第2章 地域集積を活用している成長企業の事例[第2章の要約]
[第2章の要約]
1. ミクロの生産性の改善が重要
地域における産業と企業の生産性を高めるには、個々の企業の経営戦略、研究開発、組織構造などミクロ面の改善が不可欠となる。地域の企業については、地域、業種、企業の特性に応じた取組が重要とみられる。
地域集積のメリットを企業の生産性に活かす方策を考える上で、地域の集積を活用しつつ売上を伸ばしている企業のうち13の事例を取り上げ、その状況を分析した。
【取り上げた成長企業とその企業の集積メリット】
- <食料品製造> 自社だけでは不足する生産能力を「協力工場」とのネットワークで改善
- <情報サービス・調査> 地域のIT 企業との協業を推進
- <情報サービス・調査> 地域の2大学との共同研究を行い、産学連携を推進
- <情報サービス・調査> 同業種中小企業で事業組合を結成、共同受注、共同提案を実施
- <金属製品製造> 高い技術を持った外注先から個々の資材を早く効率よく調達
- <金属製品製造> 同じ業種の企業などと技術等の情報交換、それを新製品開発に活用
- <倉庫> 自社倉庫で対応できないときに、近隣の同業企業と倉庫スペースを融通
- <その他の卸売>
- 購買力の高い購買者層が集まりやすい環境
- 競争によるデザイン力などの向上
- <家具・装備品製造> 地域の外注先と、互いの能力を補い合える関係の構築を推進
- <情報サービス・調査> 同じ業種の中小企業が連携し、互いに外注先として業務を補完
- <衣服・その他の繊維製品製造> 自社で企画・デザインした製品を、集積している繊維関連企業に100%外注できる
- <輸送用機械器具製造>
- 繁忙期には企業間で人材を派遣するなど技術の共有を実現
- 調達が困難な取引関係のないメーカーの資材を互いに調達し合える協力関係
- <パルプ・紙・紙加工品製造> 自社だけで対応できない受注案件を他企業に相互に紹介
2. 成長企業による様々な連携形態
このような成長企業の事例をみると、地域に集積している周辺の企業と共同研究、共同受注、人材派遣、資材調達、在庫管理、技術補完、情報交換など多種多様な連携を実施している。また、成長企業の中には、様々な連携を自ら推進している企業(コーディネート企業)も見られる。このような企業の活動が、地域の産業集積の活性化と企業自身の成長となって現われている。
第1章においては、先進各国において地域の産業競争力を高め、地域経済を再生させている産業集積の一種である「クラスター」に着目し、国内各地にクラスターを形成する取組を取り上げた。また、産業集積のメリットを活用し、地域の産業活性化に取り組んでいる各地の実例を取り上げ、現地調査に基づいてその状況を分析した。第2章においては、第1章で取り上げた地域集積とは離れて、集積のメリットを活用しつつ売上を伸ばしている各地の成長企業を取り上げ、その成長の要素等を検討する。