第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例12]

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[事例12]株式会社N(山口県豊浦郡豊北町)

輸送用機械器具製造業

[産業集積のメリット]

  • 繁忙期には企業間で人材を派遣するなど技術の共有を実現
  • 調達が困難な取引関係のないメーカーの資材を互いに調達し合える協力関係

[企業概要]

  • 資本金5,000万円、従業員数42→42→45人(2001→2002→2003)
  • 売上高728→850百万円(17%、2001.3→2002.3)

FRP製 旅客船

山口県内最大のFRP(強化プラスチック)製船舶の製造企業である。定期旅客船、警備艇、監視取締艇、救命艇、漁船等の設計から建造までをトータルにプロデュースするとともに、帆走(カッター)、大型水槽等のFRP 成形品の設計製造も手掛けている。

設立の経緯は、関連中核企業が造船事業から撤退したことを受けて解散した旧会社に勤務していた役員及び従業員が、旧会社から機械設備一式の買い取りなど、すべての営業基盤を継承し、99年12月に新会社としてスタートしたものである。

したがって、新会社としては株主が変更となっただけで、従業員を始め仕入先や受注先に変動はなく、技術力も既に備えていたため、受注は確保されていた。また、機械設備一式を買い取るなどの資金調達面で苦労はあったが、中核企業が返済期間の長い運転資金を低利で融資してくれたため、資金繰りの不安は払拭された。

売上が伸びた要因は、それまでは1隻船主からの漁船の受注を主体としていたのに対し、近年は各自治体からの定期旅客船や、警察庁、海上保安庁からの警備艇、監視取締艇などの受注が増加し、官公庁の売上比率が50%内外にまで上昇したことである。

会社のある山口県豊浦郡豊北町から山口県萩市までの通称ブルーライン沿いには、約30社のFRP 船を取り扱う会社が集まっており、繁忙期には企業間で人材を派遣するなど技術の共有化ができており、また、調達が困難である取引関係のないメーカーの資材を、互いに調達し合う協力関係があるなどのメリットがある。

今後は、カーボン繊維など新素材を活用して「高速化」と「軽量化」を追求した高付加価値のFRP 製船舶を提案し、ユーザーからの個別の注文に対応できる受注体制を構築することで、大手メーカーとの差別化を図っていく。

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