第2部 第1章 第3節 IT不況が契機となった2001年前半の景況悪化

[目次]  [戻る]  [次へ]

2000年度に企業部門を中心に続いていた回復の動きは、個人消費などの家計需要に十分波及する前に、2000年秋から欧米向け輸出の減少などによって遮られた。2001年初から顕著になった今回の景況悪化の地域経済についての特徴をあげると以下のようになる。

[1] 欧米向け輸出の減少が、地域経済に直接的に影響を与えたこと

特に半導体・電子部品などの電気機械の比重の大きい、東北、九州、中国で影響が早くみられた。このことは地域経済のグローバル化の進展を反映している。

[2] IT関連需要が急速に冷え込んだこと

IT関連産業における世界的な供給過剰により米国、欧州ともに急激な在庫調整に直面し、日本も同様に大幅な生産調整を余儀なくされた。

[3] 鉱工業生産減少の個人消費への影響は、比較的緩やかであったこと

旅行などのサービス関連消費が堅調で、高級ブランド品に対する需要が強い一方で、低価格(価格破壊)商品に対する需要も拡大していることから、個人消費は比較的安定している。しかし、四国と北海道などでは特に地方圏において消費の不振が続いている。

[4] 多くの老舗地場企業の経営が苦しくなっていること

アジアから低価格の輸入品が増加し価格競争が激化した。また、地方の中小企業にとっては、人材の確保が難題である。さらに、地域金融機関の融資審査もより収益重視になり、地域の老舗企業の倒産、廃業が相次いだ。地域の中堅・中小企業にとっては、人材、技術、資金、そして経営戦略という資源がボトルネックになっている。

[5] 地域の地元商店街の不振が目立つこと

北関東をはじめ多くの地域において個人商店と商店街の売上不振が目立ち、廃業・閉店が増加している。このことは地域の商業の核が空洞化し、個人消費の低迷の一因にもなっている。国際競争と情報化に対応し、生産者と消費者の情報の接点として地域商店が機能するように構造変化を遂げることが求められている。

[目次]  [戻る]  [次へ]