第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例4]
[事例4]H 情報システム株式会社(北海道札幌市)
情報サービス・調査業
[産業集積のメリット]
- 地域の同業種中小企業で事業組合を結成し、共同受注、共同提案を実施
[企業概要]
- 資本金4,000万円、従業員数82→112→151人(2001→2002→2003)
- 売上高794→1,432百万円(80%、2000.8→2001.8)
販売管理、財務・経理、運輸管理、工事原価計算などのビジネスソフトの受託開発や、パッケージソフトの開発を行っている。
84年の創業当時は、まだコンピュータに対する一般ユーザーの認識が薄く、また大手企業のシステムは本社が決定する状況だった。そこで、地域の中小企業にターゲットを絞り、「事務の省力化やタイムリーな売上・財務管理が可能」というコンピュータ導入の有効性を、一軒一軒説明して回るという地道な営業展開を行った。当時、銀行は企業信用力を極めて重視し、IT関連企業に対する理解不足もあって融資を受けられなかったのに加え、通常は代金が後払いであったため、開発開始から導入までの約半年間入金がなく、資金繰りには非常に苦労した。
このため、ユーザーやメーカーに状況を説明して先払いの契約を増やす努力を行い、また同業の中小企業との連携によって受注件数を増やして資金の回転サイクルを早めるという対応を行った。さらに、コンピュータをすべてリース契約にすることで、設備投資費用を極力圧縮し、その分を人件費に回していった。こうして、金融機関に頼らずに事業を継続していく方法を開拓した。
また、10年前から地域内にある同じ業種の中小企業各社と事業組合を結成し、共同受注、共同提案を実施している。中小企業が1つのグループとなることで、技術力、営業力、企画力などを相互に補完することを目指している。現在、そのグループ企業9社と重点協力会社10社の間で連携して業務を行っており、それぞれの得意分野、技術者の能力の違い、分野別の営業手法などについての情報交換を行うことによって共同受注体制を確立し、医療機関向けのソフトウェア開発など様々な案件に対応してきた。
売上が伸びた要因は、上に述べた組合による共同受注に加え、メーカー、ユーザー直販、パッケージソフト販売、システム機器販売など、分野別のバランスを考えて受注を進めたことや、伸びそうな分野や技術を常に見据え、先行投資(社員教育など)と実務経験の蓄積を積極的に行い、その分野や技術が主流になった時には優先的に受注できたこと、自社の都合よりも顧客の要望を優先し信頼を得たことなどが挙げられる。
現在、「北海道医療・介護・福祉マップ」の企画・開発を行っている。これは、医療、介護、福祉を軸としてサイト上にMAP システム(地図情報)を展開し、その他行政情報、地域情報もあわせて提供するものであり、患者と医療施設や医師の情報交換ができることによる、適切な医療サービスの供給を目指している。