第1部 新分野の発現と集積効果による活性化
輸出の減少を契機とする製造業の在庫調整によって、国内の景況は、2001年を通して後退を続けた。各地域においても、製造業の在庫調整によって景況の悪化が続き、いずれも厳しい状況となった。2002年に入ると、輸出の増加と生産の反転によって全国的な景況は1-3月期に底入れし、4-6月期においても持ち直しつつある。
地域別の景況についても、2002年4-6月期には悪化している地域はなくなり、北日本と四国で幾分の遅れがみられるものの、中国、東海はじめ他の地域では、おおむね持ち直しつつある。ただし、企業と銀行のバランスシート調整などのデフレ圧力は継続し、設備投資についても回復力が弱いうえに、海外景気についても不透明感が強まるなど、今後について予断は許されない状況にある。
このように、短期的な景況悪化に構造的なデフレ要因が重なり、各地域の雇用の状況は難しいものになっている。地域経済の安定にとって雇用機会の創出は大きな課題である。また、グローバル化や情報化に対応した新しい経済システムへ移行してゆくなかでも、地域において新しい産業、企業、そして市場が発展してゆくことが重要なカギを握っている。
第1部では、このような問題意識から、地域における新しいニーズに対応する新しい産業と企業について分析し、地域において新しい市場が発展する条件と、新しい雇用が拡大する可能性について検討する。
第1章では、新しいニーズをとらえつつある新しい産業と企業を分析し、その特徴を明らかにするとともに、それを支えてきた条件について検討する。
第2章では、地域の特性を活かすことにより地域経済を活性化する方策として推進されている「構造改革特区」を取り上げ、その仕組みと経済的効果について分析する。
第3章では、潜在的な需要である消費者の「ウォンツ」に着目し、それが実際のニーズに結び付いたときの新しい産業と雇用創出の効果について、地域別に分析する。ここでは、経済財政諮問会議の専門調査会により「サービス産業雇用創出の例示」として示されたものを参考に地域別に試算を行った。