第1部 第3章 新しい分野の発現による地域雇用の拡大
[第3章の要約]
1.サービス雇用の地域別・分野別分布
サービス産業を大きく9つの分野に分けて就業者の地域分布をみると、企業・団体向けサービスは大都市圏に集中しているものの、高齢者ケア、医療、環境、子育てサービスは地方圏にも分散している。サービス産業には多様な業種が含まれ、多種多様な就業機会を提供している。また、サービス業の賃金水準は全産業平均とほぼ同じ水準になっている。
2.サービス9分野における地域別・分野別試算
サービス9分野に対する潜在的なウォンツが実現されるように供給側が転換したときの雇用創出効果を試算した。すべての地域で個人向け・家庭向けサービスの創出人数が大きく、大都市圏では企業・団体向け、地方圏では医療、高齢者ケアなどの生活型サービス分野に多い傾向がみられる。労働力人口当たりでみると、地方圏の創出人数が多く、地域のウォンツに対応するように供給側の適応力を高めることが、地方圏の産業を活力あるものにする条件とみられる。
3.地域別雇用創出の可能性とその特徴
各地域で期待される産業分野をみると、環境、バイオ、福祉、情報などが多い。実際に、人材派遣、情報サービス、医療・介護をはじめ、多様な分野で新しいビジネスが創られている。新しい需要に対応して供給構造を転換したところで新しい産業と雇用が発現している。
市場の情報収集機能を活用し、供給者と消費者の情報交流を高めると、多くの地域のウォンツを吸収すると同時に、地域内のウォンツに対しきめ細かく対応することで地域密着型産業の発展も可能となる。既に、新しい仕組みを活かした取り組みが行われているが、新しい情報技術も地域ビジネスの基盤となることが期待される。
これからの新しい経済システムにおいては、人材、資金、技術、知識といった経済資源が市場機能を活用して効率良く配分され、その潜在的な可能性が発揮されることが期待されている。そこでは、人々の潜在的な「ウォンツ」が実際の「ニーズ」に転化されることを通じて需要と供給が結合し、それがまた別のニーズを導くという好循環によって経済が活性化されてゆく仕組みが機能している。
本章では、潜在的な需要である消費者の「ウォンツ」に着目し、それが実際の「ニーズ」に結び付いたときの新しい産業と雇用の創出について地域別に検討する。「ウォンツ」が発現されるとサービス分野を中心に約530万人の雇用が生み出されるという試算が、経済財政諮問会議の専門調査会によって行われている。これを地域別にみると、どのような傾向が現れるのか。地域の雇用にとってどのようなことが課題となり、どのような対応が考えられるのだろうか。
第1節では、地域の雇用の現状について、サービス分野を中心に状況をみる。第2節では、新しいサービス雇用が、地域別にはどのように展開されるのかについて試算する。更に、直近の状況について分野別に検証する。第3節では、地方自治体などへのアンケートをもとに、雇用創出の期待される分野とその実現に向けた方策について検討する。