第2部 第2章 4.運営に当たって

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効率的な運営とは、専門性のある人員を柔軟に配置し、サービスの質を高めることに加え、今までの運営に携わってきた自治体や公共団体の職員を削減、または配置転換を行うことである。しかし、職員を継続雇用するケースが少なからず報告されており、この点は今一歩である。

一方、効率性を担保するには何らかの監視体制の確保も必要となるが、この点はまずまずの回答結果が得られた。

施設管理において、安全性を担保することは当たり前であり、効率性の追求以前の話である。ただし、予期せぬリスクが顕在化することがないとは言えないため、責任の所在を予め決めておく必要性がある。調査によると、リスク管理規定を設けているところは多いものの、実際には、リスクが起こってから決める、ケースバイケースといった結果が多くみられた。

利用者からは「大変」「ある程度」評価されており、専門性のある職員の配置が決め手となっている。

(1)運営に当たって

運営体制をみると、正規職員の比率は属性に限らず、概ね5割程度となっている。新規採用の割合は民間で30%、NPOで40%程度となっており、民間の雇用が創出されていることが読み取れる。一方で、今まで施設の運営に携わっていた職員(自治体や公的団体の職員)を継続雇用するケースは、民間企業や公的団体で40%程度、NPOで20%程度となっている。

しかし、以前からいる職員を継続雇用することは、業務の効率化を目的とした制度の趣旨と反する恐れがある。実際、自由回答には、「現行の管理団体の職員を雇用することを条件とされて、効率化・合理化が出来ない」というコメントもみられた。この制度が上手く機能するはカネやヒトの効率的な配置転換にかかっていると言える。よって、そのような条件を付加した上での公募はそもそも制度の趣旨にそぐわないと言えよう。公募に付す以上、選ばれた団体に出来うる限りの自由度を持たせることが求められる。

第2-2-22図 正規職員割合、うち新規雇用割合、自治体職員雇用の有無
第2-2-22図

(2)モニタリング体制

行政もしくは自社・自団体または第三者によるモニタリングをしっかり行うことで、管理担当者に緊張感を持たせながら、管理に当たることを要求することが出来る。

モニタリングの主体別にみると、行政による関与は8割程度となっている。手法としては報告書の提出が80%程度であり、年に1~数回のヒアリングを行っているも30%程度あるが、行政職員による立ち入り検査は自由意見における回答を合わせても10%に満たない。問題が発生したときに行政側から取られる措置としては、指導や勧告が60%程度、指定を解除したり、業務自体を停止したりすることは10%程度となっている。「規定がない」場合も数件あった。

自社・自団体によるモニタリングは60%近くで行われているものの、第三者によるモニタリングは20%余りしか行われておらず、今後も導入する予定はないところが過半を占めた。

第2-2-23図 モニタリング体制-行政、自己、第三者
第2-2-23図

(3)リスク管理規定

予期せぬリスクが顕在化したときの規定について、決めている場合は85%程度であったが、決めていない場合が10%強も存在した。規定を設けていても、リスクを負う者は「ケースバイケース」という回答が半数近くを占め、「リスクが顕在化してから話し合うことになっている」場合も15%ほどとなっている。

既存の調査でも適正なリスク分担協定書の作成が、指定管理者制度の導入時における懸念事項として挙げられている。施設の規模や当該自治体の状況によってリスク規定は様々になる可能性もあるが、国ないし都道府県がモデル規定を策定するといった方式も考えられる。

PFIの場合、予め1つ1つリスク分担の取り決めがなされている。例えば、国の事業としてははじめて本格的なPFI方式が導入された中央合同庁舎第7号館等整備事業では、55にものぼるリスク分担項目に基づき、各当事者間において契約が締結された。この事業の経験を踏まえ、国土交通省では「官庁施設のPFI事業手続き標準(第1版)」(03年10月)を作成し、PFI事業において検討すべきリスク負担にかかる留意点を示している。指定管理者制度の場合、この部分の見通しがやや甘いと言わざるを得ない12

第2-2-24図 リスク負担の取り決め
第2-2-24図
第2-2-25図 取り決めによるリスク負担者
第2-2-25図

(4)利用者の満足度は向上したか

利用者の評価をみると、属性を問わず、「大変評価」と「おおむね評価」を合わせると75%程度になっている。

満足度の測定方法としては、利用者アンケート方式が7割弱と最も多く、次いで利用者の声ボックスが4割程度となっている。明確な手段を取っていない団体も15%ほど存在しているが、今後ネットアンケートの実施を検討していたり、少し落ち着いてから考えるという回答もあったり、比較的前向きな意見がみられた。

サービスが向上した点としては、専門知識を持つ職員の配置が約半数となっており、これはどの属性においても一番高くなっている。また、利用時間や利用日数を挙げる団体も20~30%の団体が挙げていた。自由回答では、対応が早くなったり、接客の対応が良くなったりしたことに加えて、職員の意識改革や新たなイベントの開催といったことが指摘されていた。

第2-2-26図 利用者の満足度
第2-2-26図
第2-2-27図 利用者満足度の測定方法
第2-2-27図
第2-2-28図 運営後にサービスが向上した点
第2-2-28図

(5)参入後の状況

参入後の感想としては、制度が始まって間もないため、まだ分からないという回答が6割と最も多く、期待どおりが2割、失望したが1割弱であった。

委託によってビジネスチャンスが拡大したケースもあった。他事業で指名を獲得できたケースは少なかったものの、民間企業では他社と協力が強化できたとか自社業務との相乗効果があったという指摘や、マスコミへの露出が増えて、イメージが上がるという効果や他社の仕事のやり方を参考に出来るといった効果も報告されている。

失望の理由には、委託金額の安さを挙げる企業・団体が多かった。

第2-2-29図 実際に仕事をした感想
第2-2-29図
第2-2-30図 受託後のビジネスチャンスの広がり
第2-2-30図
第2-2-31図 失望した理由
第2-2-31図

(6)共同企業体による参入の結果

共同企業体による参入については、半数近くが、自分の強みを発揮できる上に、他社のノウハウを学ぶことが出来ると評価する一方、意思決定に時間がかかることはデメリットとなっている。複数団体で1業務をこなすため、1団体当たりの収入が減るのは当然のことである。

なお、現在のところ単独でも参加できたとしている団体は1割弱と極めて少ないが、今後は単独で参加するとしている団体が20%弱と増加しており、共同企業体によって、自己のノウハウを蓄積し、次は果敢に1団体で指名を勝ち取ろうという態度が見える。

第2-2-32図 共同企業体による参入のメリット
第2-2-32図
第2-2-33図 共同企業体による参入のデメリット
第2-2-33図
第2-2-34図 今後の参加形態
第2-2-34図

12.
なお、総務省は、「地方自治体における民間委託の推進等に関する研究会」で、指定管理者制度をはじめとする民間委託全般にかかる委託先の選定方法や契約のあり方を検討し、06年6月に中間報告を発表した。07年3月(予定)までに、具体的な事例や手法等を整理して最終報告書をまとめるとしている。

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