第1部 第1章 集積効果による地域産業活性化

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[第1章の要約]

1.地域経済の「新しいシステム」への移行

各地域の雇用は厳しい状況が続いており、消費者の潜在的需要(ウォンツ)を実際のニーズに転化させることで需要と雇用を創出するような改革が求められている。ウォンツに対応した供給構造の改革が進めば、多くの新しい産業分野が各地域に広がり、新しい雇用が創り出されると期待される。既に、新しい産業分野はサービス業を中心として広がっており、企業・団体向けサービスは大都市圏、医療、高齢者ケア、環境サービスは地方圏で雇用を創りつつある。

2.人口集積とニーズの浸透が支える新しい分野

都市の人口とサービス業種の分布をみると、人口が多いほど多様なサービス業種が存立している。また、同じ人口規模であれば、大都市圏よりも地方圏にある都市の方が、サービス業種の数が多いことから、人口だけでなく都市の機能もビジネスの立地条件に関係しているとみられる。新しいサービス業種については、消費者に認知されやすい規模の大きな都市に増加する傾向がみられ、サービスの認知と浸透の点で人口集積が要素となっているとみられる。

3.集積効果を活かす地域成長企業

売上高を伸ばしている地域成長企業の地域的な分布をみると、サービス業の企業は人口集積地に多く分布している。ただし、医療、福祉、環境関連のように、人口集積の少ない地域にも分布しているサービス業種もある。全般的には、人口集積度と産業集積度の高いところに地域成長企業が多く分布する傾向がみられ、ニーズの集中、情報ネットワークの密度などが有利に働いている可能性がある。

日本では、新しい経済システムの構築を目指して、個人、企業、政府など、あらゆるレベルにおいて創意と工夫による改善が続けられている。その作業は多くの困難に直面して必ずしも順調には進んでいないものの、新しい経済システムにおいては、人材、資金、技術、知識といった経済資源が市場機能を活用して効率良く配分されることを通じ、それぞれの潜在的な可能性が発揮されることが期待されている。

地域経済においても、資源が有効に配分される仕組みとしての市場機能が拡充されることは、地域経済の活性化につながると考えられるが、これは今進行している構造改革の目指しているものに相当する。既に、多くの企業が市場のニーズに対応して事業を再構築している。また、多くの地域で市場のニーズを捉えた新しい産業、新しい雇用が発現している。

本章では、このような観点から、新しいニーズを捉えつつある産業分野と企業を分析し、地域の特性と企業の特性の関係について考える。

第1節では、まず、新しい経済システムの構築の模様と地域経済の現状について整理する。そして、サービス分野を中心に、どのような分野でどれだけの新しい雇用が生まれているのか、実態を分析する。どのような地域でどのような新しい産業と雇用が発生しているのだろうか。第2節では、各地域の企業データを電話帳に求め、都市の特性と企業の業種分布・増減の関係をみる。どのような地域で、どのような企業が発生しているのだろうか。第3節では、各地域において売上を伸ばしている企業を「地域成長企業」とし、その分布と地域特性の関係からどのような要因が地域の成功事例にかかわっているかを検証する。

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