まりやすい環境
- 競争によるデザイン力などの向上
[企業概要]
- 資本金4,800万円、従業員数30→33→48人(2001→2002→2003)
- 売上高2,045→3,130百万円(53%、2001.5→2002.5)
シルバーアクセサリーの卸売・小売と併せて、香水、サングラス、時計などの装飾品を扱っている。取り扱っているブランドには、自社ブランド及び日本総発売元となっている海外ブランドがある。
96年8月、長年アクセサリーの製作に携わってきた現社長が、自社及び輸入ブランドの販売を行ってきた個人経営の店舗を法人化して設立した。
設立当時は、男性用銀製装飾品(シルバージュエリー)が急速に広がりつつあった時期であるが、まだ新しい分野だったため輸入企業は小規模で、店舗も上野のアメ横などにみられるような小規模なものが多かった。
当初、雑誌広告を通じた通信販売も行ったものの、有名輸入ブランドの販売が中心で、同業他社と同様に小規模で独自性を出せずにいた。やがて彫金技術を持つ代表が、海外ブランドには無い日本仕様の製品を製作したことにより、自社ブランドが消費者に次第に認められ始めた。また、雑誌社とタイアップした広告を掲載してゆくことによって認知度が高まった。そして、流行に敏感な顧客を集客する力のある専門店や百貨店のなかに店舗を持つことによって販売力が一段と高まり、同じ業種でも大手企業の一つにまで成長することができた。
これまでの業績拡大に貢献してきたメンズジュエリーは、ブームが一巡して売上の伸びは落ち着いてきているが、レディースブランドをタイミング良く投入することによって、2002年5月期の売上高は31億円と前期比で53%増加している。
本店を構えている銀座周辺は、海外及び国内の有名ファッションブランドショップが集中しており、この集積効果によって集客力が高まっている。特に、高級ブランドショップが集中していることによって、高品質・高単価商品の販売が伸び、売上・利益の増加に貢献している。また、近隣の販売店との競争を通じて、独自性の高いデザインを開拓する力を含む商品企画力などが向上しており、国内のみならず海外ブランドにも対抗できるまで競争力を伸ばしている。
今後も、消費者の一般ニーズに薄く広く対応して急速な業況拡大を目指すのではなく、し好性の高い複数のニッチニーズに細かく対応していくことで、収益性の向上と安定した企業経営を目指している。