第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例10]

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[事例10]A 株式会社(大阪府大阪市)

情報サービス・調査業

[産業集積のメリット]

  • 同じ業種の中小企業が連携し、互いに外注先として業務を補完

[企業概要]

  • 資本金4,000万円、従業員数137→139→143人(2001→2002→2003)
  • 売上高1,567→1,770百万円(13%、2001.2→2002.2)

流通業、製造業、金融業、倉庫業など幅広い業種を対象に、コンピュータソフトウェアの受託開発、コンピュータの運用・管理の受託、自社製作のソフトウェア(大型汎用機の管理ツール)販売を行っている。

94年11月の設立当初には、出資が初代社長ほか数名の個人に限られていたため、経営上、資金繰りには最も苦慮した。当時、市場は既に成熟しつつあり、新規参入は不利な状況であったが、この業種の経験者がスピンアウトして設立したという経緯もあり、人材や顧客については、ある程度の資産を抱えてのスタートであったことが経営に大きく貢献した。

売上は需要の動向に左右される部分もあるが、主力事業であるコンピュータソフトウェアの受託開発が伸びている。具体的には、1.流通業のシステム開発=POS・受発注・販売管理、2.製造業のシステム開発=生産管理・部品調達・受発注・販売管理、3.運輸・倉庫業のシステム開発=入出庫管理・配送管理がその中身になる。

最新期決算では、顧客の値下げ要求が厳しくなり年間売上高は伸び悩んだものの、受注量は強含みの横ばいとなっており、業績はおおむね伸びている。顧客との信頼関係には厚いものがあり、技術力への高い評価もあることが現在の業績につながっている。

会社がある大阪市都心部には同じ業種の中小企業が数十社立地しており、各企業がお互いの外注先として連携・補完し合っている。大企業の海外生産の進展に伴い海外におけるコンピュータソフトウェアの受託開発が進んだ結果、外国の企業との価格競争が活発な状況ではあるが、こうした企業の集積によって時間のロスがなくなり、コストの低減、技術力の補完から商品のレベルアップが図られ、競争力を高めている。このように、補完関係によって地域の集積のメリットを活用している。

価格競争については、これからも活発な状況が続いていくのは必至であり、このような集積を生かしたコストの低減のほかにも、2002年秋には島根県に支社を設置し、地方都市における雇用拡大と同時に人件費低減にも努めるなどの経営戦略を採っている。

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