第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例6]
[事例6]株式会社F(新潟県西蒲原郡吉田町)
金属製品製造業
[産業集積のメリット]
- 同じ業種の企業などと技術等の情報交換が行いやすく、それを新製品開発に活用
[企業概要]
- 資本金2,000万円、従業員数28→35→46人(2000→2001→2002)
- 売上高706→962百万円(36%、2001.8→2002.8)
業務用器物、電磁調理用鍋の製造販売(売上の8~9割)と、洋食器卸売(同1~2割)を行っている。ここ2、3年は、電磁調理用鍋が主力である。
設立の経緯は、金属洋食器輸出入販売を目的として設立された企業が、95年7月に倒産した企業の営業基盤、従業員を引き継ぐ形で現業を開始したものである。
当初は、経済成長率の低下に加え、円高とともに輸入品が台頭するなど、地域の産業として苦しい状況が続いたが、営業基盤をそのまま引き継いだ形であったため、販路、需要はある程度確保できていたことが、企業経営にとって大きな要素となった。
売上の伸びた要因としては、10数年前から少しずつ扱ってきたIH クッキングヒーター対応の器物の需要が大きく伸びたことがある。これには、近年のオール電化住宅の増加や、マンションなどで台所にIH クッキングヒーターを置くケースが増加してきていることが関係している。
会社は、新潟県燕市の西隣にある吉田町にあるため、近隣に燕市の工業集積があり、金属器物メーカーや卸売企業が多数立地している。このため、同業企業などと情報交換が行いやすく、それを新製品開発に役立てている。また、交通アクセスも良好で、納品などの際に物流コストの低減に役立っている。
商品については、開発費などのコストが大きく、価格の引き下げなどは考えていない。輸入品などに比べてやや割高になるが、いわゆる消費の二極化が進む中、中級品以上に対するユーザーの需要は相応に見込めると考えている。また、高級感を持たせるためにデザイン面にも気を使っており、外注ながらも専属のデザイナーを配し、調理師専門学校で実際に使用してもらった反応を聞くことで、料理専門家が使用するような調理器具風に仕上げる努力を行っている。なお、商品の大半がSGマーク(29)の認定を受けており、こうした面からも他社製品や輸入品との差別化を図る努力をしている。