第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[事例1]
[事例1]株式会社T 商店(北海道紋別郡湧別町)
食料品製造業(26)
[産業集積のメリット]
自社だけでは不足する生産能力を「協力工場」とのネットワークで改善
[企業概要 (27)]
- 資本金1,000万円、従業員数50→60→60人(2000→2001→2002)
- 売上高2,326→2,692百万円(16%、2000.9→2001.9)
ホタテ主体の水産加工・販売を行っている。現社長が76年11月にオホーツク産のホタテの他、鮮魚の販売を目的に設立した。
会社設立当初は、ホタテは他の鮮魚と特段の違いもなく、商品としての差別化はあまり図られていなかった。しかし、83年に地元空港がジェット化されたのを契機に、航空便によって「活ホタテ」(生きたままのホタテ)を本州に向けて出荷する事業を始めた。当時、本州方面に活製品(生きている製品)を直接出荷できる体制を持つ企業は他になかったので、異例ともいえる高価格の取引が成立し、売上も成長していった。
その後も、資金、設備、労働力を始めとする経営資源は十分とは言えないものの、発想を逆転させて「十分ではないことはコストパフォーマンス向上の要素」と捉え、いろいろな「アイデア」によって、移り変わるニーズに次々と対応してきた。例えば、遠隔地向けの配送体制については、東京、大阪、札幌の3つの拠点に倉庫を借り、大消費地に在庫を置く体制を整えたことなどが挙げられる。
また、自社の生産能力の不足を補うため、早くから地域の水産加工会社と連携し、その工場のレベルを引き上げて「協力工場」(同じ水準の製品を生産する能力を備えた工場)とし、生産ネットワークを作り上げてきた。具体的には、協力工場で自社と同レベルの品質管理が実施できるようにし、2000年3月には協力工場4社が対米輸出水産食品加工施設としての認定を取得した。このように、協力工場も含めた生産体制を整えたことが、結果として受注拡大につながっている。さらに自社については2003年2月、ホタテ製品の施設としては国内で3社しかない対EU 輸出水産取扱施設の認定を取得し、6月にはEU 向けに110トンの製品を出荷しており、品質向上と販路拡大に向けた取組を継続している。競争力の向上において最も重要なことは、差別化が図られた商品をどれだけ提案できるかであるが、自社単独では対応できないことでも、地域企業間の連携を活性化することによって対応できることがあると考えている。
今後は、「品質第一」の姿勢を貫いた上で、市況に左右されない販売体制を構築することで、価格主導力を高めてゆくことを目指している。