第2部 第1章 第2節 企業部門にけん引された2000年後半の景気回復

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1.家計部門回復の遅れは地方圏に顕著

2000年後半の景気の回復局面においては、次のような特徴がみられた。全国的には、企業部門においては企業収益が改善し、民間企業設備投資が増加する一方で、家計部門では個人消費と住宅の回復の遅れがみられた。

この傾向は各地域にほぼ共通していたが、大都市圏よりも地方にその傾向が強かった。その理由としては、すべての地域において勤労者の給与、賞与が減少したことに加え、大企業の倒産、リストラが相次ぎ、消費者の購買態度が慎重になったことがあげられる。特に、地域の商業の核となる百貨店、地域金融機関、地域の老舗企業が破綻したことや商店街の衰退が、地方の消費者の購買意欲を減退させた。全国的にも中高年の再就職の機会は限られているが、地方圏においてその傾向は強い。都市部ではサービス業のシェアが高く求人も多いが、地方において少なく、これが家計の不安を高め消費の減退をもたらしているとみられる。

2.IT関連産業がけん引した企業部門

回復の状況を産業別にみると、半導体などの電気機械・電子部品の生産が顕著に拡大し、企業収益の改善を支えた。また、広告、情報サービス、旅行、国内貨物などのサービス業でも業績は順調に回復した。自動車も2000年秋には景況感が「堅調」に回復し、家庭電器でも2000年後半には「低調」から「横ばい」にまで改善をみせた(第2-1-7表)。

3.IT関連産業集積地域と輸入品競合産業集積地域に二極化した地域経済

このように2000年後半の回復局面においては、IT関連製造業と情報サービスがそのけん引役であった。そのため、IT関連製造分野の産業集積のある九州、東北、中国での景況感の改善は、関連の設備投資にも誘発されて比較的順調であった。また、情報サービスの関連の企業が集積する関東、東海など大都市圏でも比較的順調に回復した。

一方で、アジア地域からの輸入品と競合する産業を抱える四国、中小製造業および流通業の集積する近畿では景況の改善がやや遅れた。また、2000年5月に有珠山の噴火による被害を受けた北海道では、重要な物流拠点である苫小牧港の機能がマヒしたことから全道的に景気が悪化し特異な動きを示した。

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