第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例5]
[事例5]D 株式会社(新潟県白根市)
金属製品製造業
[産業集積のメリット]
- 高い技術を持った外注先から、自社製品に使われる個々の資材を早く効率よく調達
[企業概要]
- 資本金41億円、従業員数313→315→326人(2001→2002→2003)
- 売上高11,313→12,554百万円(11%、2001.3→2002.3)
気化式石油ストーブのパイオニアで、業務用石油ストーブでは国内トップシェアを誇る企業である。64年4月に経営破たんに陥った企業で専務の任にあった現会長が、債権者の協力を得て同社の負債整理とユーザーに対するサービスを目的として設立した。
当時は、大手家電メーカーの参入や海外製品の流入、過剰生産、暖冬などから、石油燃焼器具専業メ―カーの中には倒産する会社もあるなど業界の環境は厳しく、しかも引き継いだ一般債権者に対する債務を抱えての、言わば水面下からのスタートであった。元従業員を再雇用した上で、引き継いだ在庫や原材料などをもとに製品の修理販売、補修部品の販売、アフターサービスを行って債務の弁済に充てた。
その後、新型の石油バーナーの研究開発を行うとともに、現行製品に改良を加えた新製品の販売が軌道に乗ったこともあって現在の経営の礎が築かれた。また、90年ごろから代理店などを通さない製造直販の形態に移行してきたことによって収益力を高めてきた。
2003年3月期には、主力である石油ファンヒーターの新商品全機種に待機時消費電力の低減機能を持たせたほか、マイナスイオン発生装置を搭載した新機種の投入などによって、売上は更に増加している。ただし、主力の石油ファンヒーターの市場は既に成熟しており、今後大幅な伸びは難しいため、現在、生ごみ処理機などの環境機器の製品開発に力を入れている。
現在、本店を置いている新潟県白根市は、金属加工の産業集積として全国的に有名な燕・三条地区に隣接した地域である。このため、プレス、メッキなどの高い技術を持った協力企業や資材のサプライヤーが20km圏内に集まっており、自社製品に使われる個々の資材を早く効率よく調達できるという集積のメリットがある。今後、輸送経費を始め各種コストの軽減や価格競争力の向上、技術開発力の強化が期待できると考えている。
今後もユーザーモニターを使った追跡調査、独自に行っている市場調査、販売店からの情報を商品開発に反映するなど、ユーザー本位のものづくりを進めていく。