第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例7]

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[事例7]株式会社S(埼玉県三郷市)

倉庫業

[産業集積のメリット]

  • 自社倉庫で対応できないときに、近隣の同業企業と倉庫スペースを融通

[企業概要]

  • 資本金1,000万円、従業員数19→25→32人(2001→2002→2003)
  • 売上高800→1,000百万円(25%、2001.4→2002.4)

ダイレクトメール発送作業

倉庫保管、こん包、配送代行など、物流にかかわる各種業務を手掛けている。

取扱品は、各種印刷物、カタログ、化粧品類、日用品など多岐に渡っており、得意先の要望によっては、保管、こん包、発送まで一貫して手掛け、また、顧客に対しトータルな物流システムの提案も行っている。

設立当時、本店のあった埼玉県越谷市周辺は、東京外かく環状道路の開通に伴って東京都内、千葉県内への利便性が増しており、多くの企業が物流拠点を置く地域となりつつあった。さらに、大企業を中心に経費節減を進める一環として、アウトソーシングの活用により物流経費の圧縮をねらう動きが定着し始めていたことも追い風となっていた。

また、保管、運送などほとんどの実務を外部に委託していたが、外部委託では緊急時に迅速な対応ができないことに加え、得意先の信頼を確保するために、自社で倉庫などのハードを用意せざるを得なくなった。しかし、倉庫はすべて借用物件で対応することができたので、自社の経営基盤の成長と釣り合った事業拡大を進められたことが経営に大きく貢献した。

売上が伸びた要因としては、1.近年、企業が顧客開拓のためにDM(ダイレクトメール)を強化しているのに加えて、商品サンプルなどを併せて発送するケースが増加していること、2.通販会社が業容を拡大していること、3.DM ラッピングマシンの導入によって高品質・短納期で提供できる体制を整えられたことの3点が挙げられる。

現在、本店は埼玉県三郷市にあるが、周辺の草加市、八潮市などの地域には、倉庫業、こん包業を営む企業が多く立地している。このため、各企業が自社倉庫で保管等の対応ができないときには、近隣の倉庫会社と倉庫スペースの融通を行うなど、相互補完が可能な連携関係ができている。また、三郷市内には大手物流企業の拠点が数多く所在しているため、運送にかかる時間やコストを削減できるという集積のメリットもある。

会社の事業目的として、「物流をソフトとハードの両面からサポートする」ことを掲げていることもあり、今後、特にソフト面でのサービスを拡充していきたいと考えている。具体的には、カスタマーセンターの開設、自社で運用している個人向け発送データベースシステムの顧客への提供、受発注システムの開発・販売などを検討している。

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